「年次全国大会」カテゴリーアーカイブ

2014年度 年次全国大会プログラム(改訂版)

会員各位

会員の皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
日本管理会計学会の2014年度全国大会まであと3週間を数えるばかりになりました。皆様をお迎えする準備も着々と進んでおります。
7月末にWEB上と郵送とでお知らせしましたものから、プログラムに一部変更がありますので、改訂版を上げさせていただきます。
また,公認会計士協会からCPE研修の単位授与の認定をいただきました。自由論題の研究報告については、9月12日・13日それぞれに3単位、統一論題の研究報告には2単位、討論会には2単位をCPEの単位とすることができます。

多数の皆様が参加していただけますようお待ちいたしております。

■■プログラム(改訂版)
2014年度 年次全国大会プログラム(PDF形式)

日本管理会計学会2014年度全国大会実行委員会 委員長 小倉 昇

2013年度 年次全国大会プログラム

日本管理会計学会2013年度全国大会を2013年9月13日(金)から15日(日)の日程で,立命館大学において開催致します(13日は「朱雀キャンパス」で理事会等,14日,15日は「びわこ・くさつキャンパス」で特別講演,統一論題,自由論題等を予定しています)。統一論題のテーマは,「管理会計における産学連携とアクションリサーチ」(座長:澤邉紀生 京都大学大学院教授)とし,管理会計研究のレレバンスを向上するための有力な手法としてアクションリサーチを取り上げます。統一論題においては、アクションリサーチに積極的に取り組んでおられる研究者・実務家の双方の論者に登壇いただき、研究方法としてのアクションリサーチの特徴や課題、研究方法論上の意義について理解を深める機会を提供したいと考えております。また,統一論題に先立ち,特別講演ではフィンランドよりKari Lukka教授を招聘し,アクションリサーチを主として研究方法論についてお話を頂く予定です。なお,プログラムの詳細は,以下をご覧ください。

■■プログラム
2013年度 年次全国大会プログラム(PDF形式)

年次全国大会準備委員会 委員長 齋藤雅通(立命館大学)

2012年度 年次全国大会開催記

統一論題 「管理会計研究と方法論」

■■日本管理会計学会2012年度全国大会は、平成24年8月24日(金)から26日(日)の3日間、国士舘大学において開催された(準備委員長:白銀良三氏)。24日には、学会賞審査委員会、常務理事会、理事会、理事懇親会が開催された。25日は9時半から、6会場に分かれ、計18の自由論題報告がおこなわれ、その後、会員総会、記念講演に続き、統一論題報告がおこなわれた。統一論題報告終了後、午後6時すぎより、スカイラウンジで会員懇親会がおこなわれた。翌26日は9時半から前日と同じく6会場で計30報告がなされた後、統一論題の討論がおこなわれた。

■■プログラム
2012年度 年次全国大会プログラム(PDF形式)

■■ 特別賞
■佐藤紘光氏

■■ 功績賞
■笠井賢治氏
■竹森一正氏

■■ 文献賞
■徳崎 進氏
『VBMにおける業績評価の財務業績効果に関する研究:事業単位の価値創造と利益管理・原価管理の関係性』
関西学院大学出版会,2012年2月刊。
■中島洋行氏
『ライフサイクル・コスティング:イギリスにおける展開』創成社,2011年10月刊。

■■ 奨励賞
■衣笠陽子氏
「病院経営における管理会計の機能:病院予算を中軸とした総合管理」
『管理会計学』2012年,第20巻第2号。
■山田哲弘氏
「報告利益と課税所得の関係が利益調整行動に与える影響」
『管理会計学』2012年,第20巻第2号。

■■■ 記念講演
25日午後2時半より、倉重英樹氏(株式会社シグマクシス)による記念講演がおこなわれた。テーマは「知識社会における組織運営」である。まず、司会の白銀良三氏より、倉重氏がこれまで日本管理会計学会副理事長を務められ、功績賞も受賞されるなど、日本管理会計学会に対して多大な功績のある方であることが紹介され、倉重氏の講演となった。 講演は、世界の変革が起こっている時代にあって、今後の企業および個人がどのように変革していかなければならないのかということがメインテーマであった。 世界の国々の人口とその経時の変化の様子から、今後社会は、工業社会から知識社会へ転換されることをドラッカーの言葉を引用して説明され、知識社会における企業のあり方について、倉重氏の持論をお話頂いた。知識社会においては、デジタルITの利用、人「財」の活用、未来管理の3点が必要であるとのことであった。 また、倉重氏は、これまでの経営者として、すばらしい手腕を発揮してこられたが、その要因は、従来の工業社会で用いられている「モノ作りモデル」と知識社会で必要となる「コト作りモデル」の融合によって、経営をおこなってきたことであるとお話し頂いた。 最後に、これからの知識社会においては、組織は「コト作りモデルの構築」、「ひとの動きを見る眼」、「可視化/未来管理」、個人は「自分の仕事の構築」、「自分のイノベーション」、「やるべきことよりやりたいこと」が必要であることを説明され、講演は終了した。倉重氏の「人」に注目をした講演が大変印象的であった。
■ レジュメ:「知識社会における組織 運営 」(PDF形式)

