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2021年度第2回(第61回)九州部会開催記

2021年11月13日(土)13:30~16:45
■■ 日本管理会計学会2021年度第2回(第61回)九州部会が、2021年11月13日(土)13:30~17:15に、開催校の福岡大学(福岡市)によって、対面およびオンライン併用のハイブリッド方式で開催された(準備委員長:田坂公氏)。今回の九州部会では、ハイブリッド方式ということもあり、40名近くの研究者の参加を得て、いずれの報告においても活発な質疑応答が展開された。

■■ 特別講演は、釘町豊氏(九州博報堂 常務取締役)により、「九州博報堂のパーパスを体現するためのマネジメント」と題する講演が行われた。本講演は、パーパス経営の重要性について、これまでの九州博報堂での釘町氏の経験を踏まえて紹介された。
2020年に九州を代表とする広告会社 西広との統合により、互いの企業の強みを活かすため、また従業員の意識を変えていくことが重要であると考え、パーパスを主軸とした意識改革をおこなったという。講演では、自分たちが「どのような目的をもって社会に存在するのか」ということ、つまりパーパスを決定することで、素早い経営判断につながることや、自社の強みなどを再発見できるため、社内での共有化がパーパス経営のメリットであると紹介された。
講演後の質疑応答では、フロアやオンライン上から活発なディスカッションが行われ、盛況のうちに終了した。


■■ 研究報告の第1報告は、梅田充氏(金沢星稜大学講師)により、「従業員エンゲージメントを高める組織コンテクストのメカニズム」と題する報告が行われた。本報告は、管理会計の視点から、従業員エンゲージメントと、その成果との関係性をモデル化して考察することを目的とし、ワークエンゲージメントを拡張したモデルの提示と、従業員エンゲージメントを促進する要因として、人をサポートするようなリーダーシップの有用性、コントロール・レバーの使い分けが重要であると述べられた。
報告者は、従業員エンゲージメントは、心理学や組織行動など他分野で議論されているが、どのようにコントロールするかについては、管理会計分野での議論が必要であると述べられ、従業員エンゲージメントに影響する負の要因や、実在する企業に適用した場合の詳細な観察が、今後の検討課題であることが示された。


■■ 研究報告の第2報告は、水野一郎氏(関⻄大学教授)より、「ティール(進化型)組織と管理会計:メガネ21を事例として」と題する報告が行われた。本報告は、メガネ21の事例を通して、「ティール組織」の意義と特徴を明らかにしたうえで、管理会計の在り方についての考察を報告された。
 報告者は、フレデリック・ラルーのティール組織の特徴と、メガネ21の組織特徴との比較分析をされており、ティール組織は、部分的には日本的経営を展開して企業との親和性が高く、さらに日本的経営を進化させ、管理会計の新たな展開の可能性があると述べられた。
報告者は、このようなティール組織の研究から、管理会計はできるだけシンプルな会計が望ましいと述べられ、ティール組織による管理会計は、「カネ」の管理を中心とする資金繰り計算、「ヒト」への配分計算と結びついた限界利益を中軸に、シンプルな管理会計を構築する必要があると提言された。

水野真実(熊本学園大学)

30周年記念Web部会(12月4日開催)のご案内

日本管理会計学会会員 各位

 管理会計学会創設「30周年記念Web部会」の第1回部会を12月4日(土)にオンラインで開催することになりました。第1回部会は2部構成として第1部は、上埜進甲南大学名誉教授をお招きして、特別講演をしていただきます。上埜進先生は管理会計学会の元副会長で2014年には管理会計学会特別賞を受賞されています。またアジア太平洋管理会計学会(APMAA)の発展に尽力され、現在もその代表理事を務められています。部会の第2部は、若手研究者の研究報告会とさせていただきます。
 会員の皆様におかれましては万障お繰り合わせの上、何卒ご出席賜りますよう、ご案内申し上げます。ご参加につきましては、下記よりお申し込みください。

 

