2010年度 第1回関西・中部部会(兼第2回フォーラム)開催記

■■日 時
2010年7月17日(土)
■■場 所
大阪学院大学2号館

■■実行委員長の大阪学院大学宮本寛爾教授の挨拶につづいて,公開講演(日本管理会計学会・大阪学院大学共催),パナソニック株式会社,常務取締役 上野山 実氏が演題「パナソニックの経営理念と経営管理制度」で講演された。

2010kansai1_1.jpg■■パナソニックの経営概念、経営理念の説明から,パナソニックの経営管理制度、資金管理制度,業績評価制度,グローバル経営管理,経理社員制度まで詳しく語られた。パナソニックの経営管理制度は,事業部による自主責任経営を基本理念に利益責任と資金責任を併せもつことが最大の特徴である。事業計画制度,月次決算制度、内部資本金制度は,この経営管理制度の骨子であり,独特のものである。事業計画制度は,社長の経営基本要綱とその目標心達を事業場長が契約したものである。経営基本要綱にはCO2削減量がふくまれる。また、内部資本金制度は,自主責任経営を裏付ける必要にして適切な資金を委ねるもので,事業場長は自己の責任において自由奔放にして独創的な経営を行うとされる。目的は,財務責任を実態づける,内部留保の明確化を通じ,経営のヨロコビを知る,借入金・内部留保など資金の源泉をハッキリさせる,ことである。業績評価制度は,CCM(パナソニック版EVA),成長性,環境を合計100点とし,報酬制度と連動させる仕組みとなっている。CCMは,資本コスト重視の経営であり,原価の計算の中にも資本コストを取り入れることも肝要とつけくわえられた。グローバル経営管理については,海外事業投資には本社から100%出資を基本としているなど詳細に説明された。  以上,貴重なお話にフロアからの質問が絶えず,退場後もいくつかの意見交換がもたれた。

■■つづいて,統一論題「管理と会計」が浜田和樹氏(関西学院大学)の司会により始まり,以下の3氏が報告された。まず,北田幹人氏(八木通商株式会社、常務取締役)より「専門商社の経営管理」という論題で報告がなされた。専門商社としての特性が説明された後,予算管理,与信管理また在庫管理が重点的に説明された。業界特有の変化が著しく,月次決算を予算管理の柱として毎月のローリング,つまり機動的に予算を修正すること,与信管理も週1回のチェツクがなされること,在庫管理は不良在庫を減らすために納品管理を徹底することなどが強調された。また,社内資本金制度の導入はしていないが,必要資金を社内貸借勘定で把握し,また金利を付加する形で損益計算表が作成されている。

2010kansai1_2.jpg■■つぎに,横山俊宏氏(株式会社竹中工務店、常勤監査役)より「建設業におけるプロジェクトをベースとした経営管理」という論題で報告がなされた。竹中工務店の紹介,建設業における「プロジェクト」,プロジェクトの採算管理,経営理念について順次説明された。上場していない数少ない大手企業で,建設業では受注高がきわめて大きな要素となり,社員一人当たり年1億円の受注高を目指している。プロジェクトの決定は,進行基準決算がとられており,工事価格と利益の推定が鍵となる。企業の継続・安定・成長は次の100年というごとくレンジが長いのが建設業の特徴などなどが力説された。

■■最後に、大下丈平氏(九州大学)より「不況の管理会計学:「管理と会計」に寄せて」のテーマで報告がなされた。不況のおけるリスクをさけるための施策は、内部統制をブレーキに、企業価値創造のベースに向けていかにアクセルできるか、という大きな視点から管理会計のメッセージが発信された。経済、社会、政治のバランスのとれた市場社会の形成が肝要というスタンスから、リスクマネジメントと企業価値創造のマネジメントを支援するガバナンス・コントロールの可能性が提案された。具体的にどういうガバナンスが必要かは今後の課題となるとされた。

■■それぞれの報告の後、フロアにおいて活発な質疑応答がなされた。40名を超す参加者の熱のこもった議論が行われ、有意義な関西・中部部会であった。

関西・中部部会 実行委員 古田隆紀氏(大阪学院大学)

