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日本管理会計学会2023年度第2回関西・中部部会 報告者募集のお知らせ

日本管理会計学会会員各位

日本管理会計学会2023年度第2回関西・中部部会を、下記のとおり開催することになりました。
同部会における自由論題報告をご希望の方は、下記の応募要領にもとづいて、ご応募ください。
同部会はハイブリッド形式(対面+オンライン)で実施しますが、報告者は対面でのご報告をお願いします。
報告希望多数の場合は、ご希望に添えない場合もあることをご了解のうえ、お申込みください。

日時:2023年11月18日(土) 13時30分開始
場所:甲南大学岡本キャンパス(兵庫県神戸市東灘区)
自由論題の報告者:2名を募集(報告時間30分+質疑応答10分)

報告応募要領
1.締切日:2023年10月2日(月)
2.応募方法:下記の応募先にメールでご応募ください。その際、件名を「関西・中部部会報告希望」とし、本文中に下記の(1)から(3)を明記してください。
 (1)氏名・所属機関・職名
 (2)連絡先メールアドレス
 (3)報告タイトルと報告要旨(200字程度)

3.応募先:
     甲南大学 杉山善浩
     sugiyama(at)konan-u.ac.jp [(at)を半角@に変更してください。]

2023年度 第2回フォーラム 開催記

文責:愛知工業大学  柊 紫乃

 2023年度第2回フォーラムは,2023年7月29日(土)14時から16時45分まで,愛知学院大学 名城公園キャンパス(開催校委員長 飯島 康道氏)にて対面形式で開催されました。記録的猛暑が続く中での開催でしたが,当日は日本全国から35名の方々が参加されました。名古屋城を正面に見るアガルスタワー10階において,本学会学会長の﨑 章浩氏(明治大学)のご挨拶の後,フォーラムが開始されました。


 

 

 

 

 本フォーラムでは,基調講演に日産自動車執行役員,横浜マリノス代表取締役,Jリーグ理事などを歴任されました嘉悦 朗(かえつ あきら)氏をお迎えし,多様性を活かした企業変革についてお話をいただきました。また,第1報告として名古屋大学の坂口 順也氏,第2報告として名古屋外国語大学の原 慎之介氏からご報告いただきました。以下,基調講演と第1報告,第2報告の概要となります。

基調講演 嘉悦 朗氏(日産自動車㈱元執行役員・横浜マリノス㈱元代表取締役・元Jリーグ理事)
講演論題 「多様性を活かした企業変革:日産と横浜マリノスの再生」
司会:渡辺 岳夫氏(中央大学)

