「関西・中部部会」カテゴリーアーカイブ

2022年度第2回日本管理会計学会関西中部部会 報告者募集

日本管理会計学会会員 各位
 
謹啓 
 会員の皆様にはますますご活躍のことと拝察申し上げます。
 さて、2022年11月19日(土)に、岐阜大学にて、2022年度第2回日本管理会計学会関西・中部部会を開催いたします。
 第2回関西・中部部会は、コロナ感染状況等、諸般の事情を鑑みて、Web(Zoom)によるオンライン開催となります。
 つきましては、自由論題報告における報告者を募集いたします。
 ご報告をご希望の方は、2022年10月14日(金)までに、下記の要領で、奮ってご応募ください。
 ご報告者の方には、Zoomを利用してオフィス・ご自宅等から配信をしていただく形になります。
 以上、よろしくお願い申し上げます。
 
謹白
 
 
開催日:2022年11月19日(土)
開催校:岐阜大学(ただしZoomを利用したオンライン開催)
応募方法:以下のURLからアクセス可能な「申込フォーム」より申し込みください。
【自由論題報告申込フォーム】→ https://forms.gle/9pHwR69p1R4BVFCt6
なお、申し込みに際しては、下記の(1)から(6)の内容を記載いただきますので、あらかじめご準備ください。
 (1)氏名:
 (2)所属:
 (3)職名:
 (4)連絡先メールアドレス:
 (5)報告タイトル:
 (6)報告要旨(200字程度):
応募締切日:2022年10月14日(金)
 
                                                         以上
 
2022年度第2回日本管理会計学会関西・中部部会
準備委員長 岐阜大学 社会システム経営学環 篠田朝也

日本管理会計学会2022年度第1回関西・中部部会開催記

2022年5月30日 森本和義(羽衣国際大学)

 日本管理会計学会2022年度第1回関西・中部部会が、2022年5月21日(土)に、羽衣国際大学(大阪府堺市)を主催校として開催された。部会の開催にあたり、部会準備委員長から部会の進行方法の説明があり、続いて皆川芳輝関西・中部部会長から開会の挨拶が行われた。
 今回の部会は、対面(来会)とWeb(Zoom)との併用での開催であった。対面での参加者は16名で、Webでの参加者は18名であった。特別講演と2つの研究報告が行われたが、いずれの報告者も壇上から生き生きとした表情での発表であった。また、活発な質疑応答が行われた。

第一部〔特別講演〕 司会:森本和義氏(羽衣国際大学)
講演者:木原久友氏(南海電気鉄道株式会社まち共創本部グレーターなんば創造部長)
講演テーマ:「グレーターなんばのまちづくり」
 特別講演では、大阪ミナミの中心地なんばのまちづくりが講演のテーマであった。大阪ミナミの中心地なんばは南海なんば駅を中心に都市機能を発展させてきたが、講演者の木原氏は、新たな取り組みとして、従来のなんばを越える「グレーターなんば」のまちづくりについて講演された。木原氏によると、人を惹き付けるなんばの強みや特徴は、道頓堀の水辺と看板にある。また、「グレーターなんば」を創造するための2つのちからは、なんばの特別な期待感を楽しむ「エンタメのちから」となんばの日常の期待感を支える「ステイのちから」であると語られた。戦略上のターゲットとなるのは、なんばを選んでわざわざ訪れる人となんばの滞在者・居住者であり、「グレーターなんば」の創造を加速させる要因としては、都市機能の多様化、ダイバーシティおよび新規事業創出などが指摘された。
 さらに、なんば駅前広場空間再編事業の話では、車両中心の駅前空間を人中心の空間に再編するプロジェクトについて講演された。なんば駅前広場を人中心の空間に再編し、大阪ミナミの新たなシンボル空間を生み出すために、社会実験が実施されていることもお話になった。
 講演後には、大阪キタの梅田に対する大阪ミナミのなんばの強み、都市開発を行う上での鉄道業の強みや特徴、なんばの戦略上のポジショニングなどについての質問があり、活発な質疑応答が行われた。

第二部〔研究報告〕 司会:徳崎進氏(関西学院大学)
第1報告 
報告者:玉川絵美氏(関西学院大学)
論題:「企業価値評価においてインプット情報となる公正価値の概念に関する一考察-『予備的見解:
金融商品および特定の関連資産、負債の公正価値での報告』を中心に据えて-」