■■■ 統一論題報告
記念講演終了後、山本達司氏(大阪大学大学院)を座長として統一論題報告がなされた。テーマは、「管理会計研究と方法論」である。報告は、管理会計研究方法論から分析的研究、実証分析、実験研究、質的研究の4つについて、次のとおり報告がなされた。なお、報告の概要は報告者から頂いたものである。

■■ 統一論題報告(1) :渡邊章好氏(東京経済大学)「管理会計における分析的手法の意図と貢献」
本報告では、エージェンシー理論や産業組織論を応用した管理会計実務の説明理論構築を目指す分析的研究について、その意図とそれがもたらす貢献について述べた。このような分析的研究は、実務が機能する条件や現実に機能している実務に潜むメカニズムを明らかにすることを意図し、現実を簡略化したモデルを用いる点に特徴がある。そのため、分析的研究による成果を実務にそのまま適用することは難しく、このことが、分析的研究に対する批判の源泉となっている。しかし、分析的研究による成果を積み重ねることで、管理会計の伝統的知見という核の部分をより充実させることが期待できる。したがって、管理会計における分析的研究は、管理会計教育への貢献が大きいと言える。

■■ 統一論題報告(2 ):木村史彦氏(東北大学)
「管理会計研究における実証研究の特徴と課題―アーカイバルデータを用いた実証研究に争点を当てて―」
本報告では、アーカイバルデータを用いた実証研究(以下、実証研究とする)の特徴と課題を、一般的な実証研究の枠組みに沿って概説し、管理会計研究における今後の実証研究のあり方について検討した。近年、日本の会計研究においても実証研究が増加傾向にあり、これは管理会計研究においても顕著である。実証研究は様々な研究テーマ・課題の下で設定された仮説や命題を検証することができ、その知見の蓄積は、管理会計研究および実務に対して大きな貢献を果たしうるものである。 しかしながら、実証研究には多くの限界があり、それを把握しておくことは重要である。そこには、仮説設定におけるバイアス、変数を特定化する際の分析者の主観性、実証モデルの選択、検証結果の解釈の問題が含まれる。こうした限界を克服するためには、検証手続きの精緻化、適切な統計手法の適用とともに、他の研究方法とのコラボレーションが重要になると考えられる。

■■ 統一論題報告(3) : 田口聡志氏(同志社大学)「管理会計における実験研究の位置付けを巡って」
本報告では、管理会計における実験研究の方法論的な意義を整理すると共に、管理会計研究をより豊かにしていくために実験が担っていくべき役割について検討を行った。実験研究は、(1)データのハンドリングが容易、(2)事前検証が可能(意図せざる帰結の発見が可能)、(3)内的妥当性が高い、という優位性を持ち、また、2つのタイプがある(複数人間の意思決定を取り扱いメカニズムの検証が得意な経済実験と、個人単体の意思決定を取り扱いヒトの心理バイアスの検証が得意な心理実験)。管理会計では、主にマネジメント・コントロールの領域で実験が用いられ、また、特に心理実験のウェイトが高い。今後は、心理実験と経済実験との融合を図り、また、他の研究手法と良好なコラボレーションを図っていくことが望まれる。

■■ 統一論題報告(4) : 木村彰吾氏(名古屋大学)
「管理会計研究における質的研究方法論の意義:実務とのインタラクション」
本報告では、質的研究方法(Qualitative Research)あるいはフィールドワークと位置づけられるCase Study、Action Research、Ethnography、Grounded Theoryを取り上げ、その意義について管理会計研究目的に関わらせて考察した。 McKinseyが会計のマネジメントへの役立ちを体系化することを意図して著した「管理会計(Managerial Accounting)」を管理会計の原点と位置づけると、管理会計研究の原点は、管理会計実践を観察し体系化すること、そして管理会計手法を開発することであることを説明した。このように理解すると、質的研究方法は、管理会計技法の発見、新しい管理会計手法の開発、管理会計技法の運用にかかわる発見、管理会計プロセスの記述・説明・分析という貢献をなしたと言える。その一方で、理論の普遍化への制約や学術的厳密さの欠如という限界もあることを指摘した。こうした考察を踏まえて、実務との適度な距離感を保ちながら、マルチ・メソドロジーにより学術的厳密さを向上させる必要があることをまとめとして主張した。

