2017年度全国大会実行委員会からのお知らせ

会員各位

会員の皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
日本管理会計学会の2017年度全国大会まであと3週間を数えるばかりになりました。皆様をお迎えする準備も着々と進んでおります。
8月上旬に郵送にてお知らせしましたものから,プログラムに一部変更がありますので,改訂版を上げさせていただきます。
また,公認会計士協会からCPE研修の単位授与の認定をいただきました。自由論題の研究報告(8月28日・29日それぞれ)に2単位,スタディグループ・産学共同研究グループ報告および特別講演には3単位,統一論題の研究報告には2単位,討論会には1単位をCPEの単位とすることができます。
参加を希望される方は、8月18日(金)までにお振り込みください。多数の皆様が参加していただけますようお待ちいたしております。

■■プログラム(改訂版)
2017_jama_conference_program.pdf

日本管理会計学会2017年度全国大会実行委員会委員長 田坂 公

2017年度第52回九州部会&日本会計研究学会九州部会第100 回記念大会 開催記

■■2017072901.JPG 日本管理会計学会2017年度第52回九州部会が、日本会計研究学会九州部会第100 回記念大会との共催で2017年7 月29 日(土)、九州大学(福岡市東区)にて開催された(準備委員長:大下丈平氏(九州大学))。今回の合同部会では、九州以外に関東や関西からもご参加をいただき、50名近くの財務会計・管理会計・税務会計の研究者、実務家、大学院生の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

■■2017072903.JPG  第1報告は、陳●氏[●は、かねへんにりっとう](九州大学大学院博士課程)より、「自己の信用リスクの変化に起因する金融負債公正価値の変動額を巡る会計処理」と題する研究報告がなされた。本報告は、その他包括利益に計上された自己の信用リスク(報告企業の信用状態)の変化に起因する金融負債の変動額をリサイクリング(実現時に区別された未実現利益を当期純利益に移し替える処理)すべきかについて、FASBとIASBの会計処理方法の比較から明らかにしようとしたものである。
報告者の分析によれば、利益の見方の視点からは、FASBは純利益と包括利益の両方を重視する立場を採用しており、IASBは包括利益の方をより重視する立場を採用している。この相違により、FASBは全面リサイクリングという主張につながり、IASBはリサイクリングする項目を取捨選択すべきという主張につながることを指摘している。

■■2017072904.JPG 第2報告は、黒岩美翔氏(九州大学大学院博士課程)より、「フランスにおける社会的責任戦略コントロールの一考察」と題する研究報告がなされた。本報告は、企業の経済性と社会性の同時追求や、長期的かつ持続可能な価値創造を可能にする「CSR(企業の社会的責任)戦略コントロール」の取り組みについて、Moquet(2010)で紹介されているフランスのダノンとラファージュの2社を題材にして明らかにしようとしたものである。
報告では、ダノンとラファージュのCSR戦略コントロールに関する具体的な制度化プロセスが明らかにされた。報告者によれば、2社の共通点として、会社独自の基準・方針を規定しつつも地方文化に合った目標・実践、行動計画が決定されていることや、イントラネットを活用してベストプラクティスの共有が図られていることなどがあげられる。また、2社の相違点としては、コミュニケーションの場として、ダノンは従業員を中心に位置づけているのに対し、ラファージュは地域住民を巻き込んでいることなどが紹介されている。

■■2017072905.JPG 第3報告は、小谷学氏(熊本学園大学)より、「利益率の分布形状を決定する要因は何か?」と題する研究報告がなされた。本報告は、ROAやROIなどの利益率に関する指標が企業間で格差が生じていることについて数理的な説明が行われていないことに注目し、利益率がどのような分布形状になるのか、その要因は何か、リスクとリターンの規則性は成立するのかを明らかにしようとしたものである。
報告では、Hamada(2004)の個人間の所得分布発生モデルをもとに予測モデルを構築し、その検証を行っており、1980年から2011年までの東証1・2部の企業(金融業除く)の決算データ(20,608サンプル)の総資本利益率を分析した結果が示された。分析結果では、当該利益率は対数正規分布に類似した分布に従うこと、利益率の分布形状は企業の投資意欲により決定されること、投資意欲は投資のリターンとリスク回避度の影響を受けることが明らかにされた。また、当該データの回帰分析を行った結果、利益率についてハイリスク・ハイリターンの関係があることも明らかにされている。

■■2017072906.JPG 第4報告は、篠原巨司馬氏(福岡大学)・福島一矩氏(中央大学)・足立洋氏(県立広島大学)より、「管理会計の整備プロセスに関する研究:A 社のケーススタディに基づいて」と題する研究報告がなされた。本報告は、安定的・持続的経営を実現できている組織において、管理会計の変更(導入・調査)がどのように行われているのかについて、建築資材の製造・販売を主要事業とするA社を対象としたケーススタディである。
報告では、安定的な業績運営を行ってきたA社においても、創業者の退陣といった組織環境の変化により、交渉ベースで決定されていた内部振替価格に基づく拠点別の利益率の報告方法が見直されたことや、拠点間の利益の平準化を防ぐために売上原価率のシステムを自動化させたこと、また、売上の計上基準が工事進行基準から工事完成基準に変更されたことなどが、報告者のインタビュー調査や内部資料などから提示された。