1.開催日時:2021年12月4日(土)13時30分~16時00分
2.開催方法 オンライン(ZOOM)
  参加申し込みいただいた方に12月2日(木)にZOOM情報をお伝えします。
3.参加申込方法・問い合わせ先
(1)締切日:2021年12月1日(水)
(2)以下のGoogleフォームから申し込んでください。
   https://forms.gle/XYHtaV5wyrYMWNZi7
(3)問い合わせ先:関西大学 水野一郎
 本部会について問い合わせのある場合には,標題を「30周年記念Web部会問い合わせ」として,下記電子メールアドレスまでご連絡ください。
 電子メールアドレス:icmizuno[at]kansai-u.ac.jp ([at]を半角の@に変更してください)
4.プログラム
  13時30分~13時40分 開会の辞および管理会計学会 伊藤和憲会長のご挨拶
  13時40分~15時00分(特別講演60分 質問20分)
  講演者 上埜 進氏(甲南大学名誉教授・管理会計学会元副会長・APMAA代表理事)
  講演テーマ 「私の研究と学会活動を振り返る」(仮題)
  司会者 水野一郎氏(関西大学)
  15時00分~15時10分 休憩
  15時10分~15時55分 研究報告(報告30分、質問15分)
  報告者 須藤時男氏(早稲田大学産業経営研究所招聘研究員)
  報告テーマ 「ファミリービジネスにおける資産保有の特徴に関する考察」
  司会者 山口直也氏(青山学院大学)

15時55分~16時00分 閉会の辞

第2回リサーチセミナー開催について

日本管理会計学会会員 各位

2021年度第2回リサーチセミナー(日本原価計算研究学会および主催校である大阪大学と共催)につきまして,下記の通りご案内させていただきます。
本リサーチセミナーは若手研究者の研究水準向上の機会として開催されるものです。

1.開催日時:2021年11月20日(土)14時~16時20分
2.開催方法 オンライン(ZOOM)
  参加申し込みいただいた方に11月18日木曜日にZOOM情報をお伝えします。
3.参加費 無料
4.プログラム
  14時00分-14時05分 進行方法の説明・開催の挨拶
  14時05分-15時05分 第1報告(報告35分,討論15分,フロア質問10分)
  報告者 吉見 明希氏(北海道情報大学)
  報告テーマ コンテンツ制作における工程管理の分析
  討論者 伊藤 克容氏(成蹊大学)
  15時05分-15時20分 休憩
  15時20分-16時20分 第2報告(報告35分,討論15分,フロア質問10分)
  報告者 濵村 純平 氏(桃山学院大学)
  報告テーマ Manufacturer encroachment in a product market and common ownership between supply chain parties
  討論者 呉 重和氏(摂南大学)
5.参加申込方法・問い合わせ先
(1)締切日:2021年11月17日(水)
(2)以下のGoogleフォームから申し込んでください。
   https://forms.gle/nJnsZGA5xAn6tiRt6

(3)問い合わせ先:大阪大学 椎葉 淳
   セミナーについてお問い合わせのある場合には,標題を「リサーチセミナー問い合わせ」として,「氏名」「所属機関」「連絡先電子メールアドレス」を明記のうえ,下記電子メールアドレスまでご連絡ください。
   電子メールアドレス:shiiba[at]econ.osaka-u.ac.jp
   ([at]を半角の@に変更してください.)

以上

2021年度第3回フォーラム開催について

日本管理会計学会 会員各位
JAMA2021年度第3回フォーラム実行委員
平井 裕久(神奈川大学)
小村 亜唯子(神奈川大学)

会員各位におかれましては益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
このたび、日本管理会計学会2021年度第3回フォーラムを下記の通り開催の運びとなりました。
皆様におかれましては万障お繰り合わせの上、何卒ご出席賜りますよう、ご案内申し上げます。
ご参加につきましては、以下よりお申し込みください。




開 催 日 :2021年12月18日(土)
会 場 :zoomでの開催(神奈川大学主催)

