2024年度第1回(第66回)九州部会開催記

 2024年6月1日(土)13:50~17:30

■■ 日本管理会計学会2024年度第1回(第66回)九州部会が、2024年6月1日(土)に、中村学園大学(福岡市)にてハイブリッド方式で開催された(準備委員長:中村学園大学教授・水島多美也氏)。準備委員長のご挨拶の後、特別講演および研究報告がおこなわれた。対面参加・オンライン参加合わせて50名を超える研究者や実務家の参加を得て活発な質疑応答がおこなわれた。


水島氏

 

■■ 福岡市に本社を置く創業1905(明治38)年の老舗菓子店で「鶴乃子」などで有名な株式会社石村萬盛堂の石村慎悟氏から「創業120年 石村萬盛堂のこれから」と題して特別講演が行われた。講演当日の朝にお子さんが誕生されご多忙にも関わらずご登壇くださった。会社の歴史と概要、業界の概況と抱える課題、自社の陥った危機と再生、これから先の自社とJTC(伝統的な日本の会社)が生き残るためには、という構成でお話しされた。マシュマロを贈るホワイトデーを始めたのは石村萬盛堂でありその文化は日本を越えてアジアに広がっていること、経営危機に陥り2021年から経営再建を進めているが、危機の原因は、コロナ禍・人口減少・原材料高騰などの外部要因ではなく、人材育成の軽視・手厚い銀行支援への甘え・市場変化に対する慢心といった内部要因こそが真因であったこと、老舗大国日本が生き残るために、M&Aによる事業承継や1ブランド特化などの構造改革、職人の高付加価値化などの自社自助努力、OEMを活用した利益事業への絞り込みなどを提案された。


石村氏

 

■■ 研究報告の第1報告は、康冬鶯氏(慶応義塾大学博士院生) により、「日本管理会計分野における本社をめぐる文献の研究」と題する報告が行われた。企業グループの中心である本社に焦点を当てた管理会計研究の必要性を指摘したうえで、我が国の管理会計研究を対象とした文献研究の成果を報告された。『管理会計学』『原価計算研究』『メルコ管理会計研究』を対象におこなったシステマティックレビューの結果、29本の論文が抽出された。分析の結果、研究動向として、事業部や海外子会社の研究が多く、本社に関する研究は少ないなか、本社による信条コントロールの研究に注目された。また本社に着目する先行研究の知見として、本社による分権度合いの影響、純粋持株会社体制の是非、本社費配賦問題、海外子会社トップマネジメントの国籍問題などを紹介された。今後の課題として、全体最適に向けた子会社間の連携や、本社による信条コントロールと管理会計の関係などを挙げられた。


康氏

 

■■ 研究報告の第2報告は、田坂公氏(福岡大学教授)により、「中小企業における
原価企画の実践は可能か―生方製作所のケースに基づいて―」と題する報告が行われた。リサーチクエスチョンとして、中堅・中小企業における原価企画の実施可能性、原価企画のインフラとしての管理会計教育の必要性などを挙げたうえで、エアコン室外機のコンプレッサー用保護スイッチなどを生産する生方製作所(愛知県)のケースを紹介された。中堅・中小企業における原価企画を実践するための道筋をまとめたうえで、同社への訪問調査の結果、源流管理、VEは実施されていないが原価低減活動の存在、戦略性、市場志向性、ロット別個別原価計算の実施、生産リードタイムの減少、目標原価への積極的な関与などが確認され、中堅・中小企業においても原価企画が実践可能であることを示された。また中堅・中小企業での原価企画実施のインフラとして、経営者だけでなく税理士などの会計専門家に対する管理会計教育の必要性を指摘され、商工会議所などとの連携による会計専門家への研修プログラムや、会計専門家と管理会計研究者の連携による中小企業への管理会計導入のアクションリサーチなどを提案された。


田坂氏

■■ 研究報告会後、九州部会総会が開催された。次回の九州部会は、2024年10月26日(土)に、佐賀大学で開催予定である。

文:丸田(九州大学)、写真:⻆田(佐賀大学)

