2022年度年次全国大会 開催ご挨拶

大会準備委員長 明治大学 﨑 章浩

 日本管理会計学会会員の皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
 このたび、2022年度年次全国大会が、8月29日(月)~8月31日(水)の日程で明治大学駿河台キャンパスに於いて開催されることになりました。現在、新型コロナウイルス「オミクロン株」の感染が急拡大していますが、今大会の開催時期には感染が収束していることを切に願いながら、以下にご案内の「日本管理会計学会2022年度年次全国大会スケジュール予定」にもとづき、対面形式による大会開催で準備を進めております。
 統一論題のテーマは、「わが国におけるコスト・マネジメントの現状と課題」(仮題)です。また、スタディ・グループ報告および産学共同研究グループ報告が予定されています。
 今大会の特別講演会といたしまして、公益財団 渋沢栄一記念財団 渋沢史料館 館長 井上潤氏の講演開催が決定しております。
  自由論題報告の募集につきましては、2022年3月に会員各位にご案内し、詳細の大会プログラムは7月中旬に郵送させていただく予定です。
 今年は、会長および理事の選挙の年であり、準備委員会一同、万全の準備を進める所存でございます。多くの会員の皆様のご参加を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。


日本管理会計学会2022年度年次全国大会スケジュール予定
会場:明治大学駿河台キャンパス

【大会1日目】
8月29日(月)
14:30~15:50 常務理事会
16:00~17:20 理事会
17:30~18:30 各種委員会

【大会2日目】
8月30日(火)
  9:00~17:00 受付
10:00~17:00 会長および理事選挙投票
  9:30~10:35 自由論題報告(1)※6会場 最大12報告
10:45~11:50 自由論題報告(2)※6会場 最大12報告
12:40~14:00 会員総会
14:10~15:20 特別講演会 渋沢史料館 館長 井上 潤氏
15:30~16:05 スタディ・グループ報告および産学共同研究グループ報告
《スタディ・グループ報告》
中間報告:研究代表者 横田絵理先生(慶応義塾大学)
     「多様化するマネジメント・コントロールの現状整理と展望」
《産学共同研究グループ報告》
中間報告:研究代表者 青木章通先生(専修大学)
     「サブスクリプションビジネスのモデル化とその評価に関する研
     究」
16:20~18:10 統一論題報告
統一論題テーマ:わが国におけるコスト・マネジメントの現状と課題(仮題)
ご登壇者:田坂 公先生(福岡大学)座長
     今井範行先生(名古屋国際工科専門職大学)
     「トヨタのコスト・マネジメントと今後の課題」(仮題)
     柊 紫乃先生(愛知工業大学)
     「現場改善会計論の提唱:原価管理から余剰生産能力管理へ」
     (仮題)
     片岡洋人先生(明治大学専門職大学院)
     「コスト・マネジメントの新展開:サービス化の原価企画に学
     ぶ」(仮題)
18:20~19:50 懇親会(予定)

【大会3日目】
8月31日(水)
  9:00~11:30 受付
10:00~12:00 会長および理事選挙投票
  9:30~10:35 自由論題報告(3)※6会場 最大12報告
10:45~11:50 自由論題報告(4)※6会場 最大12報告
12:40~13:15 スタディ・グループ報告および産学共同研究グループ報告
《スタディ・グループ報告》
最終報告:研究代表者 伊藤克容先生(成蹊大学)
     「DDP(仮説指向事業計画)の導入効果に関する研究」
《産学共同研究グループ報告》
最終報告:研究代表者 中川 優先生(同志社大学)
     「人を基軸にしたグローバル経営を展開するダイキン工業の管理
     会計研究」
13:30~14:50 統一論題討議 座長:田坂 公先生、統一論題ご報告者3名
15:00 大会日程終了

30周年記念第2回Web部会のご案内

日本管理会計学会会員 各位

 管理会計学会創設30周年記念第2回Web部会を2月26日(土)にオンラインで開催することになりました。部会は2部構成として第1部は、石崎忠司中央大学名誉教授をお招きして、特別講演をしていただきます。石崎忠司先生は管理会計学会の元副会長で2010年には管理会計学会功績賞を受賞されています。また石崎先生は財務管理学会や社会関連会計学会などでも要職を務められ、さらに大手企業の社外取締役も経験されておられます。部会の第2部は、若手研究者の研究報告会とさせていただきます。
 会員の皆様におかれましては万障お繰り合わせの上、何卒ご出席賜りますよう、ご案内申し上げます。ご参加につきましては、下記よりお申し込みください。

1.開催日時:2022年2月26日(土)13時30分~16時00分

2.開催方法 オンライン(ZOOM)
  参加申し込みいただいた方に2月24日(木)にZOOM情報をお伝えします。
3.参加申込方法・問い合わせ先
(1)締切日:2022年2月22日(火)
(2)以下のGoogleフォームから申し込んでください。
   https://forms.gle/P8hjGxZSQND7dRkV6

(3)問い合わせ先:関西大学 水野一郎
 本部会について問い合わせのある場合には,標題を「30周年記念第2回Web部会問い合わせ」として,下記電子メールアドレスまでご連絡ください。
 電子メールアドレス:icmizuno[at]kansai-u.ac.jp ([at]を半角の@に変更してください)

4.プログラム
  13時30分~13時40分 開会の辞および管理会計学会 伊藤和憲会長のご挨拶
   13時40分~15時00分(特別講演60分 質問20分)

講演者: 石崎忠司氏(中央大学名誉教授・管理会計学会元副会長)
  講演テーマ: 「そこはかとない一教授の生き方―研究の方向を左右する要因―」
  司会者: 水野一郎氏(関西大学)
  15時00分~15時10分 休憩
  15時10分~15時55分 研究報告(報告30分、質問15分)
  報告者: 若林利明氏(上智大学准教授)
  報告テーマ: 「組織アイデンティティとマネジメント・コントロールパッケージに関する数理モデル分析」