 報告者の玉川氏は、まず、公正価値の問題点として、公正価値の概念が広義であるため、立場により公正価値概念の捉え方が異なる可能性があることを指摘した。そして、その問題点を解決するために着目したのが、FASBが1999年12月に公表した「予備的見解:金融商品および特定の関連資産、負債の公正価値での報告」であった。現行の公正価値測定の会計基準を構成するSFAS第157号は2006年9月に公表されているが、玉川氏の研究はSFAS第157号より過去に遡って公正価値概念を探究する試みであった。
 玉川氏の報告では、まず、FASBの予備的見解における公正価値の概念が明確にされた。そして、予備的見解に対して寄せられたコメントをもとに、コメント回答者が抱く公正価値の概念も検討の対象であった。コメントレターの分析からは、次の4点が明らかにされていた。第一に、予備的見解は、財務諸表作成者や監査人、金融商品を取り扱う団体の関心が高い。第二に、すべての金融商品に公正価値測定を適用するという提案には66%以上のコメント回答者が反対している。第三に、金融商品の全面公正価値測定に反対している場合、コメントレターではその反対理由を説明するに留まる傾向にある。第四に、予備的見解で示された定義には50%以上の反対があり、賛成よりも反対の立場のコメント回答者が多い。さらに、予備的見解で示された定義に反対する理由としては、公正価値の定義の実行・適用の難しさ、測定値の客観性・一貫性の欠如、公正価値が継続企業に適さない清算価値であること、恣意性の介入が指摘された。そして、結論として、予備的見解が公表された当時におけるコメント回答者の考える公正価値とは、見積りの要素を極力取り除いた実現可能性を重視した価額ではないか、という見解が主張された。

第2報告 
報告者:卜志強氏(大阪公立大学)
論題:「マネジメント・コントロール・システムの理論的基礎としての企業理論」
 
 報告者の卜氏は、サステナビリティ経営やパーパス経営を念頭に置きながら、新たなマネジメント・コントロール・システム理論(MCS理論)とMCS理論の基礎としての現代企業理論の双方を構築する必要性を主張した。アンソニーのMCS理論、マーチャントのMCS理論、サイモンズのレバー・オブ・コントロール理論、マルミとブラウンのMCSパッケージが説明されるとともに、「管理会計の適合性喪失」や「予算管理無用論」といった欧米の学界での議論も取り上げられた。そして、従来から新たなMCS理論を構築する試みが継続的に行われてきたことが指摘された。
 他方で、伝統的企業理論は、株主第一主義や株主価値最大化目標を基本的前提としている。しかし、卜氏によると、近年の経営環境の変化によって、企業経営に関する基本的な考え方を転換する必要に迫られている。企業経営に関する新しい考え方としては、主に次の3点が指摘された。第一に、株主第一主義から多様な利害関係者に経営の基軸を移すべきである。第二に、環境重視の視点から事業を見直すべきである。第三に、企業の社会的責任(CSR)をより重視すべきである。そして、こうした考え方に立脚する経営手法が、サステナビリティ経営やパーパス経営であると主張された。
 卜氏の報告では、伝統的企業理論に対する修正として、人本主義企業理論や利害関係者理論が取り上げられていた。卜氏の定義では、現代企業とはすべての利害関係者のために価値の創造と分配を行う組織である。卜氏が構想する現代企業理論では、経営者と社員と株主が主権者であり、企業が創出した共通価値(経常利益+人件費)が経営者と社員と株主の三者の協議によって分配されることになる。そして、最後に、このような現代企業理論に依拠しながら、新たなMCS理論を構築する必要性が主張された。

2022年度第1回日本管理会計学会関西・中部部会開催のお知らせ

2022年4月10日

日本管理会計学会会員各位

 

2022年度第1回日本管理会計学会関西・中部部会開催のお知らせ

 