2010年度 第1回九州部会 開催記

■■日時 2010年4月24日(土)13:30?
■■場 所 西南学院大学

2010kyusyu1_1.png■■日本管理会計学会2010年度第1回九州部会が,2010年4月24日(土)に西南学院大学(福岡市早良区西新)にて開催された(準備委員長:西南学院大学准教授・高野学氏)。今回の九州部会には,関西中部部会からもご報告・ご参加をいただくなど,30名近くの研究者や実務家の参加者があった。報告会終了後には定例の部会総会も開催されたが,九州部会事務局長の大下丈平氏(九州大学教授)より,今大会が記念すべき通算30回目となった九州部会の第1回からの開催記録リストが配付され,今後の九州部会のますますの発展への協力が呼びかけられた。

■■第2報告では,和田伸介氏(大阪商業大学)より,「IFRSと管理会計の関連性について―ドイツ管理会計士の役割を中心に―」と題する報告があり,2007年からIFRSの強制適用が始まっているドイツの状況について,公正価値評価やマネジメントアプローチの導入が財務会計だけではなく管理会計にも与える影響をめぐるドイツでのケーススタディや実態調査の結果が示され,財務会計上の製作原価概念の再定義や原価計算上における減価償却費や利子の非算入などドイツの伝統的な原価概念への影響,ドイツにおけるコントローラーの機能として財務報告への情報提供者としての役割の追加,そのような影響下での限界計画原価計算の再評価の動き,コントローラー制度の英独比較などが紹介された。

2010kyusyu1_2.png■■第3報告では,北村浩一氏(鹿児島大学)より,「マッキンゼー『予算統制』のbudgetary controlと企業予算システムの展開・発展」と題する報告があり,予算管理研究の古典である1922年のJ.O.MckinseyのBudgetary Controlの精緻な解読の結果,マッキンゼーの意図していた当時の予算管理は,予算と実績の差異分析などの予算統制過程を前提としておらず,当時の米国連邦政府予算制度を参考にして,財務管理を主眼とした予算の編成過程のコントロールを体系化しようとするものであったことを明らかにしたうえで,マッキンゼー学説の再評価を出発点とした企業予算システムの新たな発展段階モデルの構想が提示された。

■■第4報告では,浦田隆広氏(久留米大学)より,「品質原価計算の構造と機能」と題する報告があり,米国における1970年代からの品質原価計算の研究や実務の展開について,計算技術的側面だけではなく社会経済的背景を含めた検討の必要性が強調され,Xerox社,Texas Instrument社,Westinghouse Electric社,H.J.Heinz社,Union Pacific鉄道などの詳細な事例分析にもとづいて,市場構造の変化による企業業績の変化やそれに対して品質原価計算という経営技術に期待された機能などが明らかにされ,品質原価計算は歴史的産物でありもはやその歴史的使命を終えつつあることが主張された。

■■各報告に対して活発な質疑応答がなされたにも関わらず,報告者・司会者のご協力のおかげで,4つの報告をほぼ時間通りに進行することができ,また報告会終了後には開催校のご厚意で懇親会も開催され,実りある交流の場となった。

丸田起大(九州大学 )

2010年度 第1回フォーラム開催記

2010forum1_1.jpg■■ 日本管理会計学会2010年度第1回フォーラムは,4月17日(土)午後に横浜国立大学において開催された。
 本フォーラム実行委員長の溝口周二氏による開会挨拶に続き,同氏の司会により,古田清人氏(キヤノン株式会社 環境本部 環境企画センター),竹原正篤氏(マイクロソフト株式会社 環境・グリーンIT担当部長),河野正男氏(横浜国立大学名誉教授)の3名が報告をされた。次いで行われたパネルディスカッションでは,壇上の司会者及び報告者の4名とフロアーの参加者の間で活発な議論が行われた。その後,場所を移して懇親会が行われ散会となった。

