「九州部会」カテゴリーアーカイブ

2013年度 第2回九州部会開催記

■■日本管理会計学会2013年度第2回(第40回)九州部会が,2013年7月20日(土)に福岡大学(福岡市城南区七隈)にて開催された(準備委員長:福岡大学准教授・飛田努氏)。今回の九州部会では,関東・関西・北陸からもご参加をいただくなど,15名近くの研究者や実務家の参加を得て,活発な質疑応答が展開された。

2013kyusyu2_1.jpg■■第1報告は,足立洋氏(九州産業大学准教授)より,「管理会計と目標利益達成の柔軟性」と題する研究報告がなされた。報告は,管理可能性原則の遵守を志向した予算管理システムにおける柔軟性確保の可能性と,どのようなプロセスを経てそれが発揮されるのかを,ケーススタディを中心に明らかにしたものであった。ケーススタディは,各種繊維製品の繊維加工などを取り扱うセーレン株式会社に対する半構造化インタビューに基づいたものであり,(1)管理可能な業績範囲の拡大として,月次で決まっている業績をより広範な年次という範囲で決定する「管理可能性の時間拡大」がみられていること,(2)水平的コミュニケーションだけでなく,現場と管理者の「垂直的コミュニケーション」によっても予算管理システムの柔軟性が確保されることが証明された。

2013kyusyu2_2.jpg■■第2報告は,丸田起大氏(九州大学准教授)より,「アメーバ経営の導入効果の検証―コミュニケーション活性化を中心に」と題する研究報告がなされた。報告は,アメーバ経営の導入効果として,採算意識・使命感・情報共有などの向上によりコミュニケーションの活性化が達成されるかを,製造業K社の工場に対する質問票調査に基づき分析したものであった。質問票調査は,リーダーとメンバーに区別をしたアメーバ経営導入の半年後と1年半後の二時点で行ったものである(サンプル数:半年後116、1年半後115)。報告では,(1)アメーバ経営の導入効果は,リーダーだけでなくメンバーにも現れていたこと,(2)アメーバ経営の導入効果の程度は,リーダーの方がメンバーよりも効果が高かったこと,(3)情報共有はコミュニケーションと直接的に正の関連をもっていた一方で,採算意識と使命感は間接的に正の関連をもっていたことが示された。

2013kyusyu2_3.jpg■■第3報告は,矢澤信雄氏(別府大学教授)より,「CSR報告書の評価基準とその課題」と題する研究報告がなされた。報告は,日本における環境報告書からCSR報告書へのシフトが社会にどのような影響を与えるかを問題意識に,CSRの歴史とCSR報告書の評価基準を明らかにしようとしたものであった。報告では,(1)我が国では最初,環境報告書を公表していた企業が報告書のタイトルを「CSR報告書」へと変更し,CSR報告書の一部が実質「環境報告書」になっているケースが多いこと,(2)そのため,報告書の評価基準に占める環境のウェートが減少することにより,企業の環境に対する取り組みの努力が分散してしまう危険性があることが指摘された。また,企業の社会貢献活動の成果を報告するに当たって,成果をなるべく定量的に明示することが望ましいが,その点を意識したCSR報告書の評価基準は現状では少数派であることが指摘された。

2013kyusyu2_4.jpg■■第4報告は,招聘講演として宮本寛爾氏(大阪学院大学教授)より,「グローバル企業の経営管理と管理会計」と題する研究報告がなされた。報告は,C.A.Bartlet, et al.(1989)のトランスナショナル戦略を採用する企業における管理会計の利用可能性に中心に,グローバル企業の管理会計システムを捉えようとしたものであった。報告では,グローバル企業の組織構造の歴史や経営管理が紹介された上で,トランスナショナル戦略を採用する企業が,経営資源を分散し,事業を専門化し,相互依存関係を構築することが必要となり,世界中の専門化した組織単位を結びつける統合ネットワークを構築することが説明された。その上で,(1)為替リスクに晒されている通貨の金額を明らかにする多通貨会計情報の利用のほか,(2)本国への送金の最大化を志向する場合は「本国通貨」を採用するのが望ましいものの,グローバルな立場からの存続・成長を志向する場合には「合成通貨」を採用することが望ましいことが指摘された。