 基調講演では,日産自動車株式会社(以下,日産)における嘉悦氏の豊富なご経験をもとに,特に,変革推進のメイン・エンジンとなったCross Functional Team(以下,CFT)が紹介された。日産のV字回復に寄与したしくみの総称を”Nissan Way“と呼ぶが,それは土台となったCFTのほかに,CFTのミニ版ともいえるV-up Program(V-up),さらにこれらの活動を通して蓄積された新しいマネジメントの標準=Nissan Management Wayの3層構造を成していた。中でもCFT(日本語に訳せば「部門横断チーム」)は,日産リバイバルプラン,さらにその後のV字回復のカギであったと嘉悦氏はいわれる。
 CFTは,担当課題に関連するすべての部門から中堅層のエース級の人材を集結する。各チームは,経営トップに直結し,定期的なミーティングを通じて動機付けやアドバイスを得る一方,日常的な活動はファシリテーターとして機能するパイロットと,メンターの役割を担うリーダー(役員)によって,活動が支障なく,円滑に進むよう配慮された構造になっている。CFTと従来型チームの違いは,課題の主たる責任部門だけでなく,関連するすべての部門から派遣される「異質で多様なメンバー構成」にある。そのため,議論に時間はかかる(熟議)が,視点や発想が拡がる(多様性)という特徴をもっている。昨今,Diversity(多様性)& Inclusion(包摂)を多くの企業が掲げるようになったが,日産は,それを単なるスローガンではなく,ビジネスプロセスに落とし込んだという点で他社とは一線を画すと嘉悦氏は強調される。その運営の肝は「異質な意見も受け入れる」「妥協しない」こと。この2つを徹底することで,ブレークスルーや全体最適解にたどり着く確率が高くなるという。
 しかし,このようなCFTの仕組みだけではチームが迷走し,空中分解するおそれがある上,萎縮によって「期待値未満」の提案や,逆に忖度による「実現不可能」な提案が出てくるリスクもあるため,経営トップの関与の仕方が活動の成否に大きな影響を与える。例えば日産のCFTでは,発足直後に9人のパイロットが集められ,トップから,競争力の源(財産)とそうでないものを識別することや,社員の中に眠っている問題意識やアイデアを発掘すること,さらにしがらみを乗り越え,正しい優先順位をつけることが検討のポイントであることが示された。さらにCFTの提案に関するすべての責任はトップにあることが明言され,最後に「日産の未来を創るのは君たちだ!」と強烈な動機付けを受けたことで,メンバーの中に眠っていた潜在能力が溢れるように表に出てきたという。
 嘉悦氏はさらに,このCFTを横浜マリノスの経営に応用された。親会社である日産の支援なしでも会社として自立できることを目指した改革だったが,4年間の活動で,すべての分野における史上最高の成果をあげ,大成功を収めた。この経験を通して,ものづくり企業とスポーツチームの違いはあっても,CFTは有効であること,すなわち,CFTは変革に極めて有効かつ汎用性の高いツールであるという確信を深めた。最後に,まとめとして,「どんな企業にも,志が高く,変革のアイデアを持った社員はおり,それらの社員を広く発掘し,活用するのがリーダーのミッションである」という示唆により本基調講演は締めくくられた。

第1報告 坂口 順也氏(名古屋大学)
報告論題 「組織間での結果・行動・社会コントロール:加工組立型企業の実態調査」
司会:窪田 祐一氏(南山大学)

 第1報告では,名古屋大学の坂口氏により,組織間マネジメント・コントロールに関する実態調査結果が報告された。組織間マネジメント・コントロール研究では,組織間における管理の仕組みとして,取引相手の選択,取引相手との契約,取引相手との協働などが取り上げられてきた。一方で,従来のマネジメント・コントロール研究では,管理する対象や方法に応じた概念が利用されてきた。そこで,坂口氏は,従来のマネジメント・コントロールの概念(結果コントロール,行動コントロール,社会コントロール)を利用しながら,日本企業の実態を把握することを目的とし,質問票を基礎とした調査結果が報告された。
質問票調査は,加工組立型企業(機械,電気機器,輸送用機器,精密機器)383社を対象に,2022年2月から2023年3月にかけて実施された。各コントロールは3つの質問項目があり,回答方法は5点リッカート・スケールであった。回答を整理した結果,①結果コントロールと社会コントロールについては予想通り高かったが,行動コントロールも高かった。次に,②各コントロールにおける内訳項目について,結果コントロールでは,目標の設定と結果の評価が高く,行動コントロールでは,手続きの設定と手続きの修正が高く,社会コントロールでは,変化の共有が最も高い結果となった。
さらに,業界による回答の違いについても分析された。分析の結果,①結果コントロールは,電気機器において活発に行われており,最も低い機械と有意に差があった。②行動コントロールでは,輸送用機器と電気機器で活発に行われており,電気機器と機械の間に有意に差があった。③社会コントロールでは,機械,輸送用機器,電気機器において活発に行われていた。これらについては,Anderson et al.(2015)による解釈(戦略リスクが高いと行動コントロールが盛んに実施され,業務リスクが高いと結果コントロールが盛んに実施される)を適用して検討され,業種により重点を置くコントロールが異なることが説明された。
最後に,今後の課題として,3つのコントロールを利用したさらなる統計的実証分析とともに,重点の差に関する原因解明のためのケース分析が提示された。

第2報告:原 慎之介氏(名古屋外国語大学)
報告論題 「コロナ禍における航空業界の現状と課題-レベニューマネジメントの視点から」
司会:窪田祐一氏(南山大学)