■ なお、次回の日本管理会計学会年次全国大会は、立命館大学にて2013年9月13日(金)~9月15日(日)開催される予定である。

年次全国大会準備委員会  委員長 白銀良三(国士舘大学)

2011年度 年次全国大会記

統一論題「管理会計研究の現状と課題」

■■■ 日本管理会計学会2011年度全国大会(大会準備委員会長:水野一郎氏)は、2011年10月7日(金)から9日(日)の日程で、関西大学千里山キャンパスを会場として開催された。

2011年度 年次全国大会プログラム 前半  後半

1日目は学会賞審査委員会、常務理事会および理事会がそれぞれ開催された。学会賞審査委員会の厳正な審議の結果、2011年度の学会賞は下記の受賞者の方々に贈られることとなった。統一論題は、日本管理会計学会創立20周年を記念して「管理会計研究の現状と課題」というテーマが設定され、小倉昇氏(青山学院大学)を司会として、2日目の午後に3名の会員の研究報告が、3日目の午後に討論が行われた。

■■ 功績賞
青木茂男氏(茨城キリスト教大学)   古賀勉氏(福岡大学)    坂口博氏(城西大学)

■■ 文献賞
■ 櫻井通晴氏(城西国際大学)
受賞業績: 『コーポレート・レピュテーションの測定と管理 ―「企業の評判管理」の理論とケース・スタディ―』同文舘出版,2011年。

■■ 奨励賞
■ 呉 重和氏(大阪大学大学院)
受賞業績:「報酬契約における非財務指標の役割」『管理会計学』第19巻第1号,2011年3月,35?56ページ。
■ 山口朋泰氏(東北学院大学)
受賞業績:「実体的裁量行動の要因に関する実証分析」『管理会計学』第19巻第1号,2011年3月,57-76ページ。

■■■ 統一論題報告
まず、研究報告に先立ち、司会の小倉氏から、今回の統一論題のテーマ「管理会計研究の現状と課題」についての主旨説明があった。管理会計学会が創立した1990年代は、ABCやABM、EVAやバランスト・スコアカード、原価企画の再評価など、新しい話題が豊富であったが、最近ではマテリアル・フロー・コスティング以外あまり新しい話題がない状況にある。それゆえに2010年代は第2のレレバンスロストの時代を迎えつつあるのかどうかを検討し、もしそうでなければ1990年代以降いろいろな方向に拡張した管理会計がどこに進もうとしているのかを会員の皆さんに考えてもらう場を提供するために、この統一論題のテーマを設定した旨を小倉氏は説明された。

■■ 統一論題報告(1) :伊藤和憲氏(専修大学)「バランスト・スコアカードの現状と課題:インタンジブルズの管理」
伊藤氏は、企業価値創造の重要な部分であるインタンジブルズの管理にバランスト・スコアカードはどのように利用できるのかという問題意識のもと、①人的資産、情報資産、組織資産からなるインタンジブルズの測定と管理をいかにすべきか、②3つのインタンジブルズは因果関係を持たせるべきなのか、それとも個別に検討すべきなのか、③市場創造するような戦略策定を支援するインタンジブルズの構築をどのようにすべきか、という問題提起をされた。伊藤氏は、学習と成長の視点に焦点を絞り、またインタンジブルズの管理と戦略の関係を戦略目標アプローチ、戦略実行アプローチ、戦略策定アプローチという3つのタイプに区分して、それぞれについて事例を紹介し、上記の問題提起の内容を説明された。最終的なまとめとして、①人的資産には人的資産開発プログラムを用いたレディネス評価が効果的であり、これを応用したインタンジブルズ構築プログラムがインタンジブルズの管理に有効であること、②戦略目標アプローチ、戦略実行アプローチ、戦略策定アプローチの3つのアプローチごとに対応するインタンジブルズの管理が異なること、③インタンジブルズの人的資産、情報資産、組織資産は、それぞれに個別に管理するのではなく、因果関係を持たせて管理する必要があること、を示された。

