2014年度 第1回リサーチ・セミナー開催記

2013research_1.jpg■■ 2014年度第1回リサーチ・セミナーは、2014年11月1日(土)に名古屋大学大学院経済学研究科第1会議室において開催された。今回のリサーチ・セミナーは、近年、管理会計分野でも係わり合いがでてきた行動ファイナンス分野の研究方法論の紹介と研究報告という2部構成で行われた。日本管理会計学会の木村彰吾副会長からの開会の挨拶の後、加藤英明氏(名古屋大学大学院)の講演および山本達司氏(大阪大学大学院)の研究報告が行われ、いずれも参加者から活発な質問や意見があり、有意義な議論が展開された。

■ 【講師】加藤英明氏(名古屋大学大学院経済学研究科教授)
「行動ファイナンスへの招待」
加藤英明氏による講演では、「行動ファイナンスへの招待」と題して、行動ファイナンスの研究方法論について解説していただいた。講演ではまず、伝統的なファイナンス論を代表する概念や理論について言及した後、それらに問題点やアノマリーが存在することを既存研究の紹介を交えながら説明された。そして、非合理的な投資家や経営者の存在に着目し、行動ファイナンスの考え方を用いてファイナンス理論を説明する方法について解説された。最後に、非合理な行動を説明する可能性のある代理変数などを例示するとともに、現在の研究の流れや今後の研究課題について述べられた。

■【報告者】山本達司氏(大阪大学大学院経済学研究科教授)
Prof. Tatsushi Yamamoto (Osaka University), Prof. Katsuhiko Muramiya (Osaka University) and Prof. Takashi Yamasaki (Kobe University)
“Stock Crash and R-squared around a Catastrophic Event: Evidence from the Great East Japan Earthquake”
山本達司氏は、財務報告の曖昧さがクラッシュリスクに与える影響について、モデル設定と実証分析の観点から報告された。山本氏はまず、株価暴落のリスクを示すクラッシュリスクについて説明され、株価暴落に影響を与える要因の一つとして企業の外生的要因に着目し、外生的要因によるクラッシュリスクに関心があることを説明された。次に、先行研究の紹介をした上で、本報告におけるモデルと仮説の設定および分析について説明された。本報告では外生的要因(ショック)として東日本大震災を取り上げており、財務報告の曖昧さが高まるほど、自然災害などの外生的要因が起こった際には、クラッシュリスクがより高まることを実証的に明らかにしている。最後に、本報告のインプリケーションとして、投資家に対しては財務報告の曖昧さが高い企業ほど株価のクラッシュが起きやすいことを注意喚起でき、また、経営者に対しては普段から透明度の高い財務報告を行うインセンティブを与えることができるとまとめられた。

楠 由記子(青山学院大学)