2021年度第2回関西・中部部会(Web開催)報告者募集のお知らせ

日本管理会計学会会員各位                2021年7月18日

2021年度第2回関西・中部部会(Web開催)報告者募集のお知らせ

 新型コロナウイルス禍の状況を鑑みて、日本管理会計学会2021年度第2回関西・中部部会(開催校:中京大学)は、先の2021年度第1回部会に引き続き、ZoomによるWeb開催とさせていただくことになりました。つきましては、10月9日(土)午後の開催に伴い、自由論題報告における報告者を募集致します。希望される方は、下記の要領をご参考のうえ、奮ってご応募いただきますようお願い申し上げます。
 ただし、プログラムの都合ならびに希望者数の如何により、ご報告のご希望に沿えない場合もあり得ますことを、予めご了承ください。なお、プログラムの詳細は、後日改めてご案内させていただきます。

                                         

               記

開催日時:2021年10月9日(土)13時30分開始(予定)
ホスト校:中京大学

<応募要領>
1. 締切日:2021年8月22日(日)
2. 応募方法:下記を明記の上、メールにてご応募ください。
  (1)報告タイトルと概要(200~300字程度):
  (2)氏名:
  (3)所属機関:
  (4)職名:
  (5)連絡先:
3. 応募先:中京大学 経営学部 齊藤毅
 t-saito[at]mecl.chukyo-u.ac.jp([at]を半角の@に置き換えてください)

2021年度第2回日本管理会計学会関西・中部部会
準備委員長 齊藤毅

日本管理会計学会2021年度年次全国大会のパンフレットについて

日本管理会計学会会員各位

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 
 日本管理会計学会2021年度年次全国大会 -学会創設30周年記念大会-の開催内容を記載させて頂きました全国大会パンフレットのご案内を申し上げます。今大会は、8月26日(木)、27日(金)、28日(土)の日程で、対面方式(会場集合型)にて、長崎県立大学佐世保校で開催をいたします。
 全国大会パンフレットの会員の皆様へのご郵送によるご案内は、7月28日(水)を予定しております。
 会員の皆様のご参加を心よりお待ちしております。何卒よろしくお願い申し上げます。

日本管理会計学会2021年度年次全国大会 -学会創設30周年記念大会-
実行委員長 宮地 晃輔

 

2021年度年次全国大会パンフレットのダウンロードは、こちら
※ホームページに掲載のパンフレットには、フルペーパーをダウンロードのためのパスワードが記載されていません。パスワードは、後日郵送されるパンフレットをご確認ください。
 

 

2021年度第1回リサーチセミナー開催記

2021年6月20日
大阪大学 椎葉 淳

 2021年度第1回リサーチセミナーは,東北大学が準備委員(準備委員長:木村史彦氏)となり,東北大学との共催で,2021年6月19日(土)14時~16時35分にZoomを用いたオンラインで開催されました。当日の参加者は24名であり,第1報告の司会は木村史彦氏(東北大学),第2報告の司会は松田康弘氏(東北大学)により進められ,日本管理会計学会・副会長の椎葉淳氏(大阪大学)より開会の挨拶が,準備委員長の木村史彦氏(東北大学)より閉会挨拶がありました。
 第1報告は孟繁紅氏(山口大学),第2報告は濵村純平氏(桃山学院大学)でした。また,ディスカッサントとして,第1報告に対しては木村史彦氏(東北大学),第2報告に対しては松田康弘氏(東北大学)から,それぞれ研究内容の要約と研究の改善に役立つコメントが数多くなされました。フロアからもコメント・質問があり,活発な議論が行われました。

