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2013年度 第2回 リサーチセミナー開催のお知らせ

日本管理会計学会会員各位

会員の皆様におかれましては、益々ご清祥のことと存じます。
この度、2013年度第2回リサーチ・セミナーを下記のとおり開催することになりましたのでご案内申し上げます。事前の申し込みは必要ありません。研究報告の内容や研究方法に興味をお持ちの方は、是非ご参集下さい。

■■日 時・会 場
● 日 時:2013年12月7日(土) 14時~17時15分
● 会 場:早稲田大学 早稲田キャンパス 11号館819教室
●参加費:無料

■■プログラム
■14:00~15:30
●報告者  新谷 理 氏(早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程)
「RIV 及び OJ モデルを用いた株式市場における資本コストの研究 ~日本株式市場と海外市場の比較」
●ディスカッサント  矢内 一利 氏 (青山学院大学)

■15:30~15:45  コヒーブレイク

■15:45~17:15
● 報告者  藤原 靖也 氏(神戸大学大学院経営学研究科博士課程)
「医療組織を対象とした管理会計研究の現状と課題 ~非営利組織の特質を踏まえた諸外国の文献レビューをもとに」
● ディスカッサント  妹尾 剛好 氏(和歌山大学)

■■お問合せ先: 2013年第2回リサーチセミナー準備委員長
早稲田大学 辻正雄 mtsujiあっとwaseda.jp

辻 正雄(早稲田大学)

2013年度 第2回関西・中部部会 開催記

2013kansai2.png■■ 2013年度第2回日本管理会計学会関西・中部部会が2013年10月26日(土)京都大学において開催された。当日は、小菅正伸部会長の挨拶の後、自由論題2報告、特別講演と連動した企画セッション「イノベーションと管理会計」での2報告,トヨタ自動車株式会社広報部担当部長土井正己氏(肩書きは報告時点)による特別講演「トヨタのイノベーション・マネジメント」が発表された。今回は,原価計算研究学会関西部会との合同での開催と言うこともあり,関西・中部以外に関東・九州・東北や海外からもご参加をいただくなど、89名の研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。また研究報告に先立ち、関西・中部部会役員会が開催された。

■■ 第1報告は、神戸大学博士後期課程の佐久間智広氏による「小売店のコスト変動分析 – マネジャーの個人差が超すと変動に及ぼす影響?-」であった。この報告では、マネジャーの個人属性の違いは業績に優位な影響を与えるのかという問題について、パンの製造・販売を行うA社における店舗データを利用した定量的分析を行った結果が報告された。分析の結果、マネジャーの個人差がコスト変動に有意に関係しており、マネジャーの個人差が業績に与える影響が大きいことが示唆された。質疑応答では、プロフィットセンターの業績をコスト変動で捉える意義や、ビジネスユニットレベルで個人差が業績に影響を及ぼす管理会計的なインプリケーションについて活発な議論が行われた。

■■ 第2報告は、山形大学の柊紫乃氏によって「山形県米沢地区における地域連携の特徴と地域イノベーション活性化の試み」であった。この報告では、企業の持続可能性を担保する自己革新能力が、管理会計的なPDCAサイクルの累積的効果として生じると考え、中小企業におけるPDCAサイクルの確立や活用に、地域のビジネス・エコシステムがどのような影響を及ぼしているのか、山形県米沢地区を対象とした調査について報告が行われた。具体的な研究対象としては、有機エレクトロニクス技術の発展をてがかりに、近年の米沢地区におけるビジネスエコシステムの生成・発展について、産官学金(融)の連携のパターンの深化が説明された。そのなかで、大学が軸となって、産業界・パブリックセクター・地域金融機関を巻き込んで、事業の採算可能性を視野に入れた研究開発活動が行われていることが紹介された。質疑応答では、大学の研究センターが軸となって、研究シーズだけでなく市場ニーズも視野に入れた研究開発や事業活動が行われるようになった経緯や、それを支える能力について議論が行われるとともに、ビジネス・エコシステムとその中の企業の関係について活発な議論が行われた。