■■報告後,臨時総会が開かれ,部会開催補助と他の部会との合同開催に関する議決がなされ,第3回九州部会は11月16日に大分大学にて日本管理会計学会第3回フォーラムと合同開催することが情宣された。また,懇親会が中央図書館「フォレスト」にて開催された。懇親会は有意義な研究交流の場となり,盛況のうちに大会は終了した。

足立俊輔 (下関市立大学)

2013年度 第1回九州部会開催記

■■日本管理会計学会2013年度第1回(第39回)九州部会が,2013年4月20日(土)に九州産業大学(福岡市)にて開催された(準備委員長:浅川哲郎氏)。今回の九州部会では,関東・関西・北陸など他部会からも複数のご参加をいただき,20名近くの研究者の参加があり活発な研究報告と質疑応答が行われた。

2013kyusyu1_1.JPG■■第1報告では,足立俊輔氏(下関市立大学講師)より,「米国病院原価計算の発展と価値重視の病院経営」と題する報告があり,米国の病院経営および病院原価計算に関する文献調査に基づき,米国病院原価計算の発展を計算原理の精緻化の側面と計算合理性の側面から整理することで,医療の質とコストのバランスを考慮する価値重視の病院経営を支援する時間主導型の病院原価計算の有用性が明らかにされた。報告では,価値重視の病院経営においては時間主導型の病院原価計算を用いて医療提供者と病院経営者に共通の情報基盤を構築する必要性があること,また,医療システムの将来像として「価値重視の償還システム(value-based reimbursement)」を展望する必要があることが指摘された。

2013kyusyu1_2.JPG■■第2報告では,飛田努氏(福岡大学准教授)より,「中小企業のマネジメントコントロールシステム関する研究: 熊本・福岡の事例を中心として」と題する報告があり,中小企業におけるマネジメントコントロールシステム(以下MCS)の利用状況に関するアンケート調査と,佐賀県の金型メーカーS株式会社の事例研究が報告された。アンケート調査は,Simons(1995,2000)のMCSに基づいた共分散構造分析が行われ,大人数企業(30名以上)では会計情報利用に関して有意な関係が見られるものの少人数企業では有意な関係が確認できなかったこと,経営理念の浸透は少人数企業では係数が高いことが示された。またS社の事例では,業績評価システムの特徴のほか,社長が高齢化・引退する中小企業において事業継承をどう乗り越えるかが課題となっていることが指摘された。

2013kyusyu1_3.JPG■■第3報告では,吉田康久氏(九州産業大学教授)より,「英国の行政・公会計改革の取り組み ‐留学で感じ得たこと‐」と題する報告があり,イギリスにおける行政・公会計制度改革の取り組みが紹介された。報告では,サッチャー政権からの行政改革の一端として,競争入札制度やPFIからPPPの流れや,包括的業績評価制度から包括的地域評価制度の変遷など,英国の行政改革の経歴に沿って議論が進められた。また,公会計制度改革の取組主体として英国勅許公共財務会計協会(CIPFA)が果たす役割や,資源会計予算の特徴,それに勅許公共財務会計士の認定制度についても言及され,英国においても発生主義会計の導入にあたって解決すべき課題があるため結論には達していないことが説明された。

2012年度 第3回九州部会開催記

■■日本管理会計学会2012年度第3回(第38回)九州部会が,2012年11月24日(土)に中村学園大学(福岡市)にて開催された(準備委員長:水島多美也氏)。今回の九州部会では,他部会からも複数のご参加をいただき,20名近い研究者と実務家の方々とともに活発な研究報告と質疑応答がなされた。

2012kyusyu3_1.JPG■■第1報告では,西村明氏(別府大学教授)より,「管理会計の現代的課題―回顧と展望―」と題する報告があり,最近の管理会計の展開と方向を,ABCやBSCに象徴される戦略管理会計と,IFACのEnterprise Governanceに象徴される機会・リスクへの関心と整理したうえで,管理会計は第1のギャップであるレレバンス・ロストから,不確実性の拡大による第2のギャップを経て,金融麻痺による組織の自己衰退という第3のギャップの段階に入っており,利益機会の創造とリスクへの対処のために,管理会計は不確実性を完全には管理しえないという謙虚な姿勢を保ち,柔軟で機動的な組織構造のもとで,フィードバックとフィードフォワードを有機的に統合し,自らも絶えざる革新に挑戦しなければならないと主張された。