第1報告 孟繁紅氏(山口大学)
報告論題:企業のCSR活動が財務パフォーマンスに及ぼす遅延効果に関する実証研究―中国における上場企業のパネルデータ分析―

 第1報告では,中国における上場企業に公表された4年間のパネルデータの重回帰分析を行い,当座比率,1株当たりの利益成長率などの指標を表すCSR活動が財務パフォーマンスに正の影響を与えるか,および遅延効果があるかどうかを検証した。
 ステークホルダー理論に基づくと,企業は株主の要求だけを満たすのではなく,他のステークホルダーの利益も配慮しなければならないと考えられる。その理由は,企業は本質的には企業のすべてのステークホルダーによって構成され,企業の価値の創造もすべてのステークホルダーと直接に関連しているからである。そして,企業は社会的責任の履行を通してステークホルダーからの支持を得て,さらに企業の価値の向上に良い影響を与えると考えられる。また,企業は社会的責任の履行を通してステークホルダーの信頼と支持を得ることを目指しているが,社会的責任を履行してからステークホルダーからの反応を得るまで,情報伝達のプロセスに時間を要するため,CSRの財務パフォーマンスへの影響には遅延効果があると考えられる。以上から,この研究では,仮説Ⅰ:CSR活動は財務パフォーマンスに正の影響を与える,および仮説Ⅱ:CSR活動は財務パフォーマンスに及ぼす影響の遅延効果があるかを検証している。
 実証結果として,本研究で設定したCSR項目のうち,当座比率(QR),資産納税率(TATR)のみが,当期の財務パフォーマンスを向上させ,一年後および二年後の財務パフォーマンスにも正の影響を与えることを明らかにした。

 

 

第2報告 濵村純平氏(桃山学院大学)
報告論題:Disclosure policy for relative performance indicators under product market competition

 第2報告は,寡占競争において,企業は自社の経営者に対する業績評価指標を公表することが望ましいかどうかについて理論的に分析した研究である。
 日本では会社法の改正により,経営者報酬をどのように決定するのか,すなわち経営者がどのように業績を評価されているのかを開示することが求められる。またアメリカでは,proxy statementの公表によってこのような情報開示が求められている。その結果,相対的業績評価に関する情報についても開示することになる。この研究では,このような相対的業績評価の開示に着目して,以下のリサーチ・クエスチョンを設定している。

  1. 企業にとって,相対的業績指標(RPI)を開示することが最適なのか。
  2. 相対的業績指標の開示は,消費者余剰と社会的余剰にどのような影響を与えるのか。

 本研究の主たる結果としては,価格競争ではすべての企業が開示するのが最適になるが,数量競争ではコストが非効率な企業は開示しない方がよいケースもあることが示されている。
 また本研究の含意として,次の3点が指摘されている。

  1. 数量競争の起こっている市場で,競争が緩やかなときには規制のコストをかけて無理に規制しなくても市場に任せればよい。
  2. 数量競争の起こっている市場(車や鉄鋼業など)で,競争が激しいときには強制開示にするのがよい。
  3. 価格競争の起こっている市場(softwareや金融業など)では,開示を止める手立てが必要になる。

 このように,市場の状況に応じて,開示に関する規制を考える必要があることが主張された。

日本管理会計学会2021年度 第1回関西・中部部会 開催記

2021年5月29日|緒方勇(関西学院大学)

■■日付・場所
・日付:2021年5月29日(土)
・場所:Zoomミーティングによるオンライン開催(開催校:関西学院大学)

■■ 日本管理会計学会2021年度第1回関西・中部部会が、2021年5月29日(土)に関西学院大学(兵庫県西宮市)の主催により開催された(準備委員長:徳崎進氏(関西学院大学))。コロナ禍の状況を受け、部会はZoomミーティングによるオンラインで実施された。
 今回の部会は、オンライン開催ということで参加のための地理的制約が無くなったこともあり、中国・四国・北陸・中部などのほかに、関東からも多数のご参加を頂き、参加者は全体で35名であった。いずれの講演・報告でも、発表の後には活発な質疑応答が行われた。

■■ 第一部〔特別講演〕 司会:徳崎進氏(関西学院大学)
講演者:井上浩一氏(日本公認会計士協会(JICPA)本部理事)
講演テーマ:「近年の会計不正の動向と不正調査における問題点」