■■ 第3報告は、京都大学経済学研究科の市原勇一氏より「両利きの経営を実現するマネジメント・コントロール・システムに関する考察」であった。問題意識として「なぜ優良企業が失敗するのか?」と「老舗企業がなぜ持続しているのか?」という一見相反する現実についての注意が示されたうえで、「成功の罠」や「イノベーションのジレンマ」から免れるため、経営学において提唱されている「両利きの経営」と、Simonsの「4つのコントロールレバー」を統合する方向性について展望が示された。「両利きの経営」と「4つのコントロールレバー」を統合することで、両利きの経営を可能にする組織的特徴がマネジメント・コントロール・システムの活用によって形成されたり、その効果が促進されたりする可能性があることが示唆された。質疑応答では、4つのコントロールレバーに関する先行実証研究の解釈や、その解釈と今回の検討結果との関連などについて活発な議論が行われた。

第4報告は、広島経済大学の天王寺谷達将氏による「イノベーションを促進する管理会計の役割の再考」であった。Simons(1987,1990,1995)に代表されるイノベーションと管理会計の関係性に関するメインストリームの研究(Davila et al, 2009)を批判的に検討したうえで、管理会計研究の本来の関心と合致した粒度で研究を行うための枠組みをアクターネットワーク理論に依拠して構築する展望が示された。Galbraith(1977)に依拠したSimonsの不確実性理解では、イノベーションにおいて遂行される管理会計手法には焦点をあてることができていないという問題点が指摘され,会計計算によって創り出された情報と、経営資源などの実体との関係性を把握するためにアクターネットワーク理論を援用することが提唱された。質疑応答では、分析単位として「管理会計技法」と「管理会計情報」のいずれを想定するのが妥当であるのかといった論点や,「資源動員の正当化プロセスにおける管理会計の役割」と「緊張を生み出す管理会計の役割」の間の関係をどう理解しているかといった問題について活発な議論が行われた。

■■ 特別講演は、トヨタ自動車 株式会社広報部担当部長土井正己氏による「トヨタのイノベーション・マネジメント」であった。トヨタのイノベーションの考え方を理解するうえで,レイモンド・ヴァーノンが提示した国際分業におけるプロダクト・サイクル理論が重要であることが示された上で,グローバルな視野と長期の展望を持ったイノベーション・マネジメントがどのように具体化されているのか,トヨタの事例が紹介された。そのキーワードはイノベーションによって生み出された価値の「普及」であり,社会の発展に寄与することで結果として会社の「収益」に貢献すべきだという考え方が基本となっているとの理解が示された。イノベーション・マネジメントの具体的な考え方を,プリウスの開発プロジェクトの経験から導出された「8つのプロセス」,つまり,(1)企業文化の醸成、(2)トップマネジメントによるイノベーション領域の提示,(3)CTOによるイノベーション技術の見極め,(4)普及できるかどうかの検討、(5)コスト・品質の検討、(6)マーケティング,(7)グローバル普及、(8)次世代化,として整理・紹介された。質疑応答では、経営理念の実現の方策やプリウス開発プロジェクトにおける管理会計の役割などについて活発な議論が行われた.

澤邉紀生(京都大学)

2013年度スタディ・グループ/産学共同研究グループ決定

2013年7月13日(土)に法政大学において開催された第2回常務理事会において、スタディ・グループおよび産学共同研究グループの選考が行われ、審議の結果以下のグループの設置が承認されましたので、ここでお知らせいたします。