2012kyusyu3_2.JPG■■第2報告では,水島多美也氏(中村学園大学准教授)より,「時間と管理会計技法に関する一考察」と題する報告があり,管理会計の先行研究においてどのような時間が扱われてきたのかという問題設定のもとで,大きく分けて,先端製造技術における時間,生産管理システムにおける時間,および戦略における時間が検討されてきたことを示し,その枠組みのもとで,非財務的指標,スループット会計,アメーバ経営,Jコスト論などの多様な研究が展開されているが,とくにABC/ABMの議論においてコストドライバーとしての時間の研究が多く蓄積されてきていることについていくつかの論者の研究を紹介され,管理会計論における時間研究の体系化の意義を主張された。

2012kyusyu3_3.JPG■■第3報告では,高梠真一氏(久留米大学教授)より,「デュポン社のベンチャー事業における割当予算の申請と承認」と題する報告があり,デュポン社では1910年代には,追加投資を要求する各部門が経費節約の見積額を申請し,それを経営執行委員会が投資利益率で審査する割当予算システムが実践されており,部門レベルではまだ投資利益率にもとづく意思決定が行われていなかったが,1960年代になると,割当予算を要求する際には各部門で自ら投資利益率の見積値を計算し,経営執行委員会では投資利益率で識別できない代替案の選択における補完的な評価方法として割引キャッシュフロー法が用いられるようになっており,管理会計技法の発展と浸透の興味深い歴史的事例が紹介された。

2012kyusyu3_4.JPG■■第4報告では,足立洋氏(九州産業大学講師)より,「責任会計システムと柔軟性」と題する報告があり,不確実性の高い状況下における責任会計システムの限界が主張されているが,管理会計実務ではこの問題にどのように対処しているのかについて,セーレン株式会社においてインテンシブな定性的調査を実施し,製造部門をプロフィットセンター化し,日々の会議や改善提案制度によるエンパワメントを通じて,生産計画の頻繁な変更の権限を現場に付与することによって,会計情報を過去釈明のための回答装置ではなく未来創造のための学習装置として活用し,目標管理制度のもとでの利益責任達成に必要な柔軟性を引き出すことに成功している事例を紹介された。

■■報告会終了後には,開催校のご厚意により懇親会が開催され,有意義な交流の場となった。次回の九州部会は来年4月に九州産業大学で開催の予定である。

2012年度 第1回 関西・中部部会 開催記

■■日時・場所
●日 時 : 2012年5月26日(土)
●場 所 : 中部大学 春日井キャンパス 22号館2215講義室

■■日本管理会計学会2012年度第1回関西・中部部会が,2012年5月26日(土)に中部大学(愛知県春日井市)にて開催された(開催委員長:中部大学・竹森一正)。今回の関西・中部部会では,北海道・関東からの参加を含め,4名の自由論題と統一論題が行われ,約40名の研究者による活発な質疑応答が展開された。

■■自由論題報告第1部(院生セッション)

2012kansai1_1.jpg■■ 第1報告 第1報告では,井上和子氏(立教大学大学院)より「工業簿記と原価計算との有機的な結合による原価管理事例の考察」と題する研究報告がなされた。本報告では,標準原価計算を取り巻く現状を整理した上で,企業における事例,標準原価計算による原価差異分析,標準原価計算の活用による原価管理,標準原価を基軸とする労務管理の展開について考察が行われた。これらの考察を踏まえ,長期の企業経営という視点に立脚した場合,会計・原価計算は,本来,将来へ向けての実績計算にこそ意味を持つものであることが主張された。

