日本管理会計学会・会員各位
管理会計学会創設30周年記念事業の一つとして創設が認められた「30周年記念Web部会」の第2回部会を2022年2月26日(土)にオンラインで開催することになりました。 第2回部会は2部構成として第1部は石崎忠司中央大学名誉教授をお招きして、特別講演をしていただきます。石崎忠司先生は管理会計学会の元副会長で2010年には管理会計学会功績賞を受賞されています。また石崎先生は財務管理学会や社会関連会計学会などでも要職を務められ、さらに大手企業の社外取締役も経験されておられます。 部会の第2部は、大学院生や若手研究者の報告会とさせていただくことになっており、今回この第2部の報告者を募集させていただきます。 報告をご希望の方は、下記の応募要領をご参考の上、ご応募をいただきますようお願い申し上げます。大学院生を指導されている先生方には是非院生に報告を勧めていただければと存じます。なお報告希望多数の場合には、ご希望に添えない場合もあることをご了解の上、お申込み下さい。
管理会計学会創設記念事業委員会
記
開催日時:2022年2月26日(土)13時20分開始(予定)
開催方法:Zoomによるオンライン
<報告応募要領>
締切日:2022年1月26日(水)
応募方法:件名(標題)に「30周年記念第2回Web部会報告希望」と記載し本文中に下記を明記のうえメールでご応募ください。
(1) 報告タイトル・概要(200-300字程度) (2) 氏名: (3) 所属機関: (4) 職名: (5) 連絡先:
応募先:関西大学 水野一郎
e-mail: icmizuno[at]kansai-u.ac.jp ([at]→半角@に変更してください。)
2021年11月22日 成蹊大学 伊藤克容
2021年度第2回リサーチセミナーは、日本原価計算学会および大阪大学との共催で、2021年11月20日(土)14時00分~16時40分にZoomを用いて、オンラインで開催されました。当日の参加者は30名前後でした。日本管理会計学会・副会長である、椎葉淳氏(大阪大学)に、全体の司会を御担当頂きました。日本原価計算研究学会・会長の挽文子氏(一橋大学)より開会の挨拶が、椎葉淳氏(大阪大学)より閉会挨拶がありました。 第1報告は、吉見明希氏(北海道情報大学)、第2報告は濵村純平氏(桃山学院大学)でした。また、ディスカッサントとして、第1報告に対しては伊藤克容(成蹊大学)、第2報告に対しては呉 重和氏(摂南大学)から、それぞれ研究内容の要約・評価と研究の改善に役立つコメントが数多く提示されました。フロアからもコメント・質問があり、活発な議論が行われました。
第1報告 吉見明希氏(北海道情報大学) 報告論題 コンテンツ制作における工程管理の分析 第1報告では、インタビュー調査による事例分析に依拠して、コンテンツ制作における管理会計実務に関する特徴、問題点についての考察がなされました。 通常の製品やサービスの生産においては、原価計算をはじめ、マネジメント・コントロールの視点を包含した原価企画やリーン生産といった手法によって、工程管理の研究が進められてきたのに対して、コンテンツの制作においては、とくに通常の製造業とは異なる、独自の工程管理が必要であることがあきらかにされました。 コンテンツの制作においても、企画から流通まで、製造業と似た価値連鎖をたどることから、リーン会計のシステムに類似した生産管理手法の適用可能性が示されました。その一方で、コンテンツの制作は、知的かつ無形の創造物を生産するという観点から、そのプロセスは製品開発活動にも性格が近いものと考えられ、両者の異同が検討されました。 制作進捗の管理手法を具体的に検討するために、本報告では東京都に本社を置く地上テレビ放送局およびその関連番組制作会社に対し、半構造化インタビューを実施しました。その結果をふまえて、組織構造、予算管理の実状、プリプロダクション段階における原価企画的な調整行動、プロダクション段階における納期管理、ポストプロダクションでの取り組みなどが詳細に説明されました。コンテンツの品質を確保するという、非財務的な達成目達を、脚本と日程の調整を介して、制作費という財務的要素に落とし込む作業がなされていたことが発見事項として報告されました。