【再送】2024 年度第 2回フォーラムの開催について

日本管理会計学会会員 各位

謹啓 時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
 さて、日本管理会計学会2024年度第2回フォーラムを下記の通り開催致します。皆様におかれましては万障お繰り合わせの上、ご出席を賜りますようお願い申し上げます。当日の懇親会も準備してお待ちしておりますので、ご参加を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、ご出席予定の先生におかれましては、準備の都合上、6月14日(金)(締切を延長しました)までに、下記のリンク先のGoogleフォームからお申し込みください。問い合わせは北田( tkitadabus.kindai.ac.jp )宛にメールでご連絡ください。

<参加申込> https://forms.gle/2CGLbFPyc8UjQESe6

謹白


開催日:2024年6月29日(土) 14:10〜17:00
会場:神戸大学六甲台第1キャンパス 本館

〒657-8501 神戸市灘区六甲台町2−1
交通アクセス | 神戸大学 (https://www.kobe-u.ac.jp/ja/campus-life/general/access/rokko/rokkodai1/
阪急六甲駅またはJR六甲道駅から神戸市営バス36系統で「神大正門前」で下車ください。

2024年度第2回フォーラム準備委員会
梶原 武久(神戸大学)
佐久間 智広(神戸大学)
北田 智久(近畿大学)

※交通アクセス・プログラム等の詳細は、添付のPDFファイルをご確認ください。


プログラムPDF → 

2024年度年次全国大会 開催のご挨拶

大会準備委員長 中央大学 渡辺岳夫

 日本管理会計学会会員の皆様におかれましては,ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 このたび,2024年度年次全国大会が,9月2日(月)~4日(水)の日程で,中央大学茗荷谷キャンパスにおいて開催されることになりました。同キャンパスは中央大学の中で最も新しい都心キャンパスであり,2023年4月に開設されました。その最新のキャンパスに管理会計学会の皆様を招きできることを嬉しく存じます。新型コロナウイルス感染症はほぼ収束しましたので,会員の皆様のご理解とご協力を賜りながら,以下にご案内の「日本管理会計学会2024年度年次全国大会スケジュール予定」にもとづき,対面形式による大会開催で準備を進めております。
 統一論題のテーマは,「AI時代の会計教育と管理会計実務」です。また,スタディ・グループ報告および産学共同研究グループ報告が予定されております。さらに,特別講演会では,2014年から2022年まで第5代日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のチェアマンとして,リーグの組織改革に尽力された村井満氏のご講演を予定しております。
 自由論題報告の募集に際しては,会員の皆様から38組のご応募を頂戴いたしました。8月10日(土)を締切としてフル・ペーパーのご提出をお願い申し上げます。詳細の大会プログラムについては,7月中旬頃を目途に郵送させていただく予定です。
 大会準備委員会一同,万全の準備を進める所存でございます。多くの会員の皆様のご参加を賜りますよう,何卒,よろしくお願い申し上げます。

日本管理会計学会2024年度年次全国大会スケジュール予定
会場:中央大学茗荷谷キャンパス(東京都文京区大塚1丁目4−1)

 

2024年度第1回関西・中部部会 開催記

榎本哲也(南山大学大学院 博士後期課程)

日本管理会計学会2024年度第1回関西・中部部会が、2024年5月25日(土)に南山大学で行われた(準備委員長:南山大学経営学部 教授 窪田祐一)。
関西・中部部会長 徳崎 進 氏(関西学院大学大学院経営戦略研究科 教授)のご挨拶の後、特別講演および研究報告がおこなわれた。ハイブリッド方式(対面+オンライン)により50名近い研究者や実務家の参加を得て活発な質疑応答が行われた。


(関西・中部部会長 徳崎 進 氏によるご挨拶)

第1部は、丹羽哲也 氏(大同特殊鋼株式会社 執行役員 ESG推進統括部長)による「環境価値と管理会計-鉄鋼業を題材として―」と題した特別講演が行われた。鉄鋼業界を取り巻くさまざまな状況を踏まえ、その中でも環境課題に着目した取り組みとして大同特殊鋼の管理会計制度と原価システムに機能追加されている製品別のCO2排出量(CFP カーボンフットプリント)算定システムをご紹介いただいた。カーボンニュートラル達成への仕組みづくり、ルール形成へ同社が参画・貢献するためには、サプライチェーンの上流域で同社が生産する環境配慮型鋼材が持つ環境価値の正確性、公平性を確保することが必要であるという考えのもと、その実現のために管理会計が活用されている貴重な実践の内容をわかりやすくご説明いただいた。


