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2015年度 第1回 国際学会参加費の助成について(公募)

日本管理会計学会会員各位

会員の国際的活動を支援する一環として,標記の件について, 下記の要領で公募いたします。

■ 助成対象 ■
管理会計に関連する海外の学会(2015年5月1日から2015年8月31日の間に開催 される学会)において,研究発表をする場合または当該学会と本学会との交流を促進するため活動を行う場合。

■ 助 成 額 ■
航空運賃(往復)が5万円未満の場合には全額を,航空運賃(往復)が5万円を 超過する場合には,5万円にその超過額の1/2を加算した額を助成する。ただし1件あたり10万円を限度とし,予算総額は年間20万円とする。

■ 応募方法 ■
別紙書式に学会開催要項等を添付し,学会事務局に送付すること。
書式(Ms-Word2003:文書名「2015rsdEntrySheet」)は ここをクリックしてダウンロードしてください。

<学会事務局>
〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1
早稲田大学大学院会計研究科 清水孝研究室内
日本管理会計学会事務局 宛
e-mail:jama-infoあっとsitejama.org (あっとを@に置き換えてください)

■ 応募締切■
2015年3月31日《期日厳守》

■ 選考方法 ■
選考委員会で選考し,常務理事会(2015年4月開催予定)で決定する。

なお,2015年度の2回目の公募は,2015年9月1日から2016年3月31日に開催される学会に対して,募集時期:2015年5月末,応募締切:2015年7月末を予定しています。

2014年度 第1回リサーチ・セミナー開催記

2013research_1.jpg■■ 2014年度第1回リサーチ・セミナーは、2014年11月1日(土)に名古屋大学大学院経済学研究科第1会議室において開催された。今回のリサーチ・セミナーは、近年、管理会計分野でも係わり合いがでてきた行動ファイナンス分野の研究方法論の紹介と研究報告という2部構成で行われた。日本管理会計学会の木村彰吾副会長からの開会の挨拶の後、加藤英明氏(名古屋大学大学院)の講演および山本達司氏(大阪大学大学院)の研究報告が行われ、いずれも参加者から活発な質問や意見があり、有意義な議論が展開された。

■ 【講師】加藤英明氏(名古屋大学大学院経済学研究科教授)
「行動ファイナンスへの招待」
加藤英明氏による講演では、「行動ファイナンスへの招待」と題して、行動ファイナンスの研究方法論について解説していただいた。講演ではまず、伝統的なファイナンス論を代表する概念や理論について言及した後、それらに問題点やアノマリーが存在することを既存研究の紹介を交えながら説明された。そして、非合理的な投資家や経営者の存在に着目し、行動ファイナンスの考え方を用いてファイナンス理論を説明する方法について解説された。最後に、非合理な行動を説明する可能性のある代理変数などを例示するとともに、現在の研究の流れや今後の研究課題について述べられた。

■【報告者】山本達司氏(大阪大学大学院経済学研究科教授)
Prof. Tatsushi Yamamoto (Osaka University), Prof. Katsuhiko Muramiya (Osaka University) and Prof. Takashi Yamasaki (Kobe University)
“Stock Crash and R-squared around a Catastrophic Event: Evidence from the Great East Japan Earthquake”
山本達司氏は、財務報告の曖昧さがクラッシュリスクに与える影響について、モデル設定と実証分析の観点から報告された。山本氏はまず、株価暴落のリスクを示すクラッシュリスクについて説明され、株価暴落に影響を与える要因の一つとして企業の外生的要因に着目し、外生的要因によるクラッシュリスクに関心があることを説明された。次に、先行研究の紹介をした上で、本報告におけるモデルと仮説の設定および分析について説明された。本報告では外生的要因(ショック)として東日本大震災を取り上げており、財務報告の曖昧さが高まるほど、自然災害などの外生的要因が起こった際には、クラッシュリスクがより高まることを実証的に明らかにしている。最後に、本報告のインプリケーションとして、投資家に対しては財務報告の曖昧さが高い企業ほど株価のクラッシュが起きやすいことを注意喚起でき、また、経営者に対しては普段から透明度の高い財務報告を行うインセンティブを与えることができるとまとめられた。

