小林英幸氏は、トヨタ自動車の原価企画において、マネジメント・コントロールはどのように働いているのかを明らかにするため、アンケートおよびインタビュー調査を用いた研究報告を行った。小林氏はまず、トヨタ自動車の原価企画について説明した上で、3つの観点(CE、設計者、関係5部署)からのアンケート・インタビュー調査の概要と結果を説明された。次に、それらのアンケート・インタビュー結果の解析を行い、3つの観点では、原価企画の捉え方が異なっていることを明らかにしている。その上で、(1)Simons(1995)の4つのコントロール・レバー、(2)Malmi and Brown(2008)のパッケージとしてのマネジメント・コントロール・システム、(3)Ouchi(1979)のクラン・コントロール、という3つの先行研究を用いて、トヨタ自動車の原価企画のマネジメント・コントロール・システムについて検討している。その結果、上記の先行研究を用いると、トヨタ自動車の原価企画のマネジメント・コントロール・システムの働きは概ね説明できると主張された。最後に、CE制度を「是」として捉え、その長所を活かし課題を克服するヒントを述べ、トヨタ自動車の製品開発および原価企画のあり方への提言としてまとめられた。
■【報告者】山本達司氏(大阪大学大学院経済学研究科教授)
Prof. Tatsushi Yamamoto (Osaka University), Prof. Katsuhiko Muramiya (Osaka University) and Prof. Takashi Yamasaki (Kobe University)
“Stock Crash and R-squared around a Catastrophic Event: Evidence from the Great East Japan Earthquake”
山本達司氏は、財務報告の曖昧さがクラッシュリスクに与える影響について、モデル設定と実証分析の観点から報告された。山本氏はまず、株価暴落のリスクを示すクラッシュリスクについて説明され、株価暴落に影響を与える要因の一つとして企業の外生的要因に着目し、外生的要因によるクラッシュリスクに関心があることを説明された。次に、先行研究の紹介をした上で、本報告におけるモデルと仮説の設定および分析について説明された。本報告では外生的要因(ショック)として東日本大震災を取り上げており、財務報告の曖昧さが高まるほど、自然災害などの外生的要因が起こった際には、クラッシュリスクがより高まることを実証的に明らかにしている。最後に、本報告のインプリケーションとして、投資家に対しては財務報告の曖昧さが高い企業ほど株価のクラッシュが起きやすいことを注意喚起でき、また、経営者に対しては普段から透明度の高い財務報告を行うインセンティブを与えることができるとまとめられた。