日本管理会計学会2026年度第2回関西・中部部会は、2026年10月17日 (土) に同志社大学(京都府京都市:今出川キャンパス)を主催校として開催された。今回の部会は対面とWeb (Zoom) を併用したハイブリッド方式であり、対面参加者は24名、Web参加者は12名であった。
部会の開催にあたり、まず、中川優部会準備委員長よりプログラムや進行に関する説明があり、次いで、窪田祐一関西・中部部会長より開会のご挨拶をいただいた。

その後、プログラムにしたがい、特別講演1件および自由論題報告3件の発表がなされた。以下、特別講演と自由論題の各報告の概要について紹介する。
特別講演
講演者:喜多忠文氏(元同志社大学客員教授・広東松下エコシステムズ元社長)
講演テーマ:「海外子会社のマネジメント:中国現地法人での経験を通じて」

喜多氏は、パナソニックグループの中国現地法人における社長としての経験に基づいて、海外現地法人のマネジメントに関して、包括的に講演を行った。まず、最初に多くの企業がなぜ中国に進出したのかについて、日本と中国の製造原価を比較して、いかに中国がコストの面で優位であったのかを説明した。そして、日本本社との関係について、パンソニックでは、事業計画を重視しており、本社からはその内容について詳細にチェックがなされることを述べた。そして、現地法人に権限移譲するべきものと委譲せずに本社がマネジメントしなければならないものがあるとし、現地法人サイドで、決定すべきものとして、現地における人事に関する事項(給与体系、昇進、採用など)があり、日本本社サイドで決定すべきものとして、日本から派遣社員の処遇、品質や環境負荷対策などがあるとされた。また、親会社が現地子会社に行うべきサポートしては、現地子会社では対応できない法務上の問題等を挙げられた。また、ご自身が社長時代に直面した様々な問題を振り返られながら、中国と日本の考え方、価値観、文化、習慣等の相違を十分に理解する必要があり、それらに適切に対応しながらお互い尊敬しあえる関係性を構築することが重要であると指摘された。最後に、現地法人の社長として必要なリーダーシップや資質について述べられて講演を締めくくられた。
自由論題報告
司会:山本達司氏 (同志社大学商学部 教授)
第1報告
報告者:殷広為氏 (近畿大学商学研究科 博士後期課程)
論題:組織スラックと経営目標の水準との組合わせが経営活動に及ぼす影響
―中期経営計画に基づく実証分析―

本報告では、経営スラックと経営者が設定した経営目標の水準が経営活動に及ぼす影響について検討している。つまり、経営スラックを「企業が保有する資源のうち、事業の遂行に必要な水準を超えて存在する余剰資源」と定義したうえで、経営スラックが経営活動に配分される程度は、経営者が設定した経営目標水準に依存するという仮説を設定し、企業の公表データを用いて分析している。
具体的には、2000年から2022年に日経500種を構成した銘柄に指定された企業が公表した中期経営計画に基づいてサンプルを抽出し、経営スラックの代理変数として現金保有量、経営目標水準の代理変数として①中期経営計画の売上高の目標値ないし②営業利益の目標値を置き、経営活動の代理変数である固定資産投資活動への影響を検証した。
その結果、組織スラックと経営目標水準の交互作用項が経営活動へ影響を与えることが概ね示された。
質疑応答を通じて、経営スラックや経営活動の意味や代理変数が何を示しているのかについて議論された。
第2報告
報告者:伊藤正隆氏 (同志社大学商学部 准教授)、窪田祐一氏 (南山大学経営学部 教授)、近藤隆史氏(京都産業大学経営学部 教授)、中川優氏 (同志社大学商学部 教授)
論題:日本企業におけるM&Aプロセスの実態とクロスボーダーM&Aの特徴
―管理会計研究の観点から―

本報告では、東京証券取引所のプライム市場に上場している製造企業、および、日本国内における資本金3億円以上の非上場製造企業の経営企画、財務・経理、あるいは総務の担当役員を対象とした質問票調査に基づいて、日本企業におけるM&A(企業の合併と買収)とPMI (M&A後の経営統合) プロセスの実態について検討された。
具体的には、①実施したM&Aの規模や時期といったM&Aの基本事項、②M&A実施前の体制やプロセスの内容といったM&Aの実施体制、③M&A実施後の統合内容や評価といったM&A後の状況が質問項目ごとに紹介された。
加えて複雑でリスクが高いクロスボーダーM&A (国境を越えて実施されるM&A)の特徴についても検討された。
質疑応答を通じて、M&Aの種類や目的による違いや今後の研究展開可能性について議論された。
第3報告
報告者:坂口順也氏 (関西大学会計研究科 教授)、武山幸司氏 (愛知県立芸術大学 特別教授)
論題:組織間マネジメント・コントロールが組織能力に与える影響

本報告では、協力先企業へ実施される組織間マネジメント・コントロールが、自社の組織能力構築に与える影響について検討している。
具体的には、東証プライム市場に上場する加工組立型(機械、電気機器、輸送用機器、精密機器)企業の設計開発担当者を主たる対象とした質問票調査に基づき、①「進捗状況の把握・評価と手順に沿った行動の確認」と定義されるモニタリング/評価、 ②「取引相手の担当者とのコミュニケーションを基礎とした情報や問題の共有」と定義される担当者とのインタ―ラクションが、「変化に対応する、あるいは、自ら変化を作り出すように資源を活用するルーチン/プロセス」へ与える影響について分析している。
その結果、①モニタリング/評価が組織能力に正の影響を与えるという仮説は支持されたものの、②担当者とのインタ―ラクションが組織能力に正の影響を与えるという結果は支持されなかった。ただし、モニタリング/評価と担当者とのインタ―ラクションの正の影響は組織能力へ補完的に作用するという結果を示した。またこれらの効果は新規組織能力構築において顕著にみられることが追加分析において示された。
質疑応答を通じて、先行研究からみた本研究の位置づけや貢献について議論された。
以上の特別講演、自由論題3報告のいずれにおいても報告後の質疑応答では参加者と報告者との間で活発な議論が交わされ、盛会のうちに、全プログラムが終了し、中川部会準備委員長による挨拶をもって閉会した。
﨑章浩氏(東京国際大学)
飯島康道氏(愛知学院大学)










江川雅子氏(成蹊学園学園長)

松岡孝介氏(山形大学)
足立洋氏(県立広島大学)
統一論題討論