スタディ・グループ
「企業価値創造に向けてのインタンジブルズの複合的活用」(研究代表者:内山哲彦氏)
研究概要→PDF

産学共同研究グループ
 「次世代マネジメント・コントロールのためのメゾスコピック・モデルに関するアクション研究」(研究代表者:長坂悦敬氏)
研究概要→PDF

2013年度 第2回 フォーラム開催記

2013forum2_1.JPG■■ 日本管理会計学会2013年度第2回フォーラムが,2013年7月13日土曜日に法政大学市ヶ谷キャンパスにおいて開催された。今回のフォーラムでは、統一論題の設定をしないで、すべて自由論題にてご報告いただく形式を採った。大会準備委員会委員長である福多裕志先生(法政大学)の開会の挨拶の後、福田淳児先生(法政大学)の総合司会の下で約3時間にわたって4名の先生方による意欲的な研究報告が行われ、活発な議論が展開された。その後、法政大学富士見坂校舎地下1階「カフェテリア」において、懇親会が開催された。各先生方の報告の概要は以下のとおりである。

■■ 第1報告(自由論題報告) 司会者:藤崎晴彦氏(横浜市立大学)
報告者:尻無濱芳崇氏(一橋大学大学院)

「介護事業における組織の公益志向と業績測定尺度の利用」

2013forum2_2.JPG 介護事業において、組織の公益志向(利益最大化以外の目的をもつ)が高い場合、それらが業績評価にどのように影響しているのかについて、千葉県で介護施設を運営する法人を対象とした調査の結果が報告された。報告では2つの仮説が示され、アンケート調査に基づく分析と考察が示された。第1の仮説は、組織の公益志向が強いほど使命達成測定尺度(利益以外の業績測定尺度)の利用度が高まるというものであり、これについては一部の使命達成尺度に対してしか影響は見られず、その影響も限定的であることが明らかにされた。また、規範的に示されてきた一般的見解とは差異が認められることも指摘された。第2の仮説は、組織の公益志向が高いほど、財務的業績尺度の重視度が低下するというものであった。これについては、先行研究と同様に公益志向が高いほど会計的コントロールを軽視していることが裏付けられた。

■■ 第2報告(自由論題報告) 司会者:藤崎晴彦氏(横浜市立大学)
報告者:青木章通氏(専修大学)

「ホテル業における収益管理-レベニューマネジメントに関する実証研究-」

2013forum2_3.JPG まず、レベニューマネジメントの定義および成果尺度について説明があり、本研究は、キャパシティに制約があるサービス産業を前提としていること、短期的な収益最大化を目的とした管理手法であること、そのため経営構造の変革を前提としていないこと、コストには言及しないことなどが示された。次に、ホテル業を対象として、どのような事業環境および収益管理の下であれば、レベニューマネジメントの短期的な財務尺度(成果尺度)を向上させることに繋がるのかについて検討がなされた。報告では、事業環境、収益管理に関する変数について因子分析、信頼性分析が示され、因子得点を説明変数とし、短期的な財務尺度および顧客関連尺度を被説明変数とした多重回帰分析が行われた。その結果、繁忙期と閑散期では財務尺度の向上に繋がる要因が異なることが明らかにされた。また、顧客関連尺度については、特にレベニューマネジメント導入環境の整備状況、販売価格コントロールの程度から影響を受けることが指摘された。

■■ 第3報告(自由論題報告) 司会者:森光高大氏(日本経済大学)
報告者:近藤大輔氏(法政大学大学院)

「アメーバ経営の導入研究」

2013forum2_4.JPG サービス業においてアメーバ経営がどのように導入され機能しているのか、レストラン運営会社の事例を例にとって報告された。まず、製造業で生成・発展してきたアメーバ経営とはいかなるものか、その特徴である時間当り採算およびフィロソフィーの概念について先行研究を取り上げながら詳細な説明がなされた。時間当り採算は、会計的な利益意識を強く持たせる役割があるが、一方で部分最適に陥る危険性があるので、その欠点を補う形でフィロソフィーを浸透させていくと適切な形でアメーバ経営が機能することが説明された。報告では、レストランを運営している「株式会社ぶどうの木」におけるアメーバ経営の事例が紹介され、時間当り採算とフィロソフィーのパッケージが、当該レストランにおけるフロントラインの高効率および高効果を両立させるよう機能していることが示された。

