学会誌編集委員会からのお知らせ

日本管理会計学会会員各位

日本管理会計学会誌『管理会計学』への投稿について、以下の通りお知らせします。

1.執筆要領が改訂されました。今後投稿される方は、学会誌投稿規定に基づいて新しい執筆要領に従ってください。

→ https://sitejama.jp/?page_id=147

2.再稿(修正原稿)等の提出に関する注意事項がありますので、ご確認ください (ページの下)

 → https://sitejama.jp/?page_id=110

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学会誌編集委員会

2015年度スタディ・グループ/産学共同研究グループ決定

8月28日(金)に近畿大学で開催された常務理事会において、2015年度スタディ・グループおよび産学共同研究グループについての選考が行われ、審議の結果、以下のグループの設置が承認されましたので、ここでお知らせいたします。

スタディ・グループ
研究課題:「コスト変動の把握と変動の原因解明に向けた実証的研究」
研究概要:PDF
研究代表者:安酸 建二(近畿大学)
メンバー:新井康平(群馬大学)
佐久間智広(松山大学)
福嶋誠宣(京阪電鉄不動産株式会社,神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程)
北田智久(神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程)
濱村純平(神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程)
劉 美玲(神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程)
小笠原亨(神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程)

産学共同研究グループ研究課題:「経営目標(KPI)と予算の設定及び業績予想に関する産学協同研究」
研究概要:PDF
研究代表者:清水信匡(早稲田大学)
メンバー:清水信匡(早稲田大学)
矢内一利(青山学院大学)
高橋克幸(早稲田大学)
高原康太朗(早稲田大学)
柳 良平(エーザイ(株)常務執行役CFO)

2015年度年次全国大会のプログラム掲載

日本管理会計学会 会員各位

8月28日(土)から30日(日)にかけて開催の2015年度年次全国大会の案内を掲載いたします。29日(土)の懇親会では、30kg台の近大マグロを一匹手配いたしました。懇親会へもぜひご出席ください。

また、学会直前になりますと宿泊先の確保が困難になりますので、ホテルのご予約も早めにお済ませください。

2015年度年次全国大会プログラム(PDF版)

2015年度全国大会実行委員長 安酸建二

2015年度 第2回(第46回) 九州部会 開催記

■■ 日本管理会計学会2015年度第2回(第46回)九州部会が、2015年7月25日(土)に九州産業大学(福岡市東区)にて開催された(準備委員長:浅川哲朗氏(九州産業大学))。今回の部会では、九州以外に関西・中部からもご参加をいただくなど、10名近くの研究者や実務家、大学院生の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

■■  第1報告は、田尻敬昌氏(九州国際大学)より、「組織スラックとフィードフォワード・コントロール―スラック形成とその戦略的展開」と題する研究報告がなされた。本報告は、組織スラックをフィードフォワード・コントロールの観点から再検討することを目的としたものである。
組織スラックの機能には、戦略的行動やイノベーションを促す機能があり、例えば、組織が利害対立関係下にあっても、組織スラックを利用することでイノベーションが起こる可能性がある。報告者は、フィードフォワード・コントロールにおいては見積値と目標値の差異を解消することに焦点があてられているものの、組織スラックの機能に焦点をあてた場合には、当該差異は解消するのではなく、「合意形成が得られるであろう次善的に適切な値」に設定すべきとして、会計情報の指標間において対立関係が生じていることに言及している。

■■ 第2報告は、緒方光行氏(福岡常葉高等学校)より、「キャリア教育の視点に立った管理会計の指導法について」と題する研究報告がなされた。本報告は、平成25年度の高等学校学習指導要領の改訂により、新たに導入された「管理会計」の現場での現状と課題を説明した上で、キャリア教育で重視されるようになった観点別評価の実態を紹介したものである。
観点別評価の導入背景には、検定試験合格の勉強に偏重しすぎている現状が問題視されていることがあり、観点別評価を導入することにより、会計指標の理解力や表現力が求められるようになっている。報告では、話し合い活動としてKJ法や、発表方法としてワールドカフェ方式など、様々な取り組みが紹介されているものの、管理会計では、高校生を対象にした管理会計の教材が不足している現状から、高大接続などによる指導の充実が求められていることがあげられている。

