2025年度第2回フォーラム開催記

 2025年度第2回フォーラムは,2025年7月19日(土)14時00分から16時30分まで,福岡大学商学部において対面形式にて開催された。開会に先立ち,本学会会長・﨑章浩氏(東京国際大学)よりご挨拶を賜り,続いて開催校を代表して,永星浩一氏(福岡大学副学長)より心温まるご挨拶を頂戴した。その後は,田坂公氏(福岡大学)の司会により,プログラムが滞りなく進行した。


﨑章浩会長挨拶


永星浩一副学長挨拶


 本フォーラムでは,特別講演として塩塚武氏(株式会社不動技研ホールディングス・代表取締役社長)をお迎えし,あわせて草場康之氏(福岡大学大学院博士後期課程院生)の研究報告,および李会爽氏(リ ホイシュアン・山梨学院大学)による研究報告の計3件が行われた。
 当日は,非会員・大学院生6名を含む34名の参加があり,いずれの特別講演・研究報告に対しても活発な質疑応答が交わされ,大変有意義な議論が展開された。フォーラム終了後には懇親会も催され,参加者間の親睦が一層深まった。盛況のうちに本フォーラムは無事に閉会した。


〔特別講演〕
◎講演者:塩塚 武 氏(株式会社不動技研ホールディングス 代表取締役社長)
◎論  題:企業活動の実態 ~不動技研グループの業績管理の実態と課題~

塩塚 武氏による特別講演

 塩塚氏は「企業活動の実態~不動技研グループの業績管理の現状と課題~」を主題とし,脱炭素化・顧客動向変化という事業環境下での実務対応を検討された。M&A・PMIや持株会社体制への移行により事業範囲・役割を明確化するとともに,原価計算制度と目標値設定を伴う予算管理手法の導入・運用を通した中小企業における業績把握・管理の実態と課題を論じた。
参考URL: 株式会社不動技研ホールディングス https://www.fudo-giken-hd.co.jp/

 〔研究報告〕
第1報告
◎報告者:草場 康之 氏(福岡大学大学院士後期課程院生)             ◎報告題目:顧客会計(Customer Accounting)を活用した収益向上のメカニズム: ダイレクトレスポンス型テレビショッピング企業を対象としたケース・スタディ


草場 康之氏による研究報告

 

 草場氏は,顧客データを活用してマーケティング活動の成果を測定する顧客会計(Customer Accounting, CA)は,近年体系化が進んでいることを説明した。しかし,CAと収益の関係を体系的 に検証した研究は限られている。そこで本発表では,ダイレクトレスポンス型テレビショッピング企業を対象にケース・スタデ ィを実施し,広告宣伝費の投資対効果を分析した。CAとマーケティングの 接点を探ることで,顧客生涯価値への影響を可視化し,デジタルマーケティングなどへ の応用可能性を示した。

第2報告                                               ◎報告者:李 会爽 氏(リ ホイシュアン:山梨学院大学)                            ◎報告題目: 統合報告におけるマテリアリティの特定とガバナンスの実効性

李 会爽氏による研究報告


 李氏は,管理会計の視点から,統合報告におけるマテリアリティの特定プロセスと,それを支えるコーポレートガバナンスの有効性に焦点を当てて報告した。マテリアリティの特定には,ステークホルダーとの対話や経営陣の関与が不可欠であり,その有効性はガバナンス体制の運用と密接に関係する。企業事例(第一工業製薬,三菱ガス化学)を通じて,ガバナンスの実効性が持続可能な企業価値の創出にどのように貢献するかについて考察した。

文責 田坂 公(福岡大学)

日本管理会計学会「管理会計の日」記念フォーラムについて

日本管理会計学会 
会員 各位
                                            日本管理会計学会
                                            フォーラム準備委員長 伊藤 和憲

             日本管理会計学会「管理会計の日」記念フォーラム

皆様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
いつも格別なお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます。
さて、日本管理会計学会記念フォーラムを下記の通り開催致しますので、
万障お繰り合わせの上、ご出席下さいますようご案内致します。

                                            記                                         
日 時:2025年9月13日(土) 14:00〜16:30
会 場:専修大学神田キャンパス 7号館3階731教室
〒101-8425 千代田区神田神保町3-8
<アクセス>https://www.senshu-u.ac.jp/access.html
<キャンパスマップ>https://www.senshu-u.ac.jp/about/campus/
主 催:日本管理会計学会
参加費:無料

【参加確認Form】
フォーラムと懇親会の参加は、以下のFormより申請してください。
https://forms.gle/BdaFLefgmwsZwChm6
回答期限は、8月23日(土)迄となります。

Google Fromをご利用されない場合は、メール(h-miyagawa<a>senshu-u.jp  <a>は@に書き換えてください。)にて記念フォーラム及び懇親会への参加の可否をご連絡いただければ幸いに存じます。