■■ 統一論題報告(2): 窪田祐一氏(大阪府立大学)「組織間コストマネジメント研究の展開」
窪田氏は、約20年が経過してきた組織間コストマネジメントに関連する国内外の先行研究をレビューし、組織間コストマネジメントの研究の展望のひとつとして、製品開発(原価企画)中心の組織間コストマネジメントからサプライチェーン(ビジネスモデル)全体の組織間コストマネジメントへと研究対象を拡大する必要あることを提示された。また、グローバル化によるサプライチェーンの変化、サプライチェーンの複雑化、サプライヤー管理の変化といった日本企業のサプライチェーンの変化を踏まえ、サプライチェーンの競争力を構築・維持するには、組織間コストマネジメントを有効に機能させる必要があり、そのためには、組織間コストマネジメントを戦略的コストマネジメントとして、パートナー選定プロセスを中心とした構造的コストマネジメント、並びに業績評価とマネジメント・プロセスの遂行的コストマネジメントという2側面からの研究課題の解明が求められると主張され、この点が2つめの研究の展望として提示された。

■■ 統一論題報告(3) : 藤野雅史氏(日本大学)「行政経営改革は管理会計研究に何をもたらしたのか」
藤野氏は、公的部門の管理会計研究として、公的部門における近年の行政経営改革の中で登場してきた業績管理と予算編成がリンクされる業績予算を取り上げられ、業績予算には、アウトカム(業績)によって資源配分を決定できず、予算編成の単位と業績測定の単位に不整合があるなどの問題点があるにもかかわらず、業績予算がなぜ推進されてきたのか、また業績予算は行政経営改革の中でどのように機能するのかについて報告された。事例として、日本における業績管理と予算編成のリンクが初めて行われた第1次小泉内閣当時の予算制度改革、および民主党への政権交代後の予算制度改革が紹介された。この2つの予算制度改革の分析を通して、第1に、小泉内閣当時の諮問会議を設置したトップダウンの意思決定による予算編成や政権交代後の予算編成プロセスの公開といった予算制度改革が意図せざる結果として予算編成にかかわるプレーヤの分散化を生みだし、しかもシステムの整備自体が目的化したこと、第2に、業績予算と予算編成のリンクは官僚制多元主義のもとで整備されると同時にそれを強化していき、予算編成プロセスへの内閣や与党議員の直接介入など政治的アカウンタビリティを高めるために動員されたこと、を示された。 これらの報告を受けて、3日目の午後に統一論題の討論が行われた。討論に先立ち、コメンテーターの河田信氏(名城大学)から、管理会計をツールとしての管理会計とマネジメントのしくみ作りとしての管理会計に大別すると、20世紀に多かったのはツールとしての管理会計であるが、21世紀に有効性を持つのはしくみ作りとしての管理会計である点が強調され、3つの報告はしくみ作りという視点からの報告であったとコメントされた。 討論では、戦略の定義の確認、バランスト・スコアカードとマネジメントの関係、業績予算の定義の確認や日本で業績予算は行われているか、などについて質疑応答があった。 最後に、司会の小倉氏は、河田氏が提起されたツールとしての管理会計としくみ作りとしての管理会計の視点から、今回の統一論題の報告と討論が会員の皆さんに今後の管理会計研究の発展を考えてもらう「引き金」になったのであれば幸いであるとまとめられた。

■ なお、次回の日本管理会計学会年次全国大会は、国士舘大学にて開催される予定である。
北島 治(関西大学)

2010年度 年次全国大会の大会記

統一論題 「コントロール機能としての管理会計」

■■日本管理会計学会2010年度年次全国大会は、早稲田大学を会場として、2010年9月3日(金)から5日(日)までの日程で開催された(大会準備委員長:佐藤絋光氏)。大会の構成は、自由論題報告、記念講演会、統一論題報告、および統一論題シンポジウムであった。大会参加者は総勢308人であった。
1日目は学会賞審査委員会、選挙管理委員会、常務理事会、理事会が開催された。学会賞審査委員会の厳正な審議の結果、2010年度の特別賞は門田安弘氏(目白大学)、功績賞は石崎忠司氏(中央大学)、文献賞は大下丈平氏(九州大学)、論文賞は安酸建二氏(近畿大学)に贈られることとなった。2日目の午後から3日目の午前中にかけては役員選挙の投票が行われ、浅田孝幸氏(大阪大学)が次期会長に選出された。また、2日目の18時からは会員懇親会が大隈ガーデンハウスで開催され、非常に多くの参加者があり盛会であった。