■■ 第3報告は、招聘講演として、今井範行氏(名城大学)より、「デュアルモード管理会計とプロアクティブスラック―予算スラックの順機能性に関する一考察―」と題する研究報告がなされた。本報告は、逆機能的な予算スラックとは異質の順機能的な予算スラックとして、トヨタ的業績管理会計の事例を取り上げ、その要諦について「プロアクティブスラック」として概念化をはかるとともに、その管理会計的意義について考察を加えたものである。
トヨタなどグローバルに事業展開する企業では、企業外部の想定2015kyusyu2-1.jpg外の潜在リスクを予見することが難しい。そのためトヨタでは、為替レートや販売数量など収益ドライバーの前提を「保守的」な水準に置き換えた利益計画を提示して、その保守的に置き換えた分の利益減少分を、追加的なコスト低減策の策定でカバーすることが求められている。報告では、当該コスト低減策により、順機能的な予算スラックとしてプロアクティブスラックが形成されていることが、設例や図表を用いて紹介されている。

足立俊輔 (下関市立大学)

2015年度 第1回 フォーラム開催記

■■ 2015年4月19日(土)、2015年度第1回フォーラムが早稲田大学において開催された。今回のフォーラムでは、昨年発刊された創設20周年記念英文学会誌の共同編集者としてご尽力頂いたElla Mae Matsumura氏(Wisconsin大学)をお迎えし、基調講演が行われた。続いて、統一論題では、『価値創造経営の管理会計』として、伊藤和憲氏(専修大学)、挽文子氏(一橋大学)、安酸建二氏(近畿大学)より報告が行われた。いずれの報告も、会場から活発な質問や建設的な意見があり、有意義な議論となった。

■■ 基調講演
■ Ella Mae Matsumura氏(Wisconsin大学)
“What is good management accounting research and how do we get it done?”

管理会計研究のトピックスと目的を提示した後、研究ジャーナルで発表するという観点から、管理会計研究に必要な要素が提示された。まず、先行研究の紹介を交えながら、管理会計研究を行うために必要な条件が述べられた。次に、実際に研究ジャーナルで発表までの手順や査読期間など、米国の事例が紹介された。そして、査読の手順を管理する視点から、提出した論文が掲載不可、再提出または掲載許可などとなった場合に分類して、それぞれの場合で、研究者が論文の掲載に向けて、論文や査読者に対して行うべきことが提案された。最後に、今後の管理会計研究のトピックスについて、新たに注目されてきたものや、未解決な問題を具体的に提示された。

■■ 統一論題
■ 第一報告 伊藤和憲氏(専修大学)
価値創造のメカニズムと新たな理論的モデルの提示

まず、インタンジブルズを経営学、財務会計、業績管理、BSCの各観点から整理を行った。次に、コーポレート・レピュテーションの定義を確認した。続いて、レピュテーションと財務業績の関係に関する研究、レピュテーションの媒介変数、および永続性に関する研究を整理した。特に、永続性に関する研究において、財務業績が現在のコーポレート・レピュテーションに影響を及ぼすこと、現在のコーポレート・レピュテーションが将来の財務業績に影響を及ぼすことを確認した。さらに、Surroca et al.(2010)の研究に基づいて、好循環の理論的フレームワークを紹介した。これらの文献研究の整理を行った後、インタンジブルズと企業価値の創造を結び付ける新たなフレームワークを提示した。

■ 第二報告 挽文子氏(一橋大学)
価値創造とアメーバ経営 – 医療・介護組織を対象として –

医療・介護組織における価値とは、価値創造とは何かを定義してすること。そして、アメーバ経営は、医療・介護組織の価値創造に貢献するのかというリサーチ・クエスチョンを提起した。まず、価値創造について、患者にとっての価値を高めるというポーターの提案を紹介した。次に、アメーバ経営の定義を提示して、時間当たり採算の特徴、および時間概念の導入のメリットについて説明した。そして、ポーターの提案との相違点を示し、アメーバ経営の意義を考察した。最後に、好循環を持続させるためには、経営理念とフィロソフィーが不可欠であるが、医療・介護組織はアメーバ経営と親和性が高く、管理会計は医療・介護組織などでも機能すると結論付けた。

■ 第三報告 安酸 建二(近畿大学)
企業価値経営・企業価値評価におけるCVP分析

先行研究を紹介して、CVP関係に基づく収益構造の把握と利益管理は、企業価値の向上に貢献する可能性があることを示し、回帰分析により、変動費率を推定した。公表データを用いて分析した結果、短期間で変動費率と固定費が変化している可能性があることが示唆された。また、内部データを用いて分析した場合、教科書が想定するほど、CVP関係は単純ではないことが明らかとなった。そして、CVP関係の解明に向けた管理会計研究は、企業価値評価や企業価値経営に対して重要な貢献をなし得る可能性を持つことを説明した。また、変動費と固定費を再検討する動きもあり、CVP分析は重要な研究対象となりつつあると述べられた。

2015年第1回フォーラム実行委員会