プログラム=>管理会計の日記念フォーラム案内

日本管理会計学会 2025年度年次全国大会のパンフレットについて

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 会員の皆様に対しましては、近日中に、日本管理会計学会2025年度年次全国大会の「大会パンフレット」「大会参加費等にかかる払込取扱票」および「会長および理事の選挙に関するお知らせ」を郵送させていただきますが、それに先立ちまして大会パンフレットのPDFファイルをお届けします。
 大会参加費等のお支払い期限(大会参加の申込期日)につきましては、8月8日(金)に設定させていただいております。払込取扱票の会員番号欄につきましては、当該郵便封筒の宛名シールに会員番号(会員ID)を印字していますので、その数字をご記入ください。振込手数料につきましては、大変恐縮ですが、各自でご負担をお願いします。
 何らかの事情で、会員の皆様に大会パンフレット等が届かなかった場合は、下記の大会準備委員長までメールにてご連絡のほど、よろしくお願い申し上げます。
 今大会は、8月29日(金)~31日(日)の日程で、甲南大学岡本キャンパスにて対面形式で開催いたします。会員懇親会も予定しております。会員の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

敬具

          日本管理会計学会
          2025年度年次全国大会準備委員長  杉山善浩
          〒658-8501 兵庫県神戸市東灘区岡本8-9-1
          甲南大学経営学部
          jama2025dune.ocn.ne.jp

2025年度年次全国大会パンフレット(PDFファイル)ダウンロード:

https://sitejama.jp/wp-content/uploads/2025/07/JAMA2025_KONAN-U.pdf

* 学会ホームページに掲載している大会パンフレットには、自由論題報告のフルペーパーをダウンロードするためのユーザーIDおよびパスワードを記載しておりません。会員の皆様に郵送する大会パンフレットをご確認ください。なお、パスワードの取扱いにはご注意ください。

 

2025年度第1回リサーチセミナー 開催記

 2025年度第1回リサーチセミナーは、金沢大学を開催準備校(準備委員長:阪口 博政 氏)として、2025年6月28日(土)14時00分~15時05分にZoomを用いてオンラインで開催されました。当日の参加者は、16名でした。
 日本管理会計学会・副会長の島 吉伸 氏(近畿大学)より開催の挨拶があり、阪口 博政 氏(金沢大学)の司会により進められました。報告者は商 哲 氏(弘前大学)で、討論者は梅田 宙 氏(高崎経済大学)でした。討論者およびフロアから、研究をより良くするための建設的なコメントと質問があり、活発な議論が行われました。

報告者:商 哲 氏(弘前大学)
討論者:梅田 宙 氏(高崎経済大学)
報告タイトル:ルーズ・コントロールによるBSCを軸とした経営管理について

 報告では、バランスト・スコアカードにおけるルーズ・コントロールによる経営管理の事例分析が行われました。先行研究では、バランスト・スコアカードにおいては4つの視点に加え、プロセス指標や先行指標まで設定してタイト・コントロールの実施を支援していると考えられる一方で、これまでの研究においてもルーズ・カプリング、タイトネスなどに関する議論が見られています。そこで本研究では、バランスト・スコアカードを用いた時の、ルーズ・コントロールによる経営管理の可能性やルーズネスのレベルの検討が行われました。結果として、事例からは先行研究にあるタイト・コントロールが行われていなくても企業が成長でき、コントトロール・メカニズム自体のルーズネスとコントロール・メカニズム間のルーズネスとして行われている可能性が示されました。

文責:阪口 博政(金沢大学)

2025年第1回関西・中部部会 開催記

2025年6月14日 

 日本管理会計学会2025年第1回関西・中部部会が、2025年6月14日(土)に京都大学(吉田キャンパス)を主催校として開催された。今回の部会も、対面とWeb(Zoom)を活用したハイブリッド開催となった。
 部会の開催にあたり、まず、澤邉紀生部会準備委員長からプログラムや進行方法に関する説明があり、次いで、窪田祐一関西・中部部会長から開会のご挨拶をいただいた。

 その後、プログラムにしたがって、特別講演1件及び自由論題報告2件の発表がなされ、活発な質疑応答が行われた。参加者は43名(対面28名、オンライン15名)であった。以下、特別講演、各報告の概要を簡単に紹介する。

第一部[特別講演] 司会:セルメス鈴木寛之(京都大学大学院経済学研究科 准教授)
講演者:野田 正史氏(株式会社プラス 代表取締役社長)
講演テーマ:「農業所得向上に貢献する 農産物直売所野田店舗経営」