謹啓 
 陽春の候、会員の皆様にはますますご健勝のことと拝察申し上げます。
 さて、2022年度第1回日本管理会計学会関西・中部部会(開催校:羽衣国際大学)のプログラムが確定いたしましたのでご連絡申し上げます。今回は、ゲストスピーカーとして、南海電気鉄道株式会社まち共創本部グレーターなんば創造部長の木原久友氏をお迎えいたします。ご講演のテーマは、大阪南の中心地なんばのまちづくりでございます。なんば駅前広場を「車が占拠する駅前の道路」から「国内外の来街者が滞在できる人中心のシンボル広場」へと官民連携で空間再編する事業についてお話しをお伺いいたします。
 部会は、対面とWeb(Zoom)との併用での開催となります。万障お繰り合わせの上、ご出席いただきますようご案内申し上げます。多くの会員の皆様のご参加をお待ちいたしております。

謹白

 

1.開催日時:2022年5月21日(土)13時30分~16時45分
2.開催方法:対面とWeb(Zoom)との併用
3.参加費:無料
4.プログラム:
  13:30~13:35 部会の進行方法の説明:部会準備委員長
  13:35~13:40 開催の辞:関西・中部部会長

第一部〔特別講演〕司会:森本和義氏(羽衣国際大学)
  13:45~14:45 ゲストスピーカーによる特別講演

   講演者:木原久友氏(南海電気鉄道株式会社 まち共創本部グレーターなんば創造部長)
   講演テーマ:「グレーターなんばのまちづくり」

【講演者プロフィール】
 木原 久友(きはら ひさとも)
 ・1967年12月20日生まれ
 ・1990年 3月 慶応義塾大学商学部卒業
 ・1990年 4月 南海電気鉄道株式会社入社
 ・2015年 6月 難波開発部長
 ・2017年 6月 経営企画部長
 ・2019年 6月 沿線価値創造部長
 ・2021年 6月 グレーターなんば創造部長 現在に至る

【部門概要】
 グレーターなんば創造部は、地域、行政と一緒に、なんばエリアのまちづくりに取り組んでいます。なんばが、国内外から訪れる人に選ばれ、暮らし、働く人が誇りを持ち続けられる「まち」を目指し、魅力あるコンテンツ、居心地の良い空間、ホスピタリティの提供などソフト・ハード両面の整備と、エリアマネジメントにより維持継続する仕組みづくりが主な業務です。

  14:45~15:05 講演への質疑応答
  15:05~15:15 休憩

第二部〔研究報告〕司会:徳崎進氏(関西学院大学)

 第1報告 15:15~15:55(報告30分、質疑10分)
   報告者:玉川絵美氏(関西学院大学)
   論題:「企業価値評価においてインプット情報となる公正価値の概念に関する一考察-「予備的見解:金融商品および特定の関連資産、負債の公正価値での報告」を中心に据えて-」

 第2報告 16:00~16:40(報告30分、質疑10分)
  報告者:卜志強氏(大阪公立大学)
  論題:「マネジメント・コントロール・システムの理論的基礎としての企業理論」

16:40~16:45 閉会挨拶:部会準備委員長

5.参加申込方法・問合せ先:
 (1)申込締切日:2022年5月14日(土)
 (2)申込方法:参加ご希望の方は、E-mailにてお申し込みください。 E-mailの表題には「関西・中部部会参加希望」と記し、本文中には「氏名」、「所属機関」、「連絡先E-mailアドレス」、「対面(来会)参加あるいはWeb(Zoom)参加」を明記の上、締切日までに下記E-mailアドレスまでご連絡ください。

 (3)連絡・問合せ先:羽衣国際大学現代社会学部 森本和義

E-mail;kmorimoto[at]hagoromo.ac.jp ([at]を半角の@に変更してください。)

 (4)参加申し込みのご連絡をいただいた方全員に、対面(来会)参加あるいはWeb(Zoom)参加の区別なく、参加申込締切日以降に、Zoom情報(URL、ミーティングID、パスコード)をお送りいたします。なお、Zoom情報の連絡をもって、参加申し込みメールへのお返事に代えさせていただきます。

6.その他:懇親会は開催いたしません。プログラム等に変更がある場合は、後日、Webサイトhttps://sitejama.jp/に掲載いたします。

以上

2022年度第1回日本管理会計学会関西・中部部会
準備委員長 森本和義

 