楠 由記子(青山学院大学)

2014年度 第2回 関西・中部部会 開催記

■■日本管理会計学会2014年度第1回関西・中部部会が、2014年11月15日(土)に関西学院大学上ケ原キャンパス G号館(兵庫県西宮市)にて開催された(準備委員長:徳崎進氏(関西学院大学))。今回の部会では、中国・四国・北陸・中部などのほかに、関東からご参加下さる方もおり、参加者は全体で21名であった。いずれの報告でも、研究報告の後には活発な質疑応答が行われた。

■■統一論題関連セッション「経営情報とマネジメント」
■第1報告 伊佐田 文彦氏(関西大学)
「企業の社会性と収益性に関する予備的研究:電機業界の事例をもとに」
本報告は、民間企業が行っているサステナビリティ活動が、長期的に企業収益に貢献しているか否かを実証的に調査したものである。企業が行うCSR活動と企業収益との関係については、これまで様々な研究が行われてきたが、その結果は、正の相関とするものから、負の相関、そして無相関とするものまであり、全くのばらばらであった。伊佐田氏は、この先行研究の様々な結果はCSR活動の中には企業収益に貢献する活動もあれば、そうでない活動も含まれているからである、との考えに基づき、CSR活動の中でもとりわけ企業収益に直結していると思われるサステナビリティ活動と企業収益との関連性についての調査結果を報告された。

■第2報告 平山 賢二氏(株式会社アットストリーム会長)
「業務改革のためのKPIマネジメント:
業務の可視化および重要業績指標による業務プロセス改革に関する研究」
本報告は、業務プロセス改革の現場において具体的にどのような課題があり、またそれに対してどのような解決が行われているのかについて、実際にコンサルティングを行っている専門家の立場から説明したものである。近年の日本企業の海外進出では、生産活動の移転にとどまらず、生産管理、購買、販売から売掛金の回収まで、現地企業の担当する業務範囲が次第に拡大している。そのような状況では国内事業と海外事業を一体で考えるために業務プロセスを改革する必要がある。平山氏は、この改革を効率的・効果的に進めるためには、効率的・効果的な現状業務の可視化、業務プロセス改革に最適な重要業績指標の設定、および戦略・戦術に紐づいた業務プロセス改革対象業務の抽出、の3要素が重要であると指摘され、また実際のコンサルティング活動で使われている経営ツールの実演も行われた。

■■自由論題
■第1報告 東 壮一郎氏(関西学院大学大学院生)
「半導体企業の設備投資に関する実証研究:日米半導体協定の影響について」
本報告は、日本の半導体企業の設備投資がどのように行われてきたか、特に1986年から1996年まで締結されていた日米半導体協定が日本企業の設備投資にどのような影響を与えたかについて実証的に調査したものである。半導体市場は、40年以上にわたって継続的に成長している、習熟効果による価格低下が激しい、4年程度で好不況が周期的に変化する、技術進歩が激しい、などの特徴を持ち、その結果として継続的な多額の設備投資が必要な市場となっている。東氏は、1986年から1996年まで締結されていた日米半導体協定が日本半導体企業の設備投資の意思決定に与えた影響についての調査結果を報告された。

■第2報告 佐久間 智広氏(神戸大学大学院生) 安酸 建二氏(近畿大学)
三矢 裕氏(神戸大学)
「組織内で行われる実体的利益調整行動:
ビジネスユニットレベルで生じるコストの調整に関する実証研究」
本報告は、企業組織内部のマネージャーが利益調整を行っているかどうかを調査したものであり、三氏を代表して佐久間智広氏が報告された。企業は様々な理由により、利益を増大(減少)させて利益を調整するインセンティブを持っている。このような利益調整行動は、経営者に止まらず、組織内部のマネージャーも行っている可能性がある。例えば、目標設定に前期業績を用いた場合、良い業績を上げた翌期には目標業績が引き上げられてしまう。これを避けるため、組織内部のマネージャーは、目標値を達成した場合、それ以上業績を上げようとはしなくなるかもしれない(ラチェット効果)。佐久間氏は、インストアベーカリー社のデータを調査し、店長がこのラチェット効果に基づいた利益調整行動を行っているかどうかを分析した結果を報告された。