■■2017072907.JPG 第5報告は、末永英男氏(熊本学園大学)より、「法人所得の特質と税務会計」と題する研究報告がなされた。本報告は、大竹貿易事件(最高裁平成5年11月25日判決)以降、法人税法22条4項の収益の額、および原価・費用・損失の額に法人税法独自の解釈基準が示されるようになっていることに着目して、税務会計の計算対象である「課税所得」の前概念である「所得」や「法人所得」の検討を行うことで、税務会計の特殊な位置付けを明らかにしようとしたものである。
報告者によれば、「課税所得」は、「企業利益」から導かれるのではなく、「法人所得」の要請を取り入れた所得であると捉えられている。そして租税法律主義の下、公法的側面と私法的側面の両面から考察されなければならない租税法において、固有概念としての「法人所得」を確認したうえで、さらに「課税所得」を算定するのが税務会計の使命になると結論付けている。

■■2017072902.JPGのサムネイル画像 研究報告会の後、開催校のご厚意により大学生協にて懇親会が開催され、実りある交流の場となった。

足立俊輔 (下関市立大学)

2017年度第1回フォーラムについて

2017年4月15日、国士舘大学において「中小企業における管理会計の展開可能性」というテーマのもと、古園伸一郎氏(日本政策金融公庫)による基調講演の後、川島和浩氏(苫小牧駒沢大学)、本橋正美氏(明治大学)の2名から報告が行われ、最後に井岡大度氏(国士舘大学)を座長にパネルディスカッションが行われた。

基調講演 古園伸一郎氏(日本政策金融公庫)
「日本政策金融公庫と中小企業経営」201701f01.JPG
日本政策金融公庫では中小企業向け融資を行っており、そこで観察される中小企業の経営と会計に関する報告が行われた。そこでは中小企業の経営管理体制には規模による差異が大きく、(1)経理担当者が不足している小規模企業、(2)経理データはあるものの経営管理に活かされていない小・中規模企業、(3)経理データを用いた計画はあるが、予算・実績管理がされていない中規模企業に分類できるとされた。

論題報告(1) 川島和浩氏(苫小牧駒沢大学)
「苫小牧地域の中小企業管理会計の現状と課題―M社を中心として―」201701f02.JPG
北海道苫小牧市の中小企業における管理会計手法の利用について、アンケート結果とヒアリング調査をもとにした報告が行われた。アンケートでは、ほぼすべての企業が何らかの管理会計手法を導入されているが、非製造業における原価管理手法の導入は少ないことが明らかになった。また製造業M社のヒアリング調査では、受注との兼ね合いで会社外の作業が多いため、完全に管理会計手法を用いることは難しいことも明らかになった。

論題報告(2) 本橋正美氏(明治大学)
「中小企業管理会計の前提条件としての中小企業の発展段階説」201701f03.JPG
中小企業で適用される管理会計システムを検討する際に、考慮されるべき発展段階に関する報告が行われた。先ず中小企業の発展段階に関する諸説が紹介され、次にわが国には長寿企業が数多く存在することが報告された。大企業で行われる管理会計システムをそのまま中小企業に適用することはできず、管理会計システムの導入には対象中小企業の発展段階や業種・業態を踏まえる必要がある。そのため、どのような管理会計システムが適用できるかについての類型化が今後の課題であるとされた。

パネルディスカッション
主にフロア参加者との質疑応答が行われた。実際の計数管理の数値例や今後の管理会計システムなどに関して活発な議論が行われた。

国士舘大学 中井誠司

2016年度 第3回フォーラムについて

2016年度第3回フォーラムは、2016年12月17日土曜日に、参加者48名をお迎えし、目白大学新宿キャンパスで開催されました。統一論題の座長を東京理科大学 田中雅康先生にお願いし、演題を「日本の主要企業における原価企画の現状と課題」として、田中先生、(株)リコー グローバル購買本部・VA推進室の渡邉昌俊氏、および、いすゞ自動車(株)原価企画部 VE・評価グループの荻原健一氏の3氏にご報告ならびに質疑応答をお願いしました。
まず、田中先生より統一論題の演題についてのご報告があった後、渡邉氏からは、(株)リコー「VA推進室」にて、原価企画・目標設定・コスト評価・量産以降の取組・他社機分析ならびに人材育成について、組織として原価企画の諸問題に取り組んでいる姿が紹介されました。また、荻原氏からは、いすゞ自動車(株)の「コスト造り込み活動」「コスト低減活動」について詳細な報告があり、トラックの「アイドル(アイドリング)騒音対策」についてのシステムVEについて等、製造現場における具体的な事例が示されました。
質疑応答の時間においては、「書物にある原価企画と現在製造現場で行なわれている原価企画の相違は何か」といった、実務家をお迎えしての統一論題らしい、熱のこもった質疑応答がおこなわれました。懇親会も盛況のうちに終了し、無事日程を終了しました。

20163f1.JPG20163f2.JPG20163f3.JPGのサムネイル画像20163f4.JPG

同フォーラム準備委員長 目白大学 今林正明