2024年度第2回フォーラム 開催記

 2024年度第2回フォーラムは,神戸大学を開催準備校(準備委員長:神戸大学 梶原武久氏)として,2024年6月29日(土)14時10分~17時30分に神戸大学にて対面形式で開催されました。当日の参加者は約35名でした。開会の挨拶は日本管理会計学会・会長の﨑章浩氏(東京国際大学),司会および閉会の挨拶は梶原武久氏(神戸大学)により行われました。特別講演は北林孝顕⽒(川崎重⼯業株式会社 企画本部 経営企画部⻑ 理事),研究報告の第1報告は⽥中政旭⽒(神戸大学大学院博士課程後期課程),第2報告は⼤浦啓輔⽒(⽴命館⼤学)でした。いずれの報告についても,フロアから積極的な質問やコメントがなされ,活発な議論が行われました。

特別講演
報告者:北林孝顕⽒(川崎重⼯業株式会社・神戸大学大学院経営学研究科 研究員)
報告タイトル:⼤型製品システム開発のグローバル展開の課題―鉄道車両開発の事例研究―

 特別講演の前半では,川崎重工業の成長戦略とそれを実現するために実施している経営改革の具体的な施策について紹介されました。特別講演の後半では研究者としての立場に立ち,北林氏によるこれまでの研究の取り組みについて紹介されました。北林氏は大型製品システムの開発マネジメントの研究に取り組んでこられ,組織科学などの国内の学術雑誌に複数の論文を掲載されています。報告では,他産業と比較した鉄道車両開発マネジメントの特徴や,ユーザー視点から見た場合の課題やその克服方法に関する研究が紹介されました。さらに,それらの研究の発展的な内容として,メーカー視点での国内外の課題と方向性についても紹介されました。

研究報告 第1報告
報告者: ⽥中政旭⽒(神戸大学経営学研究科博士課程後期課程)
報告タイトル:地⽅公共団体における⼈事評価制度の設計:実質的な利⽤と形骸化

 研究報告の第1報告では,田中氏より地方公共団体の人事評価制度の導入とその利用に関する研究報告が行われました。研究の背景として,我が国では地方公務員法の改正により,人事評価制度の実施が義務付けられており,人事評価制度がほぼすべての団体で導入されています。しかし,一部では,人事評価制度の導入の目的に反して,人事評価制度が導入されたものの実質的には利用されず,形骸化している可能性が指摘されています。田中氏によるアンケート調査結果によれば,実質的に人事評価制度を導入している団体の特徴として,早期に人事評価制度を導入するとともに,経済的有効性を感じる要因を持つ組織といった特徴が明らかとなりました。

研究報告 第2報告
報告者:⼤浦啓輔⽒(⽴命館⼤学)
報告タイトル:組織間における MCS のアラインメントに関する論点:研究意義と構成概念妥当性の観点から

 研究報告の第2報告では,組織間におけるMCSアラインメント(整合的なMCS)について,O’Connor and Schloetzer (2023)のPMSアラインメントの概念をより広い観点から捉えなおすことによって,その研究意義や構成概念の妥当性について報告されました。大浦氏は国内の上場製造企業を対象にした郵送質問票調査のデータを用いて整合的なMCSの妥当性について検証しました。その結果,組織間のMCSを考える際に,組織間関係のガバナンスだけでなく,個々の企業内部のMCSも考慮することが,目標一致やインセンティブの整合性を議論する際の重要性などが主張されました。また,今後の展望として,MCSアラインメントを規定する要因やその結果に関する検証の必要性が示唆されました。

文責:北田智久(近畿大学)