 特別講演では、株式会社プラス代表取締役社長の野田正史氏より直売所の経営を中心にお話を頂いた。はじめに、会社の概要が説明された。店舗数は33店舗(和歌山17店舗 大阪府9店舗 奈良県6店舗 兵庫県1店舗)、登録している生産者数は約9,000名で本社は田辺市に構えているとの説明があった。続いていくつかの店舗の様子が写真で紹介されたが、どれも工夫された店構えであることが鮮明に見てとれた。そして話は店舗が誕生した経緯へと移っていった。1号店開業当初にはなかなか知名度や売上が伸びないなどご苦労も多くあったが、「手間ひまかけて作っても、従来の出荷ルートでは誰が生産者か分からないため、他の人と同じ扱いをされる」ことに不満を感じていた生産者にとってはやりがいを感じられるビジネスモデルとなっていることが分かり、手応えを感じたことなどが説明された。
 次に、スーパーと比較したときの直売所の違いを述べながら、同社が運営する直売所の特徴が詳述された。例えば、品揃えに関しては、スーパーは幅広い商品を揃えているのに対して、直売所ではナショナルブランドを敢えて置かない場合が多いことや、地元産を中心とし、肉や魚は店舗毎の置かれた状況に応じて取り扱いの有無を柔軟に使い分けていることが紹介された。また、売れ残り品に関しては、スーパーでは自店舗が負担するのに対して、直売所では生産者が負担する点が大きな違いとして紹介された。さらに、多店舗展開を行うことで個々の生産者の売上高増大に大きく貢献できるようになったことが幾つかの事例と共に紹介され、流通の部分は同社が担うことで生産者の負担を抑えていることや、それでも中には自分が出品している店舗の一つ一つを見て回るような意欲的な生産者もいることなどが併せて説明された。最後に、比較を通じて浮き彫りとなる直売所のメリット・デメリットがまとめられた。特に、大きなメリットとして、流通を大幅に省略することで生産者にとっては手取り額が増え、同時に消費者にとっても価格が抑えられる点や、生産者にとっては消費者の声がよりダイレクトに感じられるようになり、消費者の声がモチベーションとなる点が挙げられた。これに対し、デメリットとして、同社の運営する直売所ではないものの、補助金を活用した一部の道の駅や直売所では非効率と思われるような運営がなされているケースもあることが紹介された。
 また、スーパーと直売所の違いについて、会計的な数値からの考察も示された。具体的に、上場されている同規模のスーパーおよび直売所が実際に公開している財務諸表を比較し、費用構造や資産構造の違いが対比された。とりわけ、損益計算書おいては販管費に大きな違いが見て取れ、この理由として、スーパーでは肉を加工する段階などに多くの人材を要する一方、直売所はそうした人材が不要なため比較的人件費が抑えられることが挙げられた。また、貸借対照表においては在庫リスクの有無により棚卸資産に如実な違いがみられ、その結果として棚卸資産回転率や総資産回転率にも大きな差が表れていることが数字をもって示された。これらの違いにより、直売所はスーパーよりも効率的な経営ができる可能性が高いと結論づけられた。
 講演後は、多店舗経営によるカニバリゼーションの有無や、スーパーの中にある直売コーナーと直売所の違い、直売所のより詳細な利益構造、他の直売所との差別化のポイントなどの多くの質問が挙がり、非常に活発な質疑応答となった。

 

第二部 司会:セルメス鈴木寛之(京都大学大学院経済学研究科 准教授)
第1報告
報告者:矢野 厚登氏(京都大学経営管理大学院博士後期課程)
論題:中小病院におけるマネジメントコントロールシステム

 本研究では、中小病院の6事業所の理事長・事務長に対するインタビュー結果に基づく考察、病院のマネジメント・コントロール・システム(以下MCS)に関するフレームワークの検討、および厚労省「医療施設経営安定化推進事業報告書」における17事業所の調査結果に基づく分析が示された。
 分析の結果として、中小病院におけるMCSは「会計・組織・文化・クラン」のパッケージとして機能しており、また、その浸透・定着には事務長の役割が極めて重要であることが示された。特に、事務長が管理会計の知識と病院業務の理解を充実させた上で経営会議に参加することで、トップ(理事長)と現場をつなぐ“連結管”としての役割を果たすことになり、これらの要素を備えることが中小病院におけるMCSの浸透・定着に寄与することが示された。

 

第2報告 
報告者:重田 直人氏(The University of Information Technology and Management Rzeszow, Doctor of Business Administration)
論題:「Relationship Between Outside Director and Corporate Value Improvement Strategy」

 本研究では、近年、企業による不祥事の多発を背景として導入例が増えている社外取締役が企業価値の向上に資するか否かの検証がなされた。具体的には、企業価値の代理変数としての企業による開示の質、コーポレートガバナンス構造、および社外取締役比率に関する3つの仮説を導出し、日本企業3,500社を母集団とするデータソースから100サンプルを抽出して検証を行った。
 分析の結果、仮説2は2022年のデータでは棄却されたものの2015年のデータでは支持され、仮説1および仮説3はいずれのデータにおいても支持された。以上の結果を踏まえ、社外取締役は少なくとも部分的には企業価値向上に寄与していると結論した上で、それ以外の企業価値向上要因についても探索的な検討が示された。


 なお、以上の2報告いずれにおいても報告後の質疑応答では参加した研究者・院生や実務家などと報告者との間で活発に議論が交わされ、盛会のうちに部会の全プログラムを終了し、澤邉準備委員による挨拶をもって閉会した。