■■自由論題報告
2日目と3日目の午前中には、自由論題報告が行われた。自由論題報告では、総勢55名による44件の報告が行われた。このうち、2日目午前中に6会場で23件、3日目午前中に6会場で21件の報告が行われ、報告者とフロアの間で活発な議論が展開された。なお、記念講演、統一論題報告および討論、自由論題報告の各報告は、日本公認会計士協会の継続的専門研修制度におけるCPE認定研修(CPE認定コード:511199)として承認された。

■■記念講演会
2日目の午後には、伊藤嘉博氏(早稲田大学)を司会として、貫井清一郎氏(アクセンチュア株式会社)により、「企業経営におけるコントロールと管理会計の役割」というテーマで記念講演が行われた。
講演において、貫井氏はまず管理会計のユーザーを意識することが重要であり、管理会計のユーザーは’経営管理者’であると唱えられた。その上で、貫井氏は経営管理者のコントロールという観点から、ストラテジーエクセレンスの要因である「グローバル化」と「サステナビリティ/社会インフラ」への経営者の意志が近年多々見られることを、ユニクロをはじめとした様々な企業の例を取り上げながら、解説を行われた。加えて、ストラテジーエクセレンスにおいて一番重要な力がコラボレーション力であり、コラボレーションを促進するための「共通言語」、「将来情報」、「コミットメント」といった要件に対して、ルール・ロジック・プロセスの標準化などが管理会計に求められていると指摘された。
貫井氏はまた、アクセンチュアの近年のレポートによって、CEOは自社の財務・経理組織にこれまで以上に多くの付加価値をもたらすことを求める一方で、CFOは価値創造を推進させる戦略的業務へより多くの時間を費やすことを望んでいることを指摘された。さらに、CFOはグローバリゼーションがもたらす最大の恩恵は、様々なソーシングの選択肢を活用して地球的規模でさらなる価値創造に役立てられることだと考えていること、競争圧力と経済情勢の影響によって低コストの業務モデル採用が財務・経理組織に急務となっていることを指摘された。加えて、財務・経理において社員がアイデアを共有できる機会が実際には与えられていないなどの、日本企業における財務・経理の人材確保と育成に向けた取り組みの実態を、アクセンチュアのレポートをもとに示された。
以上を踏まえて、貫井氏は、今後の企業の成否を握るのは「(広義の)システム」と「人材」であり、これらに対して、即戦力を生み出す大学教育や、アカデミズムによる『標準』の定義・改訂、継続的な進化のための産学協同が果たす役割は大きいとまとめられて、報告を終了された。

■■統一論題報告
記念講演会に引き続いて、原田昇氏(東京理科大学)を座長として、「コントロール機能としての管理会計」というテーマのもとで、鈴木孝則氏(早稲田大学)、椎葉淳氏(大阪大学)、関口善昭氏(SAPジャパン株式会社)、大下丈平氏(九州大学)の4名による統一論題報告が行われた。

■■統一論題報告(1) : 鈴木孝則氏「内部統制報告制度における情報システムの意義」
鈴木氏は、まず金融商品取引法による内部統制報告制度の導入に対応して、多くの企業で内部統制の整備・運用の一環として、あるいは、これを契機としてITの投資が活発に行われていることを指摘された。また、企業会計審議会の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について」において、「内部統制の基本的要素」として、COSO(トレッドウェイ委員会組織委員会)の「内部統制の構成要素」5要素に加えて、「IT(情報技術)への対応」が謳われていることも指摘された。このような背景を踏まえた上で、鈴木氏はプリンシパル・エイジェントモデルを用いて、「株主が経営者に営業努力と統制努力の自発的発現を促し、かつ、コンプライアンスのための強制監査に対応する」という均衡が存在するための条件を見出し、その条件下において営業情報システムや統制情報システムが担う役割を調べることを行うと述べられた。
鈴木氏は次に、モデルを用いた分析の結果、まず監査コスト基準が特定の値未満であれば、正の統制努力によって、営業努力の私的コストが通常以上になったとしても、株主に正の期待利得を与えるような均衡が存在することを示された。そして、その均衡の持つ性質のうち、顕著な特徴が期待されるものに関して行った比較静学分析の分析結果を鈴木氏はあげられた。具体的には、企業に導入されている各種情報システムのノイズに極端な差異がないとすれば営業情報システムへの投資を先行させることが無難であること、監査コスト基準値が上昇すると監査コストの増加を抑えようとする株主の意図がインセンティブシステムを通じて経営者に働きかけ、大きな統制努力を引き出すことができること、さらなる規制強化が予測される場合に、すでに規制の進んだ環境にある企業ほど営業情報システムに投資する効果が期待できることなどが示された。これらの結果により、実務の現状を説明(あるいは予想)している可能性のあるいくつかの知見を得られたと最後にまとめられて、鈴木氏は報告を終了された。

