主催校:帝塚山大学(準備委員長:松木智子)
開催日時:2025年12月6日(土)14:00-16:00
開催方法:オンライン
参加者数:23人(事前申込数)
2025年度第2回リサーチセミナーは、帝塚山大学(準備委員長:松木智子)を開催校として、2025年12月6日(土)14:00-16:00にZoomを用いたオンラインのみの形態によって開催されました。参加登録者数は23名、報告30分、討論15分、フロア質疑10分で行われました。なお、参加希望者には、開催2日前にZoomのURLと発表者のフルペーパーをメールにて送付しました。
【プログラム】
(報告30分、討論15分、フロア質疑10分)
14:00-14:05 開催挨拶
14:05-15:00 研究報告1(報告30分、討論15分、フロア質疑10分)
・報告者:加藤大智先生(松山大学)
・討論者:安酸建二先生(近畿大学)
15:00-15:55 研究報告2(報告30分、討論15分、フロア質疑10分)
・報告者:永田大貴氏(神戸大学大学院博士後期課程)
・討論者:妹尾 剛好先生(中央大学)
15:55-16:00 閉会挨拶
第1報告では、日本企業の配当予測情報がシグナンリグとして調整コストとなり、それ販売費及び一般管理費の下方硬直性をもたらしていることを実証する研究発表でした。ディスカッサントからは、配当予測というシグナリングが調整コストになる点よりも、むしろ、経営者は自分が出したシグナリング(配当予測)と矛盾した行動を取りたくないということがこの論文の主張なのではないか、という指摘があった。また、会場からの質問では、配当を出す/出さないというダミー変数を用いているが、配当は金額だから連続変数として扱ってもいいのではないか、という質問が出ました。
第2報告では、業績評価において、本人の実力以外の運/不運を調整することによるリスク態度と合理的意思決定への影響についての実験室実験の研究発表でした。3つの仮説の内、「不運」があったときのみに業績評価を調整する場合には、被験者はリスク愛好的になるという結果が示されました。しかし、「不運」と「不幸」の両方を調整する場合には、一見してより真実的な業績評価が行われているようにみえて、それが合理的意思決定を促進するとは言えないという結果が示されました。ディスカッサントからは、「不運のみ調整」を実施している事例は現実にはあると思うのでフィールドリサーチをしてみるといいのではないか、などのコメントがあった。また会場からの質疑応答では、「運/不運」の測定に関しては、事前に確率が示されているのは「運/不運」を測定していることにはならないのではないか、というコメントがあり、発表者も再検討するという回答でした。
【研究報告1】
・報告タイトル:Signaling and Cost Management: Dividend Forecast and Asymmetric Cost Behavior in Japan
・報告者:加藤大智先生(松山大学)
・概要:This study investigates the relationship between signaling and cost management through the lens of dividend forecast and asymmetric cost behavior.
Using data of Japanese firms, this study finds that dividend forecasts, representing a commitment to dividends, is positively associated with cost stickiness.
This findings suggest that signaling induces adjustment costs that influencing managerial resource adjustments.
【研究報告2】
・報告タイトル:主観的業績評価における幸運・不運の調整方針が意思決定に与える影響
―リスク態度と合理的判断に関する実験研究―
・報告者:永田大貴氏(神戸大学大学院博士後期課程)
・概要:本研究は,主観的業績評価における幸運・不運の調整方針が被評価者の意思決定に及ぼす影響を実験的に検証する。既存研究は不運の調整に主眼を置き,幸運の扱いをほとんど検討してこなかった。本研究は,幸運・不運の調整有無を操作した2×2参加者間実験を実施し,被評価者のリスク態度と合理的判断の変化を測定した。実務において一般的な非対称的調整方針と、理論的に想定可能な評価方針との下で生じる意思決定の差異を捉えることで、主観的業績評価制度が被評価者の行動に及ぼす機能的側面を検討する。







結論として、ハイブリッド・インセンティブの効果は「バランス調整として控えめに理解しておく」べきであり、相乗効果は単純なタスクに限定される可能性が示された。中程度の複雑さにおける不安定性や心理的バイアスに対処し、その効果を最大限に引き出すためには、共通理解の徹底や追加的な調整操作が必要であると提言された。本研究は、ラボ実験では操作や誘発が難しい要因をモデル化することで、インセンティブ行動との関係を体系的に理解する仕組みを提供した点で、理論的な貢献を果たしている。
さらに、サステナビリティにおける取締役会の役割に焦点を移し、現行のコーポレートガバナンス・コードが株主第一主義の影響を残しつつもサステナビリティを課題としている点、またエージェンシー理論と対立するスチュワードシップ理論が経営者のエンパワーメントを重視する点が論じられた。株式会社をコミットメントの装置と捉えるメイヤーの議論や、CSR経営を許容する日本の会社法の例外規定も確認された。
今後の水口酒造の戦略として、「道後から世界へ、世界から道後へ」というビジョンのもと、輸出増加を通じてブランド価値を高め、最終的には海外顧客を道後に誘客すること、長期的には、酒蔵の一部移転を行い、体験型施設・テーマパーク化の構想、高付加価値な観光体験の提供と収益拡大を図る方針が示された。また、科学的データと杜氏の官能評価データを蓄積し、品質の再現性を高めることが今後の重要課題であると述べられた。