統一テーマ : 「環境マネジメントと管理会計」

■■ 第1報告:古田清人氏

「キヤノンの環境経営について(管理会計手法の活用)」

2010forum1_2.jpg 古田氏は,最初に環境がもたらす企業活動への制約とインセンティブについて一般的な説明を行った上で,キヤノンの環境ビジョンについて述べた。そこで示されている具体的な考え方は,ライフサイクル全体の環境負荷を視野に入れて,豊かさ(製品の高機能化)と地球環境(環境負荷の最小化)を同時に実現することである。
 次に,製品における環境保証の3本柱が示された。それは「省エネルギー」「有害物質廃除」「省資源」からなり,製品ライフサイクルを通じて環境負荷を最小化し,法規制の先取りで製品競争力につなげるという考え方である。その具体的な取り組みとして,製品開発段階における二酸化炭素情報の把握と低環境負荷材料の採用が挙げられた。
前者においては,3次元CADでコストテーブルを使用したライフサイクルコストの集計が行われており,原価情報と二酸化炭素情報が連動していることが強調されていた。そこでは,エネルギー原単位の単価への換算における精度が低いことや二酸化炭素削減の要因の明確化が今後の課題として示された。  続いて,事業所(工場)活動における環境保証の3本柱が示された。それは「地球温暖化防止」「有害物質廃除」「省資源活動」からなり,ISO14001による環境管理と,ムダの排除という考え方が根幹にある。その具体的な取り組みとして,マテリアルフローコスト会計の分析結果からロスの改善への展開が挙げられた。ここでは,硝子レンズの研削工程において作業屑をマテリアルロスとして顕在化し,作業屑そのものを削減する改善案が検討されている。なお,マテリアルフローコスト会計はキヤノングループの主要生産拠点で導入され,億円単位の経済効果を挙げている。
 最後に,キヤノンが目指す環境経営が示された。それを要約すると「経営への貢献と,地球環境保護の両立」であり,換言すると「環境活動を進めることによって,収益を上げ成長する会社,会社も個人も尊敬される会社」を目指すということである。

■■ 第2報告 :竹原正篤氏

「グリーンITと環境管理会計」

2010forum1_3.jpg 竹原氏は,最初に世界及び日本の二酸化炭素排出量の統計情報を示した上で,情報化社会の進展がIT機器による消費電力の増大をもたらすことを特に問題視している。その一方で,IT技術の進展が電気機器の省エネをもたらすことを指摘し,ITによって社会全体の省エネを支えるという考え方を提示している。 論題である「グリーンIT」とは,増大するIT機器の省エネ(Green of IT)を推進するとともに,ITを活用して社会全体の省エネを推進(Green by IT)し,低炭素社会の実現を加速させようとする取り組みである。グリーンITの重要な課題の1つが効果測定であり,会計的手法を活用してその効果を「測定」「評価」するモデル開発へのニーズは高いことが強調された。
 Green of ITの事例として,クラウドコンピューティングが挙げられた。そこでは,大規模データセンターにリソースを集約することでエネルギー消費が最適化することにより,クラウド導入企業のエネルギー消費量は一般的に低下することが予想されると考えられるが,マクロレベルでエネルギー消費量が減少したかどうかを検証することは非常に難しいことが指摘された。また,Green by ITの事例として,ITを活用して供給側と需要側の電力のバランスを自動的に制御する次世代送電網であるスマートグリッドが挙げられた。これは,太陽光や風力等の再生可能エネルギーの導入拡大と電力品質の安定維持の両立に欠かせない技術といわれている。
 次に,グリーンITの測定・評価の問題が挙げられた。ITの環境負荷評価では,国際規格化された手法であるライフサイクルアセスメント(LCA)が活用されているが,管理会計の手法は援用されていないことが指摘された。次に,具体的な評価手法として「機能単位」と「システム境界」の設定が挙げられた。前者は評価する製品の主要な性能や機能を定量化することであり,後者は調査範囲を設定することである。これにより,従来のシステムと新しいシステムの比較を可能にしている。また,ITの環境効率は,「ITが提供する価値」を「ITの機能単位当たりの環境負荷」で除した値で定義される。  最後に,グリーンITへの貢献を評価する枠組みについて検討が行われ,生産から使用,更にはリサイクルに至るLCA全体で環境貢献を評価すべきであると結論づけている。