■■ 第2報告 第2報告では,梅田浩二氏(名古屋市立大学大学院)より,「海外子会社からの研究開発費回収方法に関する考察─移転価格税制と研究開発費負担の公平性の視点から─」と題する研究報告がなされた。本報告では,研究開発費の回収にあたり,現状では,ライセンス契約に基づくロイヤルティによる単一の方法で回収する企業が最も多いが,国際税務と開発費負担の公平性の観点からみれば,無形資産形成と費用分担契約,メディアへの転写作業と役務提供契約,無形資産の利用とライセンス契約,をそれぞれ対応させ,研究開発の各プロセスと最もよく適合する回収方法を複合的に選択することが望ましいと主張された。

■■自由論題報告第2部

2012kansai1_2.jpg■■第1報告 第1報告は,威知謙豪(中部大学)より,「特別目的事業体の連結会計基準の厳格化と実体的裁量行動」と題する研究報告がなされた。本報告では,一定の要件を満たす特別目的事業体を連結範囲から除外する例外規定の厳格化に伴い,その影響が相対的に高い企業においては,例外規定を利用した取引を取りやめる傾向にあることが確認された。一方で,早期適用や,今後の経営目標として採用される各種指標の算定の際に,一定の要件を満たす特別目的事業体を連結範囲に含めるか否かについては,例外規定の厳格化の影響の高低との一貫した関係は見られないことが報告された。

■■第2報告 第2報告では,高瀬智章氏(広島国際大学)より,「公的病院の事業評価─政策医療費と収益医療費区分の必要性─」と題する研究報告がなされた。本報告では,公的病院の適切な業績評価に有用性を発揮する指標としての会計情報という視点から,公的病院の会計情報のあり方に関する指摘と提案がなされている。考察の結果,公的病院の主目的は「政策医療の実施」にあることから,副次的な活動である「収益医療」とを区分した区分表示型損益計算書の有用性が示唆された。

■■統一論題テーマ 「『絆』の時代における環境管理会計の今日と展望」
(座長:吉村文雄氏(金沢大学名誉教授),司会:竹森一正(中部大学))
2012kansai1_3.JPG 統一論題報告の冒頭で,竹森大会開催委員長より統一論題テーマ趣旨の説明が次のとおりなされた。
2011年の大震災以来,私達は,放射能の不安に代表される暗い将来展望と不確実性が増す社会状況の中で生活を強いられています。しかし,それ故にでしょうか,人は絆を求め,愛を求め,友情を求める気運が満ちるようになっています。この中で「光につなぐ梯子」を懸命に,いろいろな分野で,探し,構築しようとの試みも見過ごすべきではないと考えます。幸いに私たちは管理会計という企業の根本を形成する基盤を専門としており,この知見は今後,強力な指導原理となることを見過ごしてはなりません。私達開催委員会は,この混迷の中で進展と深化の根源となる管理会計の研究エリアとして環境管理会計に着目し,また,時代状況を克服する意味での「絆」をキーワードとして,統一論題テーマを設定致しました。

■■第1報告 統一論題第1報告では,中嶌道靖氏(関西大学教授)より「MFCAのサプライチェーンへの展開」と題する研究報告がなされた。本報告では,MFCA(マテリアルフロー・コスト会計)をサプライチェーンに拡大しようとする日本企業の事例を中心に,MFCAのISO化による世界への普及,東アジアを中心としたMFCA のサプライチェーンへの展開の実現に向けた課題について検討がされ,そのうえで,MFCAによるグローバルな資源生産性の意義について考察が行われた。現在,日本企業以外にも,ISO14051をきっかけとして,東アジア企業においてもMFCAのサプライチェーンへの展開が行われており,これらを踏まえると,MFCAを1つのトリガーとして環境管理会計の研究および企業活動の中での繋がり・絆ができつつあることが述べられた。

■■第2報告 統一論題第2報告では,長岡正氏(札幌学院大学教授)より「物流環境管理会計の展開」と題する研究報告がなされた。本報告では,現在の環境管理会計は,一般に製造を対象としても物流までは対象としていないことから,輸送量削減を手段とする物流の取り組みは,生産量を所与とする製造の取り組みよりも効果が期待できると指摘された。その上で,物流コスト管理を目的とした物流管理会計,荷主の視点から実施するグリーン物流の取り組み,および製造を対象とする環境管理会計の3領域について,物流を対象とする環境管理会計の可能性の観点からの考察が行われ,同時削減を示す物流を対象としたエコ効率性の試案の1つとして,という評価指標が提案された。