 第2報告では,名古屋外国語大学の原氏より,コロナ禍により甚大な被害を受けた航空業界のクライシスとリスクマネジメントについて,全日本空輸株式会社(以下,ANA)と日本航空株式会社(以下,JAL)という日本の大手航空2社に注目した考察が報告された。前者は事業部制組織,後者は職能別組織という違いがあり,また,JALについては経営危機をきっかけとしたアメーバ経営(部門別採算制度)が導入されている。
 レベニューマネジメント(以下,RM)は,イールドマネジメントに比べて包括的な定義とも考えられるが,先行研究によって,区別しているもの,ほぼ同義に扱っているものもある。航空業界はRMが適用される典型的な業界である。RMの先行文献においては,伝統的なRMプロセスは,需要予測→収益の最適化→予約成立となるが,その中の収益最大化のアプローチには,価格ベースとしての「ダイナミックプライシング」や,数量ベースとしての「Littlewood’s Law」や「EMSRモデル」などがある。また,リスクと不確実性については,航空業界のリスクマネジメントに特化した先行研究のほか,レジリエンス(自然災害やテロなどの外乱への対応能力)についての研究がある。ただし,コロナ禍の場合は,長期にわたる不透明性(いつ収束するか不明)という点があり,従来のレジリエンス研究とは異なる特徴をもっている。
 日本の航空業界の取組みとしては,コロナ禍以前の段階で,GDS(Global Distribution System)からNDC(New Distribution Capability)へとシステムが変更され,ダイナミックプライシングが可能になったという前提がある。一方で,ANAとJALのリスクマネジメントについては,従前から各社の規程はあったものの,感染症リスクについては対応しきれなかった点もあった。
 航空業界におけるRMのKPIとして,以前から次の式が利用されている。UR(座席キロ当たり収入単価)=収入÷座席キロ=イールド(収入÷旅客キロ)×座席利用率(旅客キロ÷座席キロ)。RMに対するコロナ禍の影響を見るために,ANAとJALについて数値比較を行った。収益については両社の違いはあまり見られなかったが,ユニットレベニュー比較では,ANAの方が,国内旅客UR・イールドが大幅に上回っており,収入(需要)の減少に対する供給量の調整がされたことがわかった。一方で,需要回復・増加に対しては,JALの方がうまく調整できたと考えられる。
 本報告では,イールドを中心としてRM分析を試みたが,対象としたANA,JALの2社について,結果数値の違いをもたらした要因についても検討が必要である。さらに,コスト・利益への影響や,旅客以外の貨物事業,機材の小型化・削減などの意思決定プロセスについての検討などが今後の課題となる。

 最後に,開催校の飯島 康道氏からのご挨拶と夕映えの名古屋城の景色で,本フォーラムは終了しました。
 フォーラム終了後は,愛知学院大学キャンパス内のくすのきテラス「猿カフェ」に場を移して懇親会が開催され,29名の方が参加されました。本学会学会長 﨑 章浩氏(明治大学)のご挨拶の後,前学会長 伊藤 和憲氏(専修大学)による乾杯のご発声で始まり,会員各位の懇親とファーラムでの議論が続きました。懇親会の最後には,夏の年次全国大会主催校である東北工業大学の川島 和浩氏より仙台でお待ちしていますとのメッセージがあり,また,横浜国立大学の中村 博之氏による一本締めで,真夏の熱い研究議論は終了しました。

日本管理会計学会 2023年度 第2回フォーラム 開催のお知らせ

日本管理会計学会会員 各位

謹啓 時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
 さて、日本管理会計学会2023年度第2回フォーラムを、7月29日(土)に愛知学院大学名城公園キャンパスを会場に下記の要領にて開催致します。ご出席を賜りますようお願い申し上げます。当日は、懇親会も準備してお待ちしておりますので、ご出席を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、ご出席予定の先生におかれましては、準備の都合上、お手数をおかけいたしますが、下記の申込方法で事前にメールにて7月20日(木)までに、お申し込みください。