■第3報告 朴 鏡杓(香川大学)
「環境に配慮した製品開発と原価企画:質問票調査による実態分析」
本報告は、原価企画活動において環境コストの考慮を促進する要因を探索し、また環境に配慮した原価企画活動とその効果について分析したものである。原価企画の対象とすべき原価は、理想的には、メーカーとユーザーの双方で発生する全ライフサイクルコストであるにもかかわらず、実際には環境コストはあまり考慮されないことが多い。朴氏は、東証一部上場の機械、精密機器、電気機器、輸送用機器に属する企業への質問票調査を行い、環境コストの内部化にはプロアクティブな企業、サプライヤーとの協力関係、3R設計を重視する企業、といった要因が重要とする分析結果を報告された。

緒方勇(関西学院大学)

2014年度 第3回(第44回)九州部会 開催記

■■ 日本管理会計学会2014年度第44回九州部会が、2014年11月22日(土)に西南学院大学(福岡市早良区)にて開催された(準備委員長:高野学氏(西南学院大学))。今回の部会では、九州以外に関西・関東からもご参加をいただくなど、20名近くの研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

■■  第1報告は、吉田栄介氏(慶應義塾大学)および徐智銘氏(慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程)より、「日本企業の品質コスト志向性:実態調査に基づく探索的分析」と題する研究報告がなされた。本報告は、高品質と低コストの両立を志向するといわれてきた日本企業の管理活動実態について、郵送質問票調査(有効回答会社数130社、回収率15.3%)の結果に基づいて考察を加えたものである。
報告では、4つの仮説((1)日本企業は高品質と低コストを同時的に実現しているのか、(2)日本企業における高品質・低コストの実現と業績管理はどのような関係があるのか、(3)日本企業における高品質・低コストの実現と関係する管理・活動はどのような関係があるのか、(4)日本企業における高品質・低コストの優先性について、どのような全体的傾向があるのか)が提示された。(1)については、高品質と低コストを同時的に実現している傾向があること、(2)については、事業戦略と業績目標、特にプロセス指標との整合性が、高品質・低コストの実現のために重要であること、(3)については、高品質と低コストの実現に対して、多様なコストマネジメントが機能していることが明らかにされた。また、(4)については、品質・コスト志向性に基づいて企業群を4つに分類し、仮説的に発展モデルが提示された。

■■ 第2報告は、高野学氏(西南学院大学)より、「東日本大震災以降の電気事業における総括原価方式の役割」と題する研究報告がなされた。本報告は、電気事業で電気料金総収入を算定する際に、従来から採用されてきた「総括原価方式」が、東日本大震災による福島第一原発の事故により新たに発生した原発事故費用を考慮するようになってから、どのように役割変化がみられたのかについて考察を加えたものである。
報告では、(1)原発被害者への損害賠償の財源となる一般負担金は、新たな営業費項目を追加することによって総原価の中に算入し、原子力事業者の利用者から徴収していることや、(2)福島第一原発の廃炉費用である減価償却費ならびに解体引当金は、その算定方法を変更することにより、廃炉後も総原価の中の営業費に算入することが認められ、電気料金で廃炉費用が回収されていることなどが明らかにされた。

■■ 第3報告は、浅川哲郎氏(九州産業大学)より、「オバマ改革以降の病院マネジメントシステムの変化について」と題する研究報告がなされた。本報告は、アメリカのオバマ政権によって2010年に立法化された医療保険制度改革法(ACA)により、病院規模や病院組織に変化が生じているのか、また、病院の経営形態にどのような変化がみられているのかについて、報告者の現地調査に基づいて明らかにしようとしたものである。
報告では、ACA以前に皆保険を実施したマサチューセッツ州の病院として、マサチューセッツ総合病院のほか、ハーバード大学医学部、ジョスリン糖尿病研究所、ボストン子供病院などが紹介された。そして、(1)オバマ医療制度改革は、米国の医療システムを劇的に変える可能性があることや、(2)マサチューセッツ州では、ハーバード大学の関連病院のような最先端病院においても、時間主導型活動基準原価計算(TDABC)のような原価計算システムを導入し、業務改善を図っていることが示された。