参加申込:参加希望者は以下より申し込みください。追って、参加に係るzoomの情報をお送りさせて頂きます。
【申込〆切:12/15】 https://forms.gle/rfNhg1XWVyTF4Hqz9

テーマ:「 ESG重視の経営  」

13:30 開会の挨拶

13:35-14:35 特別講演 「タクソノミーとトランジションファイナンス(仮)」
水口 剛 先生(高崎経済大学)

14:40-15:20 第1報告 「日本の製造業における環境配慮型活動の実態と成果に関する研究
―質問票調査と聞き取り調査に基づいて―(仮)」
北田 真紀 先生(滋賀大学)

15:20-16:00 第2報告 「BSCにおけるサステナビリティ情報の利用に関する実験研究(仮)」
北田 皓嗣 先生(法政大学)


(連絡先)
神奈川大学 工学部経営工学科 管理会計研究室
平 井 裕 久     hirai[at]kanagawa-u.ac.jp
小村 亜唯子    komura-a[at]kanagawa-u.ac.jp
([at]を半角の@に変更してください.)

日本管理会計学会2021年度 第2回関西・中部部会 開催記

2021年10月18日 齊藤毅(中京大学)

■■日付・場所
・日付:2021年10月9日(土)
・場所:Zoomミーティングによるオンライン開催(開催校:中京大学)

■■ 日本管理会計学会2021年度第2回関西・中部部会が、2021年10月9日(土)に中京大学(愛知県名古屋市)の主催により開催された(準備委員長:齊藤毅氏(中京大学))。コロナ禍の状況を受け、部会はZoomミーティングによるオンラインで実施された。
 今回の部会は、オンライン開催ということで参加のための地理的制約が無くなったこともあり、関西・中部地域だけでなく、全国から28名の参加があった。いずれの講演・報告でも、発表の後には活発な質疑応答が行われた。

■■ 第一部〔特別講演〕 司会:齊藤毅氏(中京大学)
講演者:森田大延氏(有限会社しら河 代表取締役)
講演テーマ:「コロナ禍を乗り越え、次代につなげ!ひつまぶし」

 本講演は、長年にわたって名古屋市でうなぎ専門店(ひつまぶし店)を複数店舗展開されている「しら河グループ」の代表取締役である森田大延氏をお迎えした。飲食業における日頃の取り組みだけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大前後の業績の変化やアフターコロナに向けた将来展望等について講演頂いた。
 講演の前半では、まず、自身の経歴や社会活動、企業の概要について話された。しら河は、浄心本店、今池店、ジェイアール名古屋高島屋店(お持ち帰り専門店)、栄ガスビル店、名駅店を展開しており、通販ギフトも手掛けている。各店舗の規模や体制等を述べられるとともに、うなぎを食べる習慣の「土用丑の日」がある7~8月の売上高が最も高いと説明された。次に、会計システムについて触れられた。実際の会計数値を表示しながら、①浄心、②今池、③高島屋、④栄、⑤名駅、⑥加工場、⑦本部、⑧ギフトの8部門に分けて実施されている業績管理について説明があった。さらに、顧客管理について述べられた。しら河では、ポイントカードを発行している。カード情報に基づき、顧客の特徴として、男性より女性の割合が若干ながら多く、若年層よりも高齢者の利用率が高いことが示された。最後に、経営理念や研修制度について話された。しら河の経営理念は、「おなかもこころもまんぷく(鰻福)に」である。この理念を浸透させるための研修制度について、実際の研修資料に基づき説明がなされるとともに、生産地研修や社外研修等について話された。
 後半では、新型コロナウイルス感染拡大前後の業績の変化や将来展望について述べられた。まず、各店舗別に、2019年から2021年までの実際の業績を示しながら、その時々の意思決定や職場の状況等を交えつつ、業績の変化について細かく説明された。各店舗では、軒並み売上高が低下しており、最も落ち込んだのは第1回目の緊急事態宣言直後の2020年4~5月である。その後も苦しい時期が続いているが、一方で、持ち帰り専門店である高島屋や通販ギフトの売上高は好調であることから、全体では売上高が回復傾向にあることが示された。次に、業績の低下に伴い閉店を余儀なくされた大森(日本料理)について述べられた。閉店時の経緯や従業員・女将とのやり取りについて話された。最後に、アフターコロナに向けた将来展望について触れられた。具体的には、既存事業を強化しつつも多角化を視野に入れて、事業を拡大していきたいと話された。また、コロナ禍においては政府の助成金をはじめとして周囲に助けられたことから、コロナ後に社会に貢献することで恩返しをしていきたいと所信を表明された。 
 講演の後には、参加者から多くのご質問を頂き、活発な質疑応答が行われた。