申込方法

  1. 連絡先:飯島康道(愛知学院大学経営学部)
  2. メールアドレス:iijima-y[at]dpc.agu.ac.jp  ([at]→半角の@に変更してください)
  3. メールの件名を「第2回フォーラム参加希望」として、①お名前、②ご所属、③懇親会の参加の有無、④ご連絡先のメールアドレスをメール本文にご記入くださいますようお願い申し上げます。

謹白

開催日:2023年7月29日(土) 14:00~16:30
会場:愛知学院大学名城公園キャンパス アガルスタワー10階 アガルスホール
〒462-8739愛知県名古屋市北区名城3-1-1(地下鉄名城線 名城公園駅出口2 徒歩2分)
交通アクセス | 愛知学院大学 (https//agu.ac.jp/access/)
名城公園キャンパス  (https//agu.ac.jp/pdf/guide/campus/)
名城公園キャンパス アガルスタワー(https//agu.ac.jp/pdf/guide/campus/m_ agalstower.pdf)

14:00~14:05  学会長挨拶
基調講演 14:05~14:55  
  司会:中央大学 渡辺岳夫先生
  基調講演「多様性を活かした企業変革:日産と横浜マリノスの再生」
  講演者:嘉悦 朗(かえつ あきら)氏(日産自動車㈱元執行役員・
  横浜マリノス㈱元代表取締役・元Jリーグ理事)

第1報告 15:05~15:45 (報告:30分 質疑:10分)
  司会:南山大学 窪田祐一先生
  報告テーマ:「組織間での結果・行動・社会コントロール:加工組立型
        企業の実態調査」
  報告者:名古屋大学 坂口順也先生

第2報告 15:50~16:30 (報告:30分 質疑:10分)
  司会:南山大学 窪田祐一先生
  報告テーマ:「コロナ禍における航空業界の現状と課題-レベニュー
        マネジメントの視点から」
  報告者:名古屋外国語大学 原 慎之介先生

懇親会 16:50~18:20       くすのきテラス2階  猿カフェ

参加費:2千円 懇親会費:3千円(釣銭がでないようにお願いします

2023年度第2回フォーラム開催校委員長 飯島康道

日本管理会計学会2023年度第1回関西・中部部会開催記

2023年6月2日 景山愛子(広島国際大学)

 日本管理会計学会2023年度第1回関西・中部部会が、2023年5月27日(土)に広島国際大学(呉キャンパス)を主催校として開催された。今回の部会は、対面とWeb(Zoom)を活用したハイブリッド開催となった。
 部会の開催にあたり、まず、部会準備委員長から部会当日のプログラムや進行方法に関する説明があり、続いて、徳崎進関西・中部部会長から開会のご挨拶をいただいた。
 その後、プログラムにしたがって、特別講演1件および自由論題報告2件の発表がなされ、活発な質疑応答が行われた。
 参加者は42名(対面16名、オンライン27名)であった。以下、講演、各報告の概要を簡単に紹介する。

第一部〔特別講演〕(対面)
   講演者:古川善也氏(広島赤十字・原爆病院院長)
   講演テーマ:「病院改革と経営改善」

 特別講演では、主催校が医療系学部学科を有する大学であるつながりから広島赤十字・原爆病院院長の古川善也氏により、当院の「病院改革と経営改善」について、院長就任から7年間にわたる様々な取り組みについてお話があった。古川氏は部長時代より病院経営に関して、様々な問題意識を持っており、院長就任後は、それぞれの課題について、次々と院内改革に着手した経緯を説明された。