■■  第4報告は、田坂公氏(久留米大学)より、「フルーガル・エンジニアリングと原価企画」と題する研究報告がなされた。本報告は、インドで考案されたフルーガル・エンジニアリング(FE)と原価企画の関連性を検討し、開発の現地化の新たな方向性を考察しようとしたものである。報告は、原価企画とFEの関係性を、(1)支援体制と(2)設計開発プロセスの面から明らかにしている。
報告では、FEは新興国で生まれた手法であるが、先進国への逆輸入まで考えているリバース・イノベーションとは異なると捉え、FEを活用した原価企画は、(1)空洞化には関係していないこと、(2)開発を完全に現地化すれば、ノウハウの技術流出を抑えられること、(3)新製品を新興国市場で生産・販売し成功を収めるための効果的な手段になりうることが、その展望として明らかにされた。

■■ 研究報告会終了後、懇親会が西南クロスプラザ(ゲストルーム)にて開催された。懇親会は有意義な研究交流の場となり、盛況のうちに大会は終了した。

下関市立大学 足立俊輔

2014年度 第2回 フォーラム開催記

■■ 日本管理会計学会2014年度第2回フォーラムが、2014年7月26日(土曜日)に首都大学東京南大沢キャンパス国際交流会館において開催された。細海昌一郎氏(首都大学東京)の司会のもと、濱村純平氏(神戸大学大学院博士後期課程)、山本宗一郎氏(首都大学東京大学院博士後期課程)、伊藤武志氏(株式会社価値共創)、奥村雅史氏(早稲田大学商学学術院)の各氏から報告が行われた。いずれの報告もフロアから活発な質問や意見があり、有意義な議論がなされた。その後、国際交流会館内のレストランに場所を移して懇親会が行われ、盛況のうちに散会となった。各氏の報告の概要は以下のとおりである。

■■ 第一報告 濱村純平氏(神戸大学大学院博士後期課程)
論題:Subsidiary management using multinational transfer pricing

 最初に、国際移転価格に関する先行研究を紹介した上で、この研究領域に関する課題を挙げて本研究の発展的意義を述べている。本研究では、特に、生産ラインが重なっている場合に市場で競争を行う企業がどのような国際移転価格を選択し、それ通じて在外子会社の戦略をコントロールするかについて、モデル分析を行っている。本研究では、最適反応関数を得るようなモデルを採用しているが、バックワードインダクションという手法を用いて、第3段階から遡ってモデル分析を行い、第1 段階の両企業の意思決定について考察している。モデル分析の結果、まず、海外市場を同時手番にした場合に非対称均衡が存在し、異なる国際移転価格、数量を選択するという命題が得られたと報告している。また、国内市場と海外市場で競争を行っている企業が混雑コストを考慮すると、両社が棲み分けを狙うような国際移転価格をつけ在外子会社の戦略を間接的にコントロールすることが示された。すなわち、企業が市場で数量競争を行っている際に、国内市場と海外市場で棲み分けを狙うような国際移転価格をつけ、在外子会社をコントロールすることが示された。 今後の研究課題として、逐次手番の分析と税金も考慮した分析を行うとしている。

