2013年度 第1回九州部会開催記

■■日本管理会計学会2013年度第1回(第39回)九州部会が,2013年4月20日(土)に九州産業大学(福岡市)にて開催された(準備委員長:浅川哲郎氏)。今回の九州部会では,関東・関西・北陸など他部会からも複数のご参加をいただき,20名近くの研究者の参加があり活発な研究報告と質疑応答が行われた。

2013kyusyu1_1.JPG■■第1報告では,足立俊輔氏(下関市立大学講師)より,「米国病院原価計算の発展と価値重視の病院経営」と題する報告があり,米国の病院経営および病院原価計算に関する文献調査に基づき,米国病院原価計算の発展を計算原理の精緻化の側面と計算合理性の側面から整理することで,医療の質とコストのバランスを考慮する価値重視の病院経営を支援する時間主導型の病院原価計算の有用性が明らかにされた。報告では,価値重視の病院経営においては時間主導型の病院原価計算を用いて医療提供者と病院経営者に共通の情報基盤を構築する必要性があること,また,医療システムの将来像として「価値重視の償還システム(value-based reimbursement)」を展望する必要があることが指摘された。

2013kyusyu1_2.JPG■■第2報告では,飛田努氏(福岡大学准教授)より,「中小企業のマネジメントコントロールシステム関する研究: 熊本・福岡の事例を中心として」と題する報告があり,中小企業におけるマネジメントコントロールシステム(以下MCS)の利用状況に関するアンケート調査と,佐賀県の金型メーカーS株式会社の事例研究が報告された。アンケート調査は,Simons(1995,2000)のMCSに基づいた共分散構造分析が行われ,大人数企業(30名以上)では会計情報利用に関して有意な関係が見られるものの少人数企業では有意な関係が確認できなかったこと,経営理念の浸透は少人数企業では係数が高いことが示された。またS社の事例では,業績評価システムの特徴のほか,社長が高齢化・引退する中小企業において事業継承をどう乗り越えるかが課題となっていることが指摘された。

2013kyusyu1_3.JPG■■第3報告では,吉田康久氏(九州産業大学教授)より,「英国の行政・公会計改革の取り組み ‐留学で感じ得たこと‐」と題する報告があり,イギリスにおける行政・公会計制度改革の取り組みが紹介された。報告では,サッチャー政権からの行政改革の一端として,競争入札制度やPFIからPPPの流れや,包括的業績評価制度から包括的地域評価制度の変遷など,英国の行政改革の経歴に沿って議論が進められた。また,公会計制度改革の取組主体として英国勅許公共財務会計協会(CIPFA)が果たす役割や,資源会計予算の特徴,それに勅許公共財務会計士の認定制度についても言及され,英国においても発生主義会計の導入にあたって解決すべき課題があるため結論には達していないことが説明された。