■■ 統一論題報告(2): 椎葉淳氏「比較会計制度分析:コントロール機能の一つの分析視角」
椎葉氏は、まず近年のミクロ経済学分野、特に契約理論に基づく研究成果を参照にしつつ、「会計」を比較制度分析と呼ばれる分析手法に従って考察することの重要性について議論した上で、比較会計制度分析と考えることのできるいくつかの研究の紹介をするとし、報告の具体的な内容に入られた。
椎葉氏は、まず制度とは経済活動を行う上で使われる様々な仕組みの総称であり、市場メカニズムだけでなく、法的な制度、慣習、組織、規則など、経済活動を行う上で前提となり、経済活動を規制する全てを含んだものであると定義された。このような制度の組み合わせは経済システムと呼ばれることになる。よって、比較制度分析とは、経済システムの違いがなぜ存在するのか、その違いは解消されるべき性質のものか、それとも多様性から生じる利益が存在するのか、異なるシステムが相互作用する場合にどのような結果がもたらされるのかなどについて体系的な分析を行うものを表すと椎葉氏は定義された。その上で、比較制度分析において、考察対象とする経済システムに会計に関する制度が含まれており、かつ会計に関する制度が含まれた経済システムを考察するときに生じる独自性を考慮している時、そのよう分析が比較会計制度分析とされることを示された。
次に、椎葉氏は比較会計制度分析への道程として、会計の分析手法としてミクロ経済学、特に契約理論がどのように進展してきたのかの説明を行われた。ここであげた契約理論とは、「非対称情報・契約の不完備性の下でのインセンティブ設計の経済理論」と定義される。現在では、契約理論を応用した会計研究は北米における主要な分析的研究の一つであるが、例えば権限委譲を含んだ組織構造の選択や、企業内・企業間での黙示的契約、さらには法律などを外生的に扱っており、それらの問題を同時に考慮することは希とされている。しかしながら、特に管理会計の分野では、他の組織的・戦略的な要因まで含めて原価管理やコスト・マネジメントの問題を考察することや、株価や非財務指標あるいは非金銭的な動機なども考慮して業績評価の問題を考える必要があると言える。 そのため、対象とする問題に対して企業組織において会計を含んだ複数の制度が利用されている場合、その相互関係を考慮して分析する必要がでてくることになり、ここに比較会計制度分析の重要性があると椎葉氏は主張された。このような比較会計制度分析の必要性を示す例としては、コンビニ会計のケースや経営者報酬の実際が取り上げられた。また、比較会計制度分析の研究例として、マネジメント・コントロール、経営者報酬契約と保守主義会計、組織間関係と会計情報の特性、会計基準のコンバージェンス(アドプション)をあげられた。
最後に、椎葉氏は今後の研究の方向性の研究視点として、(報酬契約などの)研究者が注目する制度を中心に、(保守主義会計などの)それに関係する制度を同時に考慮して、その相互関係が(超過報酬などの)パフォーマンスに与える影響について検証することをあげられた。また、今後の研究方法として、方法論としての「組織の経済学」に対する正確な理解をあげられ、理論分析を行う研究者と事例やデータによる分析・検証作業を行う研究者との共同研究の推進を提案されて、報告を終了された。