■■ 第二報告 山本宗一郎氏(首都大学東京大学院博士後期課程)
論題:国際比較による会計情報の価値関連性に関する研究

 国際的なIFRS導入の流れに従って、わが国でも包括利益が採用されたが、本研究は、包括利益と純利益の価値関連性について研究を行っている。最初に、価値関連性に関する先行研究を紹介した上で、本研究では、先行研究を発展させ、時系列データを用いたパネルデータ分析を行っている点、北米、ヨーロッパ、オセアニア、日本、アジアにおける上場企業の国際比較を行っている点が特徴であることが示された。パネルデータ分析の結果、純利益と包括利益の説明力は、北米、ヨーロッパ、オセアニア、日本、アジアの各地域で有意な結果を示している。国際比較の結果、仮説の通り、欧米では包括利益の方が説明力が高くなった。また、日本においては、純利益の方が説明力が高かったが、Wald検定を用いたBSS testの結果、純利益と包括利益のBSS統計量の値との間に大きな差異は見られなかった。加えて、日本では「その他包括利益」に関する増分情報が、有意な結果であったことが示された。本研究の分析結果は、包括利益の一本化が叫ばれる中で、包括利益の有用性だけでなく、純利益の有用性も示しており、国際的な流れに一つの疑問を投げかけることになると主張した。

■■ 第三報告 伊藤武志氏(株式会社価値共創)
論題:顧客価値ベースの人間尊重経営の実現に向けて

 最初に、伊藤氏は、顧客に対して価値があることとは何かを問いかけた。それに関連して、定量的・定性的な組織目標を組み込むことで、顧客価値を伴った財務価値を生み出すことが重要であると指摘した。その上で、ビジョン・戦略としての顧客価値として、顧客価値の雛形、戦略キャンバスによる価値曲線を図示し、視覚化することを提案している。また、顧客価値が作られる体験のストーリーにより、具体的な顧客に価値が生まれるシーンを疑似体験することによって、顧客価値の創造を理解し改善しやすくなるとしている。さらに、定性的表現を伴う相対的目標を設定することにより、達成したい重要な内容を表現でき、目標が明確化することで、環境変化への対応、戦略的な優位性を示せるとしている。顧客価値のビジョンは、具体的な顧客価値とその裏づけを作ることであり、もし素晴らしい顧客価値のビジョンができれば、財務的な成功と人間を尊重できる経営を維持できる裏付けとなるとしている。以上から、継続的に向上しつづける顧客価値を創造し提供することが、企業の組織成員にとって自信となり、誇りとなり、モチベーションとなる。これが企業におけるより高次の顧客価値ベースの人間尊重経営の実現の姿となると結論付けた。今後の研究課題として、具体的な実証研究による企業事例研究、アクションリサーチによる研究の必要性を挙げている。

■■ 第四報告 奥村雅史氏(早稲田大学商学学術院)
論題:利益情報の訂正と会計情報の信頼性

  本研究は、わが国における利益情報の訂正実態と株式市場に対する利益訂正情報の影響ついて報告している。まず、利益情報の訂正実態については、経常的な企業業績に関連する訂正が多いことを指摘している。次に、利益訂正企業の株価反応に関する分析では、利益訂正額が大きく、訂正対象の範囲が広いほど、株価へのマイナスの反応が大きいこと、意図的な虚偽記載、証券取引等委員会の指摘による場合、マイナスの反応を示すことを明らかにした。また、利益訂正の情報移転分析では、利益の質は運転資本発生項目額が大きいほど伝播効果が強く、投資発生項目額が大きいほど伝播効果が弱いこと、その他、新興市場の場合は伝播効果が強いこと等を明らかにした。最後に、原因別分析では、意図的な虚偽表示であったかによって、結果が大きく異なっていると報告している。特に、意図的な虚偽表示のケースでは、それを原因とした利益訂正が会計情報の信頼性へ影響を与えており、市場が意図的な虚偽記載の発生可能性を評価しているのではないかと述べている。以上から、(1)情報移転は、競争効果ではなく伝播効果が支配的である。(2)利益の質が低い(会計利益とキャッシュフローの差が大きい)場合、市場による利益計上のプレッシャーが強い場合、新興市場の上場企業である場合、競合企業における株価への伝播効果が強い。(3)伝播効果は、主に、意図的な虚偽記載を原因とする利益訂正において生じると結論付けた。

フォーラム実行委員会委員長  細海昌一郎(首都大学東京)