【羽衣国際大学への交通アクセス】
交通アクセス|羽衣国際大学|HAGOROMO University of International Studies - 大阪府堺市

2022年度第1回関西・中部部会 報告者募集のお知らせ

2022年3月2日

日本管理会計学会会員各位

 

2022年度第1回日本管理会計学会関西・中部部会
報告者募集のお知らせ

 

謹啓 
 早春の候、会員の皆様にはますますご健勝のことと拝察申し上げます。
 さて、2022年5月21日(土)に、羽衣国際大学(大阪府堺市)にて、2022年度第1回日本管理会計学会関西・中部部会を開催いたします。今後のコロナ感染状況にもよりますが、第1回関西・中部部会は、対面とWeb(Zoom)との併用での開催を考えております。
 つきましては、自由論題報告における報告者を募集いたします。ご報告をご希望の方は、2022年3月31日(木)までに、下記の要領で、奮ってご応募の程、宜しくお願い申し上げます。
 以上、何卒宜しくお願い申し上げます。

謹白

 

開催日:2022年5月21日(土)
開催校:羽衣国際大学(大阪府堺市)
応募方法:下記の(1)から(5)を明記の上、e-mailにてご応募ください。
 (1)氏名:
 (2)所属:
 (3)職名:
 (4)連絡先:
 (5)報告タイトルと要旨:
応募締切日:2022年3月31日(木)
応募先:羽衣国際大学現代社会学部 森本和義
     e-mail;kmorimoto[at]hagoromo.ac.jp
           ([at]を半角の@に変更してください。)

以上

2022年度第1回日本管理会計学会関西・中部部会
準備委員長 森本和義

日本管理会計学会2021年度 第2回関西・中部部会 開催記

2021年10月18日 齊藤毅(中京大学)

■■日付・場所
・日付:2021年10月9日(土)
・場所:Zoomミーティングによるオンライン開催(開催校:中京大学)

■■ 日本管理会計学会2021年度第2回関西・中部部会が、2021年10月9日(土)に中京大学(愛知県名古屋市)の主催により開催された(準備委員長:齊藤毅氏(中京大学))。コロナ禍の状況を受け、部会はZoomミーティングによるオンラインで実施された。
 今回の部会は、オンライン開催ということで参加のための地理的制約が無くなったこともあり、関西・中部地域だけでなく、全国から28名の参加があった。いずれの講演・報告でも、発表の後には活発な質疑応答が行われた。

■■ 第一部〔特別講演〕 司会:齊藤毅氏(中京大学)
講演者:森田大延氏(有限会社しら河 代表取締役)
講演テーマ:「コロナ禍を乗り越え、次代につなげ!ひつまぶし」

 本講演は、長年にわたって名古屋市でうなぎ専門店(ひつまぶし店)を複数店舗展開されている「しら河グループ」の代表取締役である森田大延氏をお迎えした。飲食業における日頃の取り組みだけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大前後の業績の変化やアフターコロナに向けた将来展望等について講演頂いた。
 講演の前半では、まず、自身の経歴や社会活動、企業の概要について話された。しら河は、浄心本店、今池店、ジェイアール名古屋高島屋店(お持ち帰り専門店)、栄ガスビル店、名駅店を展開しており、通販ギフトも手掛けている。各店舗の規模や体制等を述べられるとともに、うなぎを食べる習慣の「土用丑の日」がある7~8月の売上高が最も高いと説明された。次に、会計システムについて触れられた。実際の会計数値を表示しながら、①浄心、②今池、③高島屋、④栄、⑤名駅、⑥加工場、⑦本部、⑧ギフトの8部門に分けて実施されている業績管理について説明があった。さらに、顧客管理について述べられた。しら河では、ポイントカードを発行している。カード情報に基づき、顧客の特徴として、男性より女性の割合が若干ながら多く、若年層よりも高齢者の利用率が高いことが示された。最後に、経営理念や研修制度について話された。しら河の経営理念は、「おなかもこころもまんぷく(鰻福)に」である。この理念を浸透させるための研修制度について、実際の研修資料に基づき説明がなされるとともに、生産地研修や社外研修等について話された。
 後半では、新型コロナウイルス感染拡大前後の業績の変化や将来展望について述べられた。まず、各店舗別に、2019年から2021年までの実際の業績を示しながら、その時々の意思決定や職場の状況等を交えつつ、業績の変化について細かく説明された。各店舗では、軒並み売上高が低下しており、最も落ち込んだのは第1回目の緊急事態宣言直後の2020年4~5月である。その後も苦しい時期が続いているが、一方で、持ち帰り専門店である高島屋や通販ギフトの売上高は好調であることから、全体では売上高が回復傾向にあることが示された。次に、業績の低下に伴い閉店を余儀なくされた大森(日本料理)について述べられた。閉店時の経緯や従業員・女将とのやり取りについて話された。最後に、アフターコロナに向けた将来展望について触れられた。具体的には、既存事業を強化しつつも多角化を視野に入れて、事業を拡大していきたいと話された。また、コロナ禍においては政府の助成金をはじめとして周囲に助けられたことから、コロナ後に社会に貢献することで恩返しをしていきたいと所信を表明された。 
 講演の後には、参加者から多くのご質問を頂き、活発な質疑応答が行われた。