■■ 統一論題報告(3) : 関口善昭氏「性悪説に基づく内部統制の限界とIT統制の最新事情」
関口氏は、まず、米国の統計によればほとんどの不正が内部統制の不整備または機能低下から発生していることなどをあげて、企業の不正の対策は摘発でなく、兆候を認識した上での早期発見と予防であると主張された。その上で、関口氏は、「経営者によるインターナルのリスク管理」という位置づけに進化してきた近年の内部統制において、その底流に流れる思想は’性悪説’であると強調された。さらに、この’性悪説’は競争力の源泉は人財であるという考え方と矛盾しており、内部統制は従業員の心底からの支持は得にくい状況にあると述べられた。これを踏まえると、人間は生まれながら弱い動物であり、”魔が差す”場合がありうるという”性弱説”に基づき、魔が差さない制度、プロセス、システムを構築し、従業員と家族を守るのが内部統制の本来の目的であるとする方が納得できると関口氏は唱えられた。
次に、関口氏は、SAPによる最新のIT統制では、不正を働く機会を低減させ、性弱説に基づいた魔が差さない仕組みを実現できるようになってきていることを説明された。具体的には、SOD(Segregation of Duty)リスクを低減させるため、財務諸表の信頼性を棄損するリスク並びにそのリスクを生じせしめるよろしくない権限の組み合わせが事前定義・実装されていて、ユーザー1人1人が持つ権限の塊を自動的に突合し、高いリスクが生じている従業員を自動的に洗い出すことができるようになっている。また、是正措置が取られるまでの間にその良くない組み合わせが実行されてしまった場合には、リアルタイムでアラートがシステム管理者に飛ぶ仕組みが出来上がっていること、権限を付与する段階で、本当にこの人にその権限を与えても高いリスクが生じないのかどうかを事前に分析すること、特権ユーザーが権限を行使した場合の履歴管理も可能な体制になってきていることも具体例をもとに示された。
また、関口氏はブッカンのコントロール論のフレームワークについて述べられた。そして、このフレームワークを踏まえた、リスク情報の一元管理、リスク管理から戦略管理へのリスク情報の伝達、財務情報・非財務情報・リスク情報を関連する戦略とリンク付けすること、各戦略の各々の施策(イニシアティブ)毎の達成率・リスク量等を把握することを可能とするSAPの最新ソリューションを説明された。
最後に、管理会計の数字をベースに経営の意思決定や業績評価が行われるので、その数字の正確性、信頼性、網羅性を担保する必要があるのは言うまでもないことであり、それを支えるのが内部統制の役割の1つであると関口氏は指摘された。そして、管理会計は「過去」から「現在」の結果情報に基づいているだけでなく、国際財務報告基準(IFRS)が適用されれば「将来の」見通し情報に基づくことになることを述べられた。ゆえに、将来的にIFRSが適用されれば、経営管理指標と管理会計へのインパクトがでてくることが予想されることから、今後は内部統制に係る学会、諸団体と日本管理会計学会とのさらなる連携が必要になることを主張されて、関口氏は報告を終了された。