 本講演は、長年にわたって国際会計教育の推進及び会計プロフェッションによる企業価値や無形資産評価などの高度な実務指針の制定に貢献してこられた日本公認会計士協会(JICPA)本部理事の井上浩一氏をお迎えし、近年の会計不正の動向と不正調査における問題点について御講演頂いた。
 講演では、まず、日本公認会計士協会不正調査専門委員会の活動、及び2013年9月公表の「不正調査ガイドライン」の構成について説明が行われた。「不正調査ガイドライン」とは、現在一般的に不正調査業務で利用されている概念、手続及び手法についてガイドラインとして取り纏めたものである。
 次に、近年の上場会社等における会計不正の動向について、発生件数、不正の類型と手口、業種の内訳、上場市場の内訳、発覚経路や不正の関与者などについて、多数のデータを示しながら説明された。一般に、不正行為は動機、機会、正当化の3不正リスク要因がすべてそろった時に生じると考えられているが、講演で示されたこれらのデータは、この問題を考える上で大いに参考となるものである。
 最後に、日本公認会計士協会(経営研究調査会)が2019年7月に公表した経営研究調査会研究報告第65号「近年の不正調査に関する課題と提言」の内容について解説された。これは、不正調査業務において、「不正調査ガイドライン」が不正調査人に十分尊重されていない事例もあると思われることから、作成されたものである。そこでは、「問題がある不正調査」に関する課題が分かるように事例を創作し、提言として解説している。
 また、より近年のトピックとして、コロナ禍におけるリモート監査・不正調査における問題点についてもご説明された。
 講演の後には、参加者から多くのご質問を頂き、活発な質疑応答が行われた。

■■ 第二部〔研究報告〕 司会:緒方勇氏(関西学院大学)
■ 第1報告
報告者:根本萌希氏(浙江大学博士研究生)、黄英氏(浙江大学教授)
論題:「管理会計におけるコミュニケーションモデルの再提案」
    “Re-proposing the Communication Model in Management Accounting”

 本報告は、管理会計情報が企業の構成員間でどのように伝達されるかという、コミュニケーションプロセスの問題を、記号論の手法で理論化・可視化したものである。
 これまで、会計コミュニケーションに関する研究は、財務会計領域では比較的多く行われてきたが、管理会計領域ではようやく近年になって注目されるようになってきたばかりで、研究蓄積があまりない。
 根本氏は、言語学者Jakobsonのコミュニケーションモデルで示された6つの構成要素(発信者、コンテクスト、メッセージ、接触、コード、受信者)を、管理会計におけるコミュニケーションに適するように修正したモデルを報告された。
 この修正された管理会計情報のコミュニケーションモデルは、管理会計の導入ないし運用における問題点の洗い出し・改善などに役立つものであり、今後は企業ケーススタディなどの実証研究を蓄積することが重要である。

■ 第2報告
報告者:小村亜唯子氏(神奈川大学特別助手)、伊藤大真氏(中央労働金庫)、平井裕久氏(神奈川大学教授)
論題:「予算目標の困難度、達成志向的ワークモチベーション、予算業績に関する定量的研究」

 本報告は、予算目標の困難度と予算業績の間の媒介変数として、ワークモチベーションに注目し、この3つの要素の関係を企業へのアンケート分析により調査したものである。
 これまで、予算目標と予算業績の関係に関わる研究は数多く行われてきたが、あまり一貫した結果は得られていない。
 小村氏は、この一貫性のない研究結果は、予算目標の困難度と予算業績の間をワークモチベーションが媒介しているから、との考えに基づきアンケート分析を行われ、分析の結果、予算目標の困難度は達成志向的ワークモチベーションに対して正の影響を与えること、達成志向的ワークモチベーションは予算業績に対して正の影響を与えること、そして達成志向的ワークモチベーションは、予算目標の困難度と予算業績の関係を部分媒介すること、が判明したことを報告された。
 今後は予算参加やインセンティブシステムなどの要素をモデルに組み込むなどすることが重要である。

 

 

2021年度第1回(第60回)九州部会開催記

2021年度第1回(第60回)九州部会開催記 2021年5月22日(土)13:30~17:15

■■ 日本管理会計学会2021年度第1回(第60回)九州部会が、2021年5月22日(土)13:30~17:15に、開催校の熊本学園大学(熊本市)によってオンライン方式で開催された(準備委員長:新改敬英氏)。今回の九州部会では、オンライン方式ということもあり、全国から40名を超える研究者の参加を得て、いずれの報告においても活発な質疑応答が展開された。