■■ 第二部〔研究報告〕 司会:窪田祐一氏(南山大学)
■ 第1報告
報告者:今井範行氏(名古屋国際工科専門職大学教授)
論題:「デザイン思考に対応したITコスト管理に関する一考察-KINTOの事例を中心に-」

 本報告では、デザイン思考に対応したITコスト管理について、トヨタのKINTOの事例に基づき考察された。モノのサービス化の進展により、多くの業界で、製品単品売り切り型からサブスクリプションモデルへの転換が進行している。同モデルでは、サービス提供のためのシステムのUX向上が競争力の鍵を握ることから、デザイン思考にもとづくシステムのモード2開発が興隆している。それにともない、多くの業界で、システム開発体制の変革が進行しつつある。すなわち、①アウトソーシング(外注)から自前(内製)への体制変更、②デジタル専門人材の採用・囲い込み・処遇改善・戦略組織化の進行である。
 報告者によれば、ITコスト管理の変更として、製品単品売り切り型では新車投入時の一時コスト(外注費、変動費)を新車の販売収益から一時回収(早期回収)することが求められるが、サブスクリプションモデルではUX向上のための継続コスト(内製費、固定費)を、サブスクのサービス収益から継続回収(長期回収)することが求められる。また、システム開発拠点の開設費、人材採用費、新会社設立費等の体制移行費用は巨額となるため、通常予算とは別枠の戦略予算化が必須である。さらに、モノのサービス化に連動した(IT コスト)変動費の固定費化、回収長期化によるIT コスト管理のリスク度合いの増大について検討する必要があると報告された。

■ 第2報告
報告者:足立洋氏(県立広島大学准教授)
論題:「中小企業における後継者確保の可能性と管理会計-後継者確保状況と管理会計実態に関する探索的研究-」

 本報告では、中小企業における後継者確保状況と管理会計実態について、広島県呉市におけるアンケート調査に基づき考察された。近年、中小企業における事業承継プロセスの円滑化における管理会計の有用性が指摘されている。具体的には、管理会計システムから生み出される会計情報が社内の共通言語となって、意思疎通の改善に寄与する点などが挙げられている。一方、日本ではそもそも後継者を確保できていない中小企業も多い。廃業予定企業と事業承継の意向があっても後継者が未定の企業を合わせると、全体の7割に及ぶにもかかわらず、これらの企業における管理会計実践の実態は、ほとんど明らかになっていない。報告者は、上記の問題意識のもとで、管理会計の利用実態に程度の違いがあるのか、あるとすればどのような違いがあるのかという検討課題について考察した。
 報告者によれば、アンケート調査結果に基づくと、後継者が確保できている中小企業と後継者を探しているが未定の中小企業は、廃業予定の中小企業に比べて、業績管理会計、資金管理、投資管理、外部者との情報共有について、平均値に有意な違いがみられた。この結果により、後継者を確保するために組織存続に向けて組織全体で計画に基づいたPDCAを回すことを心掛けている可能性が示唆された。また、管理会計実践が部分的に外部者によって担われているという中小企業の実態を踏まえると、上記のプロセスの一部は、事業の運営や承継に関する外部者との相談のプロセスの中で担われている可能性があると報告された。