司会者 椎葉 淳氏(大阪大学)

15時55分~16時00分 閉会の辞

管理会計学会創設30周年記念第1回Web部会報告

水野一郎(関西大学)

 管理会計学会創設30周年記念第1回Web部会が2021年12月4日(土)にオンラインで開催された。主催は、創設30周年記念事業委員会{井岡大度(国士舘大学)、塘誠(成城大学)、水野一郎(関西大学)、山口直也(青山学院大学)}であった。
 第1回部会は、伊藤和憲会長のご挨拶から始まり、管理会計学会創設30周年記念事業の取り組みが紹介され、今回のWeb部会の意義についてお話しされた。当日の参加者は34名であった。
 第1回部会は2部構成で開催され、第1部は、上埜進甲南大学名誉教授(管理会計学会元副会長・APMAA代表理事)をお招きして、特別講演をしていただいた。講演テーマは「私の研究と学会活動を振り返る」であり、上埜先生は詳細な資料を周到に準備され、2つのセクションに区分してお話しされた。

 セクション1では「研究活動を振り返る」として、上埜先生ご自身の著作をグループ分けし、研究の側面では学位論文から予算管理のcross-cultural studies、管理会計研究の方法、多国籍企業の利益管理、価値創出経営などを説明され、教育の側面では管理会計・原価計算・工業簿記の教科書づくり、管理会計・原価計算教育の調査などを紹介された。そしてセクション2では「 学会活動を振り返る」として、日本管理会計学会での思い出を学会加入の経緯や学会報告、甲南大学で開催された部会や全国大会、学会誌の編集などについて回顧され、そして現在も上埜先生が代表理事として尽力されているAsia-Pacific Management Accounting Association (APMAA)での活動を取り上げられ、APMAA設立の経緯とその後の展開、運営状況などについて詳しく紹介された。とくにアメリカで博士の学位を取得されるまでのご苦労や管理会計学研究に対する上埜先生の熱意には出席者全員が感銘を受けた。質問の時間では上埜先生と研究・教育上、交流が深かった先生方から質問と労いの発言があり、学会の歴史を振り返る暖かい雰囲気で特別講演は終了した。なお上埜先生のご講演は当日参加できなかった会員の皆様のために録画し、動画を限定公開(12月30日まで)させていただいた。

 第2部は、報告者が早稲田大学産業経営研究所の須藤時男招聘研究員であり、報告テーマは「ファミリービジネスにおける資産保有の特徴に関する考察」であった。

 報告内容は、まず目的としてファミリービジネスの定義を明確にし、ファミリービジネスの対象となる企業を具体的に挙げ、分析を行い、その特徴を明確にすることを挙げられ、続いてファミリービジネスの先行研究を押さえられた上で、ファミリービジネスの定義について検討され、実証研究の仮説とリサーチデザインについて報告された。実証研究の対象は、2020年3月末時点で東京証券取引所市場第一部に上場している企業から創業者より現在の経営者までの継続関係が整理できない企業や大株主の状況に記載されている法人と経営者の関係が明確でない企業を除く2,153社であった。
 そして結論として創業者一族の経営の関与が強いほど政策保有株式の保有比率が低くなること、ファミリービジネスに区分される企業は、政策保有株式の保有比率が抑制的であっても、創業家が継続的に経営に関与することで取引先企業等との関係が維持・強化できるものと考えられること、政策保有株式の保有比率の高さが問題とされる局面においても、複数の世代にわたり事業の承継がなされてきたファミリービジネスに区分される企業と同水準の保有比率であれば、保有比率の効果に関し論理的な説明も可能になるものと考えられること、などが報告された。
 この須藤時男招聘研究員の報告については、仮説の設定やリサーチデザインに対していくつかの質問やコメントがなされたが、興味深い報告ではあるため、今後の一層の研究の進展が期待されるものであった。

 

管理会計学会30周年記念第2回Web部会の報告者募集について

日本管理会計学会・会員各位

 管理会計学会創設30周年記念事業の一つとして創設が認められた「30周年記念Web部会」の第2回部会を2022年2月26日(土)にオンラインで開催することになりました。
 第2回部会は2部構成として第1部は石崎忠司中央大学名誉教授をお招きして、特別講演をしていただきます。石崎忠司先生は管理会計学会の元副会長で2010年には管理会計学会功績賞を受賞されています。また石崎先生は財務管理学会や社会関連会計学会などでも要職を務められ、さらに大手企業の社外取締役も経験されておられます。
 部会の第2部は、大学院生や若手研究者の報告会とさせていただくことになっており、今回この第2部の報告者を募集させていただきます。
 報告をご希望の方は、下記の応募要領をご参考の上、ご応募をいただきますようお願い申し上げます。大学院生を指導されている先生方には是非院生に報告を勧めていただければと存じます。なお報告希望多数の場合には、ご希望に添えない場合もあることをご了解の上、お申込み下さい。

管理会計学会創設記念事業委員会

              記

開催日時:2022年2月26日(土)13時20分開始(予定)

開催方法:Zoomによるオンライン

<報告応募要領>

  1. 締切日:2022年1月26日(水)
  2. 応募方法:件名(標題)に「30周年記念第2回Web部会報告希望」と記載し本文中に下記を明記のうえメールでご応募ください。

 (1) 報告タイトル・概要(200-300字程度)
 (2) 氏名:
 (3) 所属機関:
 (4) 職名:
 (5) 連絡先:

応募先:関西大学 水野一郎

e-mail: icmizuno[at]kansai-u.ac.jp
([at]→半角@に変更してください。)

2021年度第3回フォーラム開