2026年度第1回リサーチセミナー開催記

 2026年度第1回リサーチセミナーは,滋賀大学を開催準備校(準備委員長:滋賀大学 加藤大智氏)として,2026年6月13日(土)14時00分~16時10分にオンライン形式で開催されました。当日の参加者は約20名でした。開会の挨拶,司会および閉会の挨拶は加藤大智氏(滋賀大学)により行われました。研究報告の第1報告は殷広為⽒ (近畿大学大学院)・早川翔氏(京都産業大学),第2報告は片岡亮太氏(松山大学)でした。いずれの報告についても,討論セッションや質疑セッションにて積極的な質問やコメントがなされ,活発な議論が行われました。

【研究報告1】
報告タイトル:「経営課題に応じた予算目標修正の違い」
報告者: 殷広為氏(近畿大学大学院), 早川翔氏(京都産業大学)

 第1報告では,殷氏より企業のライフサイクルが売上高および利益の予算目標修正に与える影響に関する研究報告が行われました。導入期・成長期の企業では,市場シェア獲得や成長投資が重要であるため,有利差異が生じると売上高目標を大きく引き上げられるが,費用増加を見込むため利益目標の引き上げは相対的に抑えられると考えられる一方で,不利差異が生じた場合には,成長期待を維持するため売上高・利益目標とも下方修正されにくいと考えられます。殷氏らは,こうした予想について日本企業が公表する経営者業績予想のデータを用いて実証的な分析を行いました。分析の結果,企業ライフサイクルによって売上高および利益目標の差異が次期の目標に与える影響が異なることが明らかになりました。この結果は,予算目標の修正行動が企業の直面する経営課題に依存するという重要な研究課題を示唆すると考えられます。
 
【研究報告2】
・報告タイトル:「目標の期中調整に関する研究:期中調整は業績にどのような効果を与えるか」
・報告者:片岡亮太氏(松山大学)

 第2報告では,片岡氏より企業で行われる目標の期中調整が与える影響に関する研究報告が行われました。目標の期中調整に関する先行研究では,期中調整が努力を高めるのか低下させるのかについて理論的・実証的な対立が生じていました。片岡氏はその原因として,調整が行われるという事前の告知の効果と,実際に目標を調整するという実施の効果が区別されていなかった点を指摘し,それらを区別するために実験を行いました。実験の結果,期中調整の告知の効果は明確な効果は確認されませんでした。一方で,期中調整の実施には正の効果があることが確認されました。また,期中調整の実施は手続き的公正・分配的公正の認知を高め,それを通じて業績に間接的な正の影響を与えていたことが明らかになりました。片岡氏の報告は,先行研究で混同されていた告知と実施の効果を初めて区別して検証した点で学術的に貢献し,期中調整の実務に示唆をもたらすと考えられます。

文責:加藤大智 (滋賀大学)