(大同特殊鋼株式会社 執行役員 ESG推進統括部長 丹羽哲也 氏による特別講演)


(特別講演の際の質疑応答の様子)

第2部は、3件の研究報告が行われた。第1報告として、今井範行 氏(名古屋国際工科専門職大学工科学部 教授)による「レベニュー・マネジメントのフロント・ローディング―キーエンスとトヨタにみる戦略的レベニュー・マネジメント―」と題した研究報告が行われた。高業績を達成するキーエンスとトヨタが、企画・開発段階におけるレベニュー・マネジメントに注力している点に注目し、企業の企画・開発段階における戦略的レベニュー・マネジメントを意味する新たな管理会計概念として「収益企画」の概念が提唱された。


(名古屋国際工科専門職大学工科学部 教授 今井範行 氏による研究報告)

第2報告として、野瀬康晃 氏(名古屋大学大学院経済学研究科博士後期課程)による「製造現場における生産の柔軟性の評価指標と評価の事例」と題した研究報告が行われた。製造現場の業績評価が効率性指標に偏重しているという問題意識から、効率性に加えて応答性を考慮した総合力の試験的評価結果を示したうえで、それら全体のバランスを踏まえて改善活動に繋げる必要があることが指摘された。


(名古屋大学大学院経済学研究科 野瀬康晃 氏による研究報告)

第3報告として、平山睦喜 氏(広島大学大学院人間社会科学研究科博士後期課程)による「企業内部からのガバナンスとパフォーマンスの関係について―長期的視点としての投資行動に着目して―」と題した研究報告が行われた。部下取締役によりCEOをモニターする内部ガバナンスモデルは、日本の主要企業においても、CGコードをはじめとする施策の導入により、一定程度の機能が発揮されていることが実証研究により示された。また、内部取締役の性別・国籍多様性の内部ガバナンス機能が、CEOと部下取締役との年齢差に起因する内部ガバナンス機能を高める効果が示された。


(広島大学大学院人間社会科学研究科 平山睦喜 氏による研究報告)

なお、当日午前には同会場において牧誠財団の研究助成を受けた査読セミナーも実施された。

2024年度第1回リサーチセミナーについて

日本管理会計学会・会員各位

2024年度第1回リサーチセミナーを2024年7月27日(土)にオンラインで開催いたしますので,スケジュールのご案内を申し上げます。

報告をご希望の方は,下記の応募要領をご参考の上,ご応募をいただきますようお願い申し上げます。
本リサーチセミナーは若手研究者の研究水準向上の機会として開催されるものです。
報告希望多数の場合には,ご希望に添えない場合もあることをご了解の上,お申込み下さい。
またその場合,若手研究者を優先するものといたします。

参加申込の案内につきましては後日,プログラムの確定後に,もう一度連絡いたします。

              記
開催日:2024年7月27日(土)
開始時刻:14時より(予定)
開催方法:オンライン(zoom)
進行:報告30分,討論15分,フロア質疑10分(予定)

<報告応募要領>
1. 締切日:2024年6月9日(日)
2. 応募方法:標題に「リサーチセミナー報告希望」と記載し本文中に
 下記を明記のうえご応募ください。
(1) 報告タイトル・概要(200-300字程度)・言語(日本語または英語):
(2) 氏名:
(3) 所属機関:
(4) 職名:
(5) 連絡先(E-mail):

 なお,ご報告者には,日本語と英語のいずれのご報告の場合にも,6月下旬頃までにFull paperまたはExtended Abstractの提出をお願いいたします。
3. 応募先:岡山大学 天王寺谷達将
    tentatsuokayama-u.ac.jp
  件名を「リサーチセミナー報告希望」として,下記にお申し込みください。                           

敬具