■■ 第4報告(自由論題報告)  司会者:森光高大氏(日本経済大学)
報告者:妹尾剛好氏(和歌山大学)・横田絵理氏(慶應義塾大学)

「機能別組織における戦略的業績評価システムの考察」

2013forum2_5.JPG 戦略的業績評価システムは機能部門において効果的であるのか、それはキャプランとノートンが主張するバランスト・スコアカードの仕組みと同じであるのか、という研究課題について、文献レビュー及び事例研究の経過が報告された。文献レビューでは、一般的なバランスト・スコアカードの仕組みについて解説がなされた後、とくにマーケティング部門で行われている戦略的業績評価システムの概要について検討がなされた。次に事例研究では、現在、報告者が進めているバランスト・スコアカードに関する調査の途中経過について説明があった。これらの考察に基づいて、1. 機能部門では、因果関係を伝達する仕組みとして戦略マップは効果的ではないのではないか、また、2. 機能部門では、相対評価で報酬とリンクしている戦略的業績評価システムが効果的であるのではないか、という2つの新たな仮説が提示された。

梅津亮子(法政大学)

2013年度 第1回企業研究会開催記

2013kigyo_osaka_1.jpg■■ 2013年度 第1回 企業研究会は、2013年7月26日(金)に大阪ガス株式会社・泉北製造所 とガス科学館(大阪府堺泉北コンビナート)で行われました。34度の真夏日でしたが、院生の参加を含め10名で、液化天然ガス(LNG)・マルチエネルギー基地(都市ガス×電気×冷熱)を訪ねました。

■■ 開催にご支援を頂いた大阪ガスグループアイさぽーと人事ソリューション部長仲澤昭人様のご挨拶のあと、大阪ガス・ガス科学館館長田井高宏様から、クリーンエネルギー・天然ガス導入の歴史など今日の都市ガス事業の核心についてご講演いただきました。また見学では73.3万平方kmの広大なプラント施設をバスから説明いただき、LNGタンカーのアンロード(荷おろし)、海水で温める気化、カロリー調整、13A規格送出までの一貫工程をイメージすることができました。科学館のラボではマイナス160度のLNG特性を体験、冷熱の持つエネルギーに驚き、生活関連展示室ではガス発電(エコウィル)×太陽光発電(さすガっス!)など最新エコ技術について知識を新たにしました。

2013kigyo_osaka_2.jpg■■ 田井館長は講話で、西日本エリア最大の供給事業者として製造から消費段階まで地域に果たす役割の大きさ、環境技術開発、ガスの利便性と経済性などについて触れられ、地球環境を視野に1975年から16年をかけて完了した大プロジェクト・石炭石油原料から天然ガス転換事業の意義を強調されました。また中東・東南アジア等からの安定導入や高効率な都市ガス製造フロー、総延長61、000km(地球1周半超)・700万戸に広がる近畿サービスエリアの運営、もう一方の重要事業である110万kw営業運転の天然ガス発電(ガスタービンコンバインドサイクル発電方式。)、冷熱利用によるCO2抑制、コージェネ開発など持続的な地域貢献、液化炭酸製造(ドライアイス・清涼飲料水等の炭酸)などの関連ビジネスまで興味深いお話を紹介いただきました。

2013kigyo_osaka_3.jpg■■ 見学後、活発な質疑が行われ、ガス料金の原価の考え方、原料費リスクや価格安定化戦略、品質原価、製造間接費の低減に向けた取り組み、プラント・エンジニアリングなどが話題にのぼり、丁寧な解説をいただきました。最後に園田副会長の謝辞で企業研究会は終了しました。参加者一同エネルギー事業経営への理解が深まり多くの収穫を得たことと思います。快くお引き受けいただきました大阪ガス株式会社・ガス科学館の田井様、調整にご尽力いただいたアイさぽーとの仲澤様、関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。

参事 三浦徹志(大阪成蹊短期大学)