■■ 第3報告: 河野正男氏

「環境マネジメントの進展と管理会計」

 河野氏は,最初に環境マネジメントの内部化について言及している。その一つは「質の内部化」であり,環境問題への対応に当たっての経営環境の革新,換言すると環境保全活動を評価の対象とすることである。もう一つは「量の内部化」であり,環境マネジメントの結果を貨幣単位及び物量単位で把握することである。そして,質の内部化の進展が量の内部化を促進するとしている。
 次に,環境マネジメントの内容の変化について,リコー,グリーンマネジメントプログラム・ガイドライン,國部委員会の各ケースを挙げながら説明している。そして,環境マネジメントシステムの役割が廃棄物,エネルギー使用量,水使用量等の削減からより広範かつ経営の根幹に関わる内容に変化していることを指摘している。
環境マネジメントの意図が環境負荷物質の削減にあることから,その排出量及び削減量等の物量情報によって評価されることが不可欠である。また,環境マネジメントの費用対効果の把握の視点からは,環境関連のコストや収益等の貨幣情報も必要である。そして,環境マネジメントでは,ISO14000シリーズ関係,環境会計,環境報告書,カーボンオフセット,カーボンフットプリントなどの手法が用いられる。
 環境会計はミクロ環境会計とマクロ環境会計に大別され,前者はさらに外部環境会計と環境管理会計に分類される。環境管理会計の手法を対象別に分類すると,企業サイトを対象とした手法と製品を対象とした手法に分類される。前者の例として,マテリアルフローコスト会計,環境配慮型投資決定法,環境予算マトリックス,環境配慮型業績評価が挙げられる。また後者の例として,ライフサイクルコスティング,環境配慮型原価企画,環境品質原価計算が挙げられる。 環境マネジメントは,環境対応,環境保全,環境経営という3段階で進展してきた。その中でも最上位のレベルである環境経営の段階は,製品のエコ化から産業のエコ化への段階であり,環境管理会計の本格的取組がされていると指摘している。
 最後に,リトルトンの会計進化説を引用し,その本質はイタリア式資本利益会計に秘められた会計職能(測定,保全,伝達)の再発見であるとし,管理職能の発展なくして伝達機能の発展はないと論じている。そして,環境管理会計の発展が外部環境会計の発展を促進すると結論づけている。

2010forum1_4.jpg■■ パネルディスカッション
 最初に挙げられた議論は,情報量の増大とそれに伴うコスト負担の問題である。古田氏は外部報告書で想定される読者に着目している。すなわち,有価証券報告書は株主や投資家,環境報告書は環境関連の専門家である。また,溝口氏は人的コストと社会コストに着目し,その効果はエコファンド及びCSRファンドへの投資や市場の評価であると述べている。
次の議論は,本フォーラムのテーマである環境会計と,河野氏の研究テーマである生態会計との関連性に関するものである。河野氏は,生態会計は水・森林・エネルギー資源,CSR,環境会計をすべて含むものであり,そこでは企業以外もすべてシステムであると述べている。
 最後に,外部から環境情報を利用する立場から,比較可能性と正確性に関する議論が行われた。有価証券報告書に環境報告書が含まれると利便性が増すが,その方向性についてどう考えるかという質問に対して,3人の報告者から次のような見解が示された。河野氏は,企業は比較可能性について考えていないとしている。それに対して竹原氏は,比較可能な資料が存在しないために困ったことがあると述べている。また古田氏は,環境情報の利用者が専門家から一般へと広がってきていると指摘している。  ここで所定の時刻になったため,この議論をもってパネルディスカッションを終了することとなった。

2010年4月30日|山下功氏 (新潟国際情報大学)

2009年度第2回リサーチセミナー開催報告記

■■ 2010年3月13日午後2時より,筑波大学東京キャンパスにて,日本管理会計学会2009年度第2回リサーチセミナーが開催された。今回のフォーラムは,小倉昇氏(筑波大学)の司会のもと,若手研究者の特徴ある2つの実証研究が紹介された。当日の参加者は各大学の研究者及び企業の経理および管理会計担当者等18名で,活発に質問・意見交換等が行われ非常に内容のあるリサーチセミナーとなった。