 院長就任後に着手した項目は、例えば、入職前面談、新入職時の当院・病院経営の講演、院長通信の配信(経営者の考えを組織内に浸透させるため)、他病院の見学学習(成功事例を知り、当院でも実践するため)、会議の見直し(改善、継続、新規設定)、情報開示を目的とした電子カルテの利用、役職者に対する経営を考えるための課題設定、原価計算を廃止して、疾患別粗利計算の導入、KPIの導入、看護部改革などがあげられる。
 また具体的な経営改善プロセスについては、「危機を認識、分析する」、「今後の方向性を決める」、「全職員に現状を伝えるとともに、今後の方針を周知する」、「組織の改変と方針の徹底を図る」、「短期的な成果を実現し、職員に自信をつける」、「ボトムアップを促し、新し文化を創る」の6つの項目を掲げ、それぞれを達成するための取り組みが紹介された。
 それらの成果として、広島赤十字・原爆病院は2022年、2023年にNewsweekからWorld’s Best Hospitalsに選ばれ、日本では60位、広島では2位の評価(2023年)を得ており、病院改革と経営改善は令和5年度も電子カルテの更新や各種医療機器の導入など、医療のサービスの向上につながる取り組みを積極的に行う目標が具体的に説明された。講演の最後に古川氏は病院の経営改革の基本は、「職員が働いている病院に誇りを持てるようにすること」、「経営状態を理解出来るようにすること」、「職員が経営改革の必要性を認識し、行動すること」を重視する点として説明された。
 講演後は、原価計算をとりやめたことに対して、新たに用いた疾患別の粗利の使い方やその共有の範囲についての質問や、組織構成員に経営上の問題を共有するための仕組みをどのように構築したのか、またバランススコアカードをやめてKPIを使うことにした理由などに関する質問があり、時間を余すことなく、活発な質疑応答が行われた。

第二部〔研究報告〕
 第1報告(オンライン)
   報告者:日浅優氏(名古屋学院大学・専任講師)
   論題:「現場従業員の信頼が,MCSの協働促進プロセスに及ぼす調
       整効果」

 90年代以降、組織間の提携が増加したことを背景として、組織間マネジメント・コントロール・システム(MCS)の研究が進み、組織間の信頼は、MCSの目的である組織間目標達成にむけての協働を促進させることが明らかにされてきた。報告者は、同一組織内における、MCSと信頼との関係が協働に対してもつ影響については、これまであまり研究されてきていないことに着目し、組織内の、部下から上司に対する信頼(垂直的信頼)と部下間の信頼(水平的信頼)が持つ、予算管理と方針管理から成るMCSが現場従業員の協働を促すプロセスに対する調整効果について定量的に検証を行った結果を報告した。
 検証は、あるホテルチェーン企業の従業員を対象としたアンケートデータを用いて(データ数:2,737名)、検証的因子分析、階層的重回帰分析により行われ、統計分析の結果、①垂直的信頼があるほど、予算管理における上司が現場従業員へ予算やそれを達成するための方法の伝達及び予実差異のフィードバックが方針管理における現場従業員間の議論を促すこと、及び②水平的信頼があるほど、方針管理における部署での議論が目標達成に向けた協働を促すという正の関係が、より強まることを明らかにした。今後は垂直的信頼と水平的信頼の相互間の影響の検討や、上司から部下への信頼についての検討、信頼の長期的な影響の分析などが課題として挙げられた。

 第2報告(対面)
  15:55~16:35(報告30分、質疑10分)
   報告者:足立洋氏(県立広島大学・准教授)
   論題:「不確実性と管理会計」

 先行研究によれば、環境不確実性が高いと、それに対処するために頻繁かつ幅広く管理会計情報が収集される。一方で、組織の規模が小さいほど、管理会計情報の利用頻度は減少する。そこで、報告者は、小規模企業の管理会計の洗練の規定要因について、小規模企業の環境不確実性に着目しながら、試論的な整理を行った。その結果、近年は中小企業への注目も増え、一方で小規模企業の管理会計研究は少ないことを指摘し、管理会計研究上の小規模企業の定義の難しさを確認した上で、不確実性と管理会計の洗練について、先行研究を整理し、大企業の場合と、不確実性と管理会計の洗練は小規模企業でも大企業と同じなのかという点についても十分に捕捉できていない可能性を示唆した。
 このような問題意識の下、報告者は、小規模企業における管理会計情報へのニーズ、及び管理会計情報の利用の洗練度に影響を与える要因(資金・人材面の制約、同族企業か否か・経営者が創業者か否かといった組織的要因、系列企業からの要請といった慣行的要因)について理論モデルを構築し、「洗練」という用語について継続的な検討が必要としながら、今後は、ケース・スタディによるモデルの検証や、会計情報の経営者によるスキャニングの程度に特定する要因が及ぼす影響を明らかにすること、そして会計情報がどのようにシステム化されるのかを課題として挙げた。
 両報告とも、発表の後には対面参加者・オンライン参加者から活発な質疑応答が行われた。