■■ 第二部〔研究報告〕 司会:窪田祐一氏(南山大学)
■ 第1報告
報告者:今井範行氏(名古屋国際工科専門職大学教授)
論題:「デザイン思考に対応したITコスト管理に関する一考察-KINTOの事例を中心に-」

 本報告では、デザイン思考に対応したITコスト管理について、トヨタのKINTOの事例に基づき考察された。モノのサービス化の進展により、多くの業界で、製品単品売り切り型からサブスクリプションモデルへの転換が進行している。同モデルでは、サービス提供のためのシステムのUX向上が競争力の鍵を握ることから、デザイン思考にもとづくシステムのモード2開発が興隆している。それにともない、多くの業界で、システム開発体制の変革が進行しつつある。すなわち、①アウトソーシング(外注)から自前(内製)への体制変更、②デジタル専門人材の採用・囲い込み・処遇改善・戦略組織化の進行である。
 報告者によれば、ITコスト管理の変更として、製品単品売り切り型では新車投入時の一時コスト(外注費、変動費)を新車の販売収益から一時回収(早期回収)することが求められるが、サブスクリプションモデルではUX向上のための継続コスト(内製費、固定費)を、サブスクのサービス収益から継続回収(長期回収)することが求められる。また、システム開発拠点の開設費、人材採用費、新会社設立費等の体制移行費用は巨額となるため、通常予算とは別枠の戦略予算化が必須である。さらに、モノのサービス化に連動した(IT コスト)変動費の固定費化、回収長期化によるIT コスト管理のリスク度合いの増大について検討する必要があると報告された。

■ 第2報告
報告者:足立洋氏(県立広島大学准教授)
論題:「中小企業における後継者確保の可能性と管理会計-後継者確保状況と管理会計実態に関する探索的研究-」

 本報告では、中小企業における後継者確保状況と管理会計実態について、広島県呉市におけるアンケート調査に基づき考察された。近年、中小企業における事業承継プロセスの円滑化における管理会計の有用性が指摘されている。具体的には、管理会計システムから生み出される会計情報が社内の共通言語となって、意思疎通の改善に寄与する点などが挙げられている。一方、日本ではそもそも後継者を確保できていない中小企業も多い。廃業予定企業と事業承継の意向があっても後継者が未定の企業を合わせると、全体の7割に及ぶにもかかわらず、これらの企業における管理会計実践の実態は、ほとんど明らかになっていない。報告者は、上記の問題意識のもとで、管理会計の利用実態に程度の違いがあるのか、あるとすればどのような違いがあるのかという検討課題について考察した。
 報告者によれば、アンケート調査結果に基づくと、後継者が確保できている中小企業と後継者を探しているが未定の中小企業は、廃業予定の中小企業に比べて、業績管理会計、資金管理、投資管理、外部者との情報共有について、平均値に有意な違いがみられた。この結果により、後継者を確保するために組織存続に向けて組織全体で計画に基づいたPDCAを回すことを心掛けている可能性が示唆された。また、管理会計実践が部分的に外部者によって担われているという中小企業の実態を踏まえると、上記のプロセスの一部は、事業の運営や承継に関する外部者との相談のプロセスの中で担われている可能性があると報告された。