■■ 第1報告は、角田幸太郎氏(熊本学園大学教授)により、「英国プロサッカークラブにおけるマネジメント・コントロールの事例研究」と題する報告が行われた。本報告は、英国プロサッカークラブのオックスフォード・ユナイテッドにインタビュー調査を行い、当該チームで導入されていたマネジメント・コントロール・システム(以下、MCS)と、チーム責任者や選手への影響を分析することにより、既存のMCS理論の説明力やMCS理論の修正の必要性について考察することを目的としている。
 報告者は、小規模なプロサッカークラブでも、個人成績に基づくボーナスを用いた成果コントロールだけではなく、定性的・定量的な行動目標を用いた行動コントロールや、チーム成績に基づくボーナスや罰金制度を用いた文化コントロールも実践されており、MCS理論からみても理想的であると明らかとした。このようなチームスポーツのプロフェッショナル組織では、文化コントロールが重視されており、さらにMCSの有効性を高めるためには、客観性、管理可能性、適時性、公平性を強化することにより、チーム成績の向上へとつながると提言された。ただし、うまく機能していたとされるMCSであったとしても、チーム監督が代われば、一新されてしまい、継続性が保たれない事例も確認され、今後の検討課題であることが示された。

 

■■ 第2報告は、宮地晃輔氏(長崎県立大学教授)より、「公的支援事業を活用した中小企業への利益管理プロセスの定着の可能性」と題する報告が行われた。本報告は、長崎県内企業の事例を用いて、ポストコロナ・ウィズコロナ時代に対応するための公的支援事業である事業再構築補助金(経済産業省)を活用するうえで必要とされた、事業計画書の作成を通じて、中小企業への利益管理プロセス(管理会計能力)の定着可能性を明らかにすることを目的としている。
 報告者は、管理会計の役割として、実務においては、利益管理プロセスを小規模企業に定着させることが重要であると述べ、長崎県内にある小規模企業を対象とした事例研究を報告された。公的支援事業の事業計画書の作成を活用することで、企業の経営者と税理士法人、金融機関の3者による対話を通じて、経営計画策定の基盤を固めることができ、経営者への意識づけにも有効に機能したと示された。これは、税理士法人による小規模事業者に対する経営支援の一つの事例として、税理士法人側の管理会計能力の必要性を示しており、さらに、経営計画策定の意義を経営者が理解し、経営のPDCAを会計的に回転させ、経営品質を高めていくことが、利益管理プロセスの定着につながると提言された。

 

■■ 記念講演は、西村明氏(九州大学名誉教授・別府大学客員教授)により、「リスク・スラック・バランス―企業リスク管理と現代管理会計―」と題する講演が行われた。本講演は、講演者の著書『管理会計の挑戦-リスク・スラック・バランス』(西村,2020)に即して、コロナ時代における、危機管理とリスク管理の中で、管理会計のあるべき姿と変化について紹介された。
 講演者は、企業のリスク管理は、利益機会とリスクを予測し、最適な目標利益を実現するシステムであると明らかにしたうえで、長期と短期の機会を予測し、差異分析をおこなう包括的機会・損失機会統制モデル(Comprehensive Opportunity&Loss Opportunity Control : COLC:コルクモデル)を示した。このモデルでは、差異を解消するためにプロアクティブな改善をおこなうことで、最適な目標利益への到達を目指し、管理会計における利益計画の基礎となり得ることが明らかとされた。さらに、経営者の管理責任を明確にするため、記述情報を分かりやすく開示するものが、このCOLCモデルを基礎とした「戦略リスク管理報告書」であり、リスクに対応するための具体的な対処には、リスク管理面からのスラックの確保が必要であると示された。そして、企業はこのスラックを保有しておくことで、プロアクティブな改善とイノベーションを遂行することができ、企業リスク管理とスラックは切り離すのではなく、結びついて検討しなければならないと提言された。

 

■■ 研究報告会・記念講演会終了後、九州部会総会が開催された。次回の九州部会は、2021年11月に福岡大学にて開催予定である。

水野真実(熊本学園大学)