■■ 統一論題報告(4) : 大下丈平氏「ガバナンス・コントロールの理念と方法 ‐内部統制論議 を手掛りにして‐」
大下氏は、近年においてコーポレート・ガバナンスの一環として内部統制が世界的に法制化され、それに伴って内部監査の重要性がクローズアップされていること、そうした内部統制の法制化を契機に伝統的なマネジメント・コントロールの領域でもリスク・マネジメントや価値創造の視点から新しいフレームワークの構想があることをまず述べられた。その上で、日・米・仏の国際比較を通して、内部統制を介したコントロール論へのガバナンス概念の包摂とその帰結の意味内容を明らかにしたうえで、ガバナンスをコントロールする可能性を考察することを本報告の目的とすると述べられた上で、報告の具体的な内容に入られた。
大下氏はまず、石油危機以後の日米の経済関係の背景を踏まえた上で、米国ではコーポレート・ガバナンスの要請から1992年にCOSO『内部統制の統合的枠組み』がまとめられたと述べられ、さらにCOSO『内部統制の統合的枠組み』の意義について2つの論点をあげられた。1つ目はマネジメント・プロセスからコントロールと監査の要素(リスクの評価、統制活動、監視活動)を抽出して内部統制を形成させるということであり、2つ目の論点は1つ目の論点であげた内部統制概念がガバナンスをも包み込むというものである。これら2つの論点へのコントロール論の対応について、米国ではコーポレート・ガバナンスを契機とした内部統制論の新展開、内部統制論からリスク・マネジメント論さらにはERM(企業全体リスク・マネジメント)論への展開が見られること、ガバナンス概念はステークホルダー志向、価値概念は株主価値志向になっていることを大下氏はあげられた。これに対し、フランスにおける対応は、内部統制を介したコントロール論へのガバナンス概念の包摂と、リスク管理と価値創造を軸としたコントロール論の新展開が見られること、ガバナンス概念はステークホルダー志向、価値概念は(社会的な)付加価値志向になっていることを大下氏は示された。
次に、大下氏はガバナンス・コントロールの可能性として、内部統制評価と内部監査の新しい展開について述べられた。これは、外部からの内部統制の強制的な制度規定は各企業独自のコントロール・システム(及び監査システム)の設計と運用を要請し、いったん構築された内部統制システムはリスクと価値創造のマネジメントを軸にした「ガバナンスのコントロール」に向かうことになるということである。その上で、大下氏は、米国におけるガバナンス・コントロールの理念は株主・投資家の立場から管理会計論、コントロール論へのあるべき方向を模索する企業価値・株主価値アプローチであり、一方でフランスにおけるガバナンス・コントロールの理念は、米国型の理念を取り入れつつも、取締役会によるCEOへのモニターの支援を通して、企業の利害関係者へのアカウンタビリティの遂行を支援することを目指すものであると述べられた。これら2つの理念は、ともにERMと価値創造マネジメントを支援することを通して、内部からガバナンスをコントロール(規律づけ、支援)するものであると主張された。さらに、2つの理念を前提としたうえで、わが国が現時点において取るべき基本的な方向性は何か、それを支えるガバナンス・コントロールの理念は何なのかという問題提起を大下氏は行った。そのガバナンス・コントロールの具体的な方法の例として、マネジメント・コントロールはコーポレート・ガバナンスの手段として位置づけ、ガバナンスを支援する方向でのコントローラーの役割を拡大することなどを挙げられた。
結びとして、本報告において、大下氏は内部統制の評価とその監査の制度化を機に、伝統的なマネジメント・コントロールの仕組みである「下降3層構造(マネジメント・コントロール・監査)」と、内部統制を解して下降3層構造とつながりつつも、ガバナンス機構の規律付け・支援を行う「上昇3層構造(ガバナンス・内部統制・内部監査)」を抽出したと述べられた。また、内部統制の制度化を契機に、コントロール・管理会計がガバナンスを規律付け、支援する仕組みをガバナンス・コントロールとして提案したと述べられた。さらに、大下氏は、新たに制度化された内部統制こそ外から捉えられたコントロールや管理会計のシステムそのものであり、内部統制の制度化を契機にガバナンスのレベルにおいて、つまり社会的・公共的な視点からもこれらのシステムが活用される可能性が生まれたということを指摘した。加えて、現時点でわが国の政治・財政、経済、社会に持続可能性を与えるための方法としては、知識社会に適した技術革新と新しい産業構造の構築を目指し、経済、社会、政治のバランスの取れた市場社会の形成を進めるしかなく、こうした理念・方策を後押しするために管理会計学・コントロール学からリスクと企業価値創造のマネジメントを支援するガバナンス・コントロールの可能性を提案したと述べられて、大下氏は報告を終了された。

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3日目の午後は、原田氏を座長として、鈴木氏、椎葉氏、関口氏、下氏の4名をパネリストに、コメンテイターとして山本達司氏(名古屋大学)を迎えて、統一論題シンポジウムが行われた。 山本氏は、2日目の各報告者の報告の要約と、それぞれの報告内容に対する質問を述べられた。まず、鈴木氏の発表に対して、モデルにおける変数の関係、分析結果のdriving force、統一論題に対するメッセージは何なのかという質問を行われた。椎葉氏の発表に対しては、比較制度分析は契約理論とゲーム理論に大きく依拠しているが、プレイヤーが制度の中で戦略を実行し、異なる制度の社会的厚生を比較するのか、制度改正についての提言はあるのか、管理会計における比較会計制度分析において今後期待される分析方法は何か、コントロール機能として管理会計を考えた場合にどのような制度が重要と考えられるのかといった質問がなされた。また、関口氏の発表に対して、性弱説に立て ば防止できなくて性悪説に立てば検知できるリスクはないのか、そのリスクが重大であるときには性弱説に立つ内部統制は充分なのか、IFRS導入によって不正防止・検知システムにどのような影響が及ぼされるのか、IFRS導入によりコントロール機能としての会計の重要性は高まるのかといった質問を行われた。最後に、大下氏の発表に対しては、日本企業における内部監査は有効に機能しているのか、もしそうでなければどのような改善策があるのか、ガバナンス概念がコントロールに包摂されることによって管理会計が想定する利害関係者に変化があったのか、管理会計においても明示的に株主を第一の利害関係者と意識されるようになったと考えられるのかといった質問がなされた。これらの質問に対する報告者の解答が行われたのち、さらにフロア参加者による質問も行われ、活発な議論が展開された。

■なお、次回の日本管理会計学会年次全国大会は、関西大学にて開催される予定である。

※本大会記は、日本管理会計学会2010年度年次全国大会の研究報告要旨集、各報告の当日配布レジュメ、当日の各報告内容をもとに作成しました。

矢内一利氏 (青山学院大学 )