 

2023年度第1回関西・中部部会開催のお知らせ

2023年4月25日 

日本管理会計学会会員各位

日本管理会計学会
2023年度第1回関西・中部部会開催のお知らせ

謹啓 
 会員の皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 さて、2023年度第1回関西・中部部会(テーマ:管理会計の多様性と可能性)は、対面とオンラインのハイブリッド方式により、以下のプログラムが確定いたしましたので、お知らせ申し上げます。
 今回は、ゲストスピーカーとして古川善也氏(広島赤十字・原爆病院院長)をお迎えし、対面でのご講演をいただきます。ご講演のテーマは「病院改革と経営改善」で、広島県の基幹病院の一つとして存在する広島赤十字・原爆病院における病院改革と経営改善プロセスについて、赤字を縮小し、病院のビジョンを院内に根付かせ、目標を共有する取り組みなどを、部長時代から遡り、アフターコロナの現在に至るまでのお話を頂きます。
 また、研究報告もお二人の若手の先生方にご報告をいただきます。
 万障お繰り合わせの上、ご参加いただきますようご案内申し上げます。

謹白

 

1.開催日時:2023年5月27日(土)13時30分~16時40分
2.開催方法:対面・オンライン(Zoom)を利用したハイブリッド
       方式
3.開催場所:広島国際大学呉キャンパス1号館3階会議室(広島県呉
       市広古新開5丁目1-1)

       https://www.hirokoku-u.ac.jp/access/kure.html

4.参加費:無料
5.プログラム
  13:30~13:35 部会進行の説明:準備委員長 
  13:35~13:40 開催の辞:関西・中部部会長 

 

第一部〔特別講演〕(対面)
  13:45~15:00 (講演60分,質疑応答15分)
   講演者:古川善也氏(広島赤十字・原爆病院院長)
   講演テーマ:「病院改革と経営改善」

   <古川善也氏プロフィール>
   1980年 広島大学医学部卒業 
   1982年 済生会呉総合病院内科
   1984年 広島大学医学部附属病院第一内科 
   1988年 広島赤十字・原爆病院
   2012年 同 副院長兼消化器内科部長 
   2016年 現職(現在に至る)

  15:00~15:10 休憩

第二部〔研究報告〕
 第1報告(オンライン)
  15:10~15:50(報告30分、質疑10分)
   報告者:日浅優氏(名古屋学院大学・専任講師)
   論題:「現場従業員の信頼が,MCSの協働促進プロセスに及ぼ
      す調整効果」 

 第2報告(対面)
  15:55~16:35(報告30分、質疑10分)
   報告者:足立洋氏(県立広島大学・准教授)
   論題:「不確実性と管理会計」  

  16:35~16:40:閉会の挨拶

6.参加申込方法
(1) 申込締切日:2023年5月22日(月)
(2) 申込方法:参加ご希望の方は、以下のURLから「申込フォーム」により上記の締切日までにお申し込みください。関西・中部部会以外の方もご参加いただけます。

参加申込用URL: https://forms.gle/EnuyD36aEf362ETe8

(3) Zoom情報の送付:参加申込のご連絡をいただいた方でオンライン参加をご希望の方に、5月24日(水)頃に当日のZoom情報(ミーティングのURL、ID、パスコード等)をお申込み時のメールアドレスにお送りいたします。

7.その他:懇親会は開催いたしません。プログラム変更などの連絡事項が生じた場合は、後日、Webサイトhttps://sitejama.jp/ に掲載いたします。

以上

2023年度第1回日本管理会計学会関西・中部部会
準備委員長 広島国際大学健康科学部医療経営学科 景山愛子
Mail: a-kage[at]hirokoku-u.ac.jp([at]⇒@)