2024年10月26日(土)13:50~17:00
■■ 日本管理会計学会2024年度第2回(第67回)九州部会が、2024年10月26日(土)に、佐賀大学本庄キャンパス(佐賀市)にてハイブリッド方式で開催された(準備委員長:佐賀大学教授・⻆田幸太郎氏)。準備委員長のご挨拶の後、特別講演および研究報告がおこなわれた。対面参加・オンライン参加合わせて40名を超える研究者や実務家の参加を得て活発な質疑応答がおこなわれた。
⻆田氏
■■ 特別講演は、岐阜麦酒醸造合同会社社長の平塚悟氏により、「ゆっくりつながるクラフトビール醸造所とTap Room YOROCA創業」と題しておこなわれた。平塚氏は、準備委員長の角田氏と北海道大学の同期で、製薬会社の営業職として勤務する傍ら、兼業として、郷里である岐阜でクラフトビール醸造所兼バー(https://gifubeer.com/)を起業された。岐阜の観光名所にちなんだ各種の定番ビールや岐阜大学などとの共同開発のコラボボールなどが人気を博している。その動機は地元岐阜の地域とつながり地域に根差す事業を起こしたかったこと、岐阜で最も人が集まる神社の参道に立地して地域経済の活性化や地域人材の活用・育成に貢献していること、起業にあたり会計関連では苦労したので素人にも分かりやすい会計の開発を期待していること、などをお話しされた。
平塚氏
■■ 研究報告の第1報告は、加藤典生氏(大分大学教授)・小林英幸氏(SBI大学院大学教授)により、「トヨタ自動車における原価企画の現状と課題―行動的原価企画の視点から―」と題する報告が行われた。従来の会計主導の原価企画研究ではブラックボックスとなっていたエンジニアの原価低減活動に焦点を当てた行動的原価企画研究の必要性を主張され、トヨタ自動車へのインタビューの結果、「面戦略」への移行により先頭車でじっくり時間をかけて後続車では開発負荷が軽減してきていること、従来の設計室別・部品別の目標原価割付から2段階前の「領域別目標割付」に移行することで、領域内での原価割付に設計室が参加できることの動機付け効果が発揮されていること、設計者個々人が出し惜しみするスラックをコストエンジニアが見抜くために原価見積の精度をより高めることが課題となっていること、などを論じられた。
小林氏(左)・加藤氏(右)
■■ 研究報告の第2報告は、宮地晃輔氏(長崎県立大学教授)により、「中小企業者に対する伴走型支援による管理会計能力の定着に向けた実践」と題する報告が行われた。中小企業庁等が2023年に公表した経営力再構築伴走支援ガイドラインを受けて、中小企業の経営者・管理者・従業員の管理会計能力の定着に、大学等の管理会計研究者が伴走者としてどのように貢献できるかという課題に対するアクションリサーチの成果を報告された。リサーチサイトとなった製造業A社に、宮地氏が顧問として就任し、経営会議や社長会などの場で、月次の予算差異分析を指導した結果、差異分析結果にもとづいてPDCAサイクルを回せる管理者が徐々に増えていったプロセスが紹介された。今後の課題として、管理会計能力が定着した管理者が、経営会議等には出席しない一般従業員に対して管理会計能力を伝承していく風土作りを挙げられた。
宮地氏
■■ 次回の九州部会は2025年5月に開催予定である。
文:丸田(九州大学)、写真:⻆田(佐賀大学)