■■第3報告 統一論題第3報告では,今井範行氏(名城大学客員教授)より「環境管理会計とジャスト・イン・タイム経営」と題する研究報告がなされた。本報告では,トヨタ生産システム(TPS)をベースとした,ものづくり経営(=ジャスト・イン・タイム経営)という視点から,環境管理会計の今後の実務的課題について検討がおこなわれた。外部環境会計では,ものづくり現場の環境競争力の練磨には一定の限界があることから,最少資源で最大価値の創出を志向する環境システムとしてTPSを位置づけ, Jコスト,利益ポテンシャル,デュアルモード管理会計,TPSとマテリアルフロー・コスト会計の統合化,といったジャスト・イン・タイム経営に整合する環境管理会計の構築に,今後の環境管理会計の発展の可能性があることが述べられた。

■■ 報告者・司会者の先生方のご協力により,自由論題報告,統一論題報告および討論会をほぼ時間通りに進行することができた。そして,それぞれの報告に対しては活発な質疑応答がなされ,充実した部会研究報告となった。

威知 謙豪 (中部大学)

2012年度 第2回九州部会開催記

■■日本管理会計学会2012年度第2回(第37回)九州部会が,2012年7月28日(土)に西南学院大学(福岡市)にて開催された(準備委員長:高野学氏)。今回の九州部会では,関西中部部会からも複数のご参加をいただき,30名近い研究者と実務家の方々とともに活発な研究報告と質疑応答がなされた。

2012kyusyu2_1.JPG■■第1報告では,島田美智子氏(下関市立大学教授)より,「財務報告の管理会計化―Zambon[2011]の所説に寄せて―」と題する報告があり,Zambon,S.[2011] The managerialisation of Financial Reporting : an introduction to a destabilising accounting change, Financial Reporting, Supplement.を手掛かりに,現代の財務報告においては,IT技術の発展や自発的ディスクロージャーの進展を背景に,経営者の視点にもとづく管理会計情報の利用が重要性を増し,企業特殊的情報の開示,業績指標の多様化,財務会計領域の拡張,理論と実務の緊密化などが進んでおり,財務会計と管理会計の相互作用的進化を前提とした制度設計や会計教育の必要性が主張された。

2012kyusyu2_2.JPG■■第2報告では,大下丈平氏(九州大学教授)より,「コントロールのパラドックスと管理会計―『レレバンス・ロスト』の意義を考える―」と題する報告があり,『レレバンス・ロスト』刊行から四半世紀を迎えた現在,依然として管理会計は,会計領域内部からの批判,生産現場からの批判,および資本市場からの批判,という3つの「レレバンス・ロスト」に直面しているとの問題提起がなされ,この3つの矛盾した批判に応えていく方向性として,TDABC,VBM,COSO-ERMなどの意義,ならびにコントロールがガバナンスやCSRを取り込みつつ,それらを規律付けていく必要があるとの主張がなされた。

2012kyusyu2_3.JPG■■第3報告では,新茂則氏(中村学園大学教授)より,「不動産企業の時価情報開示と株価―賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用による株価の影響―」と題する報告があり,近年の会計制度改革による時価情報開示が株価に反映されているのかという問題意識のもと,賃貸等不動産会社をサンプルとして,不動産会社の保有賃貸等不動産の含み益の実態,日経平均株価やTOPIXと特定銘柄株価の相関,決算発表前後の出来高や株価の変動パターン,賃貸空室率と株価の関係,PER・PBR・ROA・ROEの推移などを検証し,株式市場は効率的であるとの見解を示された。

報告会終了後には臨時の部会総会が開催され,部会活動のさらなる活性化のために,講師招聘謝金の増額,開催校補助の増額,院生参加者の参加費等の負担軽減について提案がなされ,全会一致で承認された。また総会終了後には開催校のご厚意により懇親会が開催され,有意義な交流の場となった。次回の九州部会は11月に中村学園大学で開催の予定である。

丸田 起大 (九州大学)