第2報告 濵村純平氏(桃山学院大学) 報告論題 Manufacturer encroachment in a product market and common ownership between supply chain parties 第2報告では、バイヤー(小売業者)とサプライヤー(メーカー)に共通のオーナー(機関投資家などを想定)がいるとき、サプライヤーの製品市場への進出(encroachment=侵略)が消費者余剰や総余剰にどう影響するかを、独自のモデルを用いて理論的な分析が行われました。具体的なリサーチ・クエスチョンとしては、次の①~③が検討されました。 ① common ownership(共通オーナーの存在)の状況が、メーカーのencroachment decision(製品市場への直販の意思決定)にどのように影響するか。 ② 小売り業者の利潤にメーカーのencroachmentはどのような影響を及ぼすか。 ③ メーカーと小売り業者間のcommon ownership は余剰にどのような影響を与えるのか。 モデルによる分析の結果、サプライヤーの侵略がバイヤーの利得を改善することがあること、サプライヤーの侵略による販路の拡大が消費者余剰を悪化させることがあること、オーナーの支配が強まると総余剰を改善するケースがあることが示されました。 この結果に関する解釈として、メーカーに対するownership の程度が大きい場合は、小売は数量を増やし、メーカーが数量を減らすケースがある可能性が提示されました。このときは卸売価格も低いと予想されます。その帰結として、encroach しないケースよりも小売の利得は改善することが起こり得ます。 また、encroachment があるケースとないケースでは、encroachment がないケースの方が市場に多くの製品が供給される場合があります。これは、メーカーのownershipの程度が大きいケースであることから、common ownership が共謀のデバイスとして機能している可能性が示唆されました。
2019年度採択スタディ・グループの研究成果報告書を掲載いたしました。
2019年度採択 ■スタディ・グループ
「原価企画の今日的課題と対応」 研究代表者:諸藤裕美研究成果報告書
以上
2021年11月13日(土)13:30~16:45 ■■ 日本管理会計学会2021年度第2回(第61回)九州部会が、2021年11月13日(土)13:30~17:15に、開催校の福岡大学(福岡市)によって、対面およびオンライン併用のハイブリッド方式で開催された(準備委員長:田坂公氏)。今回の九州部会では、ハイブリッド方式ということもあり、40名近くの研究者の参加を得て、いずれの報告においても活発な質疑応答が展開された。
■■ 特別講演は、釘町豊氏(九州博報堂 常務取締役)により、「九州博報堂のパーパスを体現するためのマネジメント」と題する講演が行われた。本講演は、パーパス経営の重要性について、これまでの九州博報堂での釘町氏の経験を踏まえて紹介された。 2020年に九州を代表とする広告会社 西広との統合により、互いの企業の強みを活かすため、また従業員の意識を変えていくことが重要であると考え、パーパスを主軸とした意識改革をおこなったという。講演では、自分たちが「どのような目的をもって社会に存在するのか」ということ、つまりパーパスを決定することで、素早い経営判断につながることや、自社の強みなどを再発見できるため、社内での共有化がパーパス経営のメリットであると紹介された。 講演後の質疑応答では、フロアやオンライン上から活発なディスカッションが行われ、盛況のうちに終了した。
■■ 研究報告の第1報告は、梅田充氏(金沢星稜大学講師)により、「従業員エンゲージメントを高める組織コンテクストのメカニズム」と題する報告が行われた。本報告は、管理会計の視点から、従業員エンゲージメントと、その成果との関係性をモデル化して考察することを目的とし、ワークエンゲージメントを拡張したモデルの提示と、従業員エンゲージメントを促進する要因として、人をサポートするようなリーダーシップの有用性、コントロール・レバーの使い分けが重要であると述べられた。 報告者は、従業員エンゲージメントは、心理学や組織行動など他分野で議論されているが、どのようにコントロールするかについては、管理会計分野での議論が必要であると述べられ、従業員エンゲージメントに影響する負の要因や、実在する企業に適用した場合の詳細な観察が、今後の検討課題であることが示された。
■■ 研究報告の第2報告は、水野一郎氏(関⻄大学教授)より、「ティール(進化型)組織と管理会計:メガネ21を事例として」と題する報告が行われた。本報告は、メガネ21の事例を通して、「ティール組織」の意義と特徴を明らかにしたうえで、管理会計の在り方についての考察を報告された。 報告者は、フレデリック・ラルーのティール組織の特徴と、メガネ21の組織特徴との比較分析をされており、ティール組織は、部分的には日本的経営を展開して企業との親和性が高く、さらに日本的経営を進化させ、管理会計の新たな展開の可能性があると述べられた。 報告者は、このようなティール組織の研究から、管理会計はできるだけシンプルな会計が望ましいと述べられ、ティール組織による管理会計は、「カネ」の管理を中心とする資金繰り計算、「ヒト」への配分計算と結びついた限界利益を中軸に、シンプルな管理会計を構築する必要があると提言された。
水野真実(熊本学園大学)
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