■■ 最初の報告は,吉井貴充氏(筑波大学大学院)より「研究開発投資の会計処理に関する一考察」というテーマで報告がなされた。わが国の研究開発費の会計処理に関しては2000年度以降,FASB基準同様に支出があった決算期に費用計上されている。吉井氏は,わが国でもIFRSへの適用が検討されるなか,IFRS基準では開発費においては一部資産化が盛り込まれていることに着目する。もちろん,研究開発費に対する資産計上に関しては,研究開発投資(R&D)と将来利益との関係が不明瞭な上,不確実性が存在する。吉井氏はここで,わが国において2000年以降,R&Dについて,注記計上及び販管費計上する企業が増加し,繰延資産計上する企業が減少している点に着目する。そして,わが国の会計基準変更後のR&Dを対象に業種毎の適切な会計処理と業種間の相違について研究を展開した。
発表においては,先行研究にもとづき(1) R&Dと将来利益との関連性をR&Dと将来利益のタイムラグを検出できるかどうかで検証する研究と,(2) R&Dが将来利益の不確実性(5年間の経常利益の標準偏差)に与える影響を設備投資の投資リスクと比較することにより検証するという2つの視点から会計処理を実証的に評価している。
実証分析の結果,サンプル産業の全業種で3年以上のラグ期間が存在することが確認され,R&Dと報告利益の間の関連性が示唆された。また,サンプル企業のうち化学,医薬品,精密機械の各産業については投資リスクへの正の影響が確認されたが電気機械・自動車については確認ができなかった。結論として吉井氏は,化学,医薬品,機械,精密機械などの産業では開発費の費用処理が支持されるが,電気機械産業と自動車産業は開発費の資産化が示唆されると考察した。
報告の後,質疑応答では,吉井氏の今後の課題としてはモデルの精緻化やサンプルデータの拡張,最近のM&A事例の増加でサンプル企業のグループの課題などいくつかの意見が出された。また,提示したモデルの独立変数のあてはまり具合の検討など出席者から非常に有益な意見が出され活発な議論が行われた。

■■ 次に,鈴木竜児氏(公認会計士・早稲田大学大学院)より「多角化経営におけるシナジー効果の評価と分析」のテーマで報告が行われた。鈴木氏は (1) シナジー効果の評価 (2) シナジー効果に基づく企業価値の実証分析について報告を行った。そのなかで,研究方法として,(1)については,セグメント報告書のセグメント間取引の割合に着目して多角化企業を関連多角化・非関連多角化に分類する方法を試行し,また,(2)については,「超過価値アプローチ」(株価リターンの業界平均からの超過)によって企業価値を評価する方法を採用した。
仮説の設定にあたり鈴木氏は,シナジー効果の評価については,多角化企業は,業種を意識した事業展開よりも,事業間のビジネス上のつながりや事業相互間のシナジー効果を期待して事業を展開していると考えられ(事業実態面),また,事業間のつながりやシナジー効果が経済活動に現れるものと想定すると,「事業の種類別セグメント情報」に財務数値として反映される(財務数値面)と想定している。次に,シナジー効果に基づく企業価値の実証分析について鈴木氏は,非関連多角化企業や専業企業に比べて,セグメント間取引の比率が高い関連多角化企業は,高い水準の超過価値で評価されているとの実証結果を導いた。
鈴木氏の報告後,星野優太氏(名古屋市立大学)がコメンテーターとして詳細なコメントおよび提言を述べた後に,質疑応答及び議論が行われた。なかでも多く議論されたのが,「シナジー効果」についてであった。この,シナジーの定義,分析モデルについて各参加者の様々な考え方や研究方法の提言については多くの議論があった。そして,議論途中で質疑時間終了となったが,司会者の判断で任意の議論に切り替えたが,多くの参加者が最後まで残り,様々な意見が交わされた後に今回のリサーチセミナーは終了となった。

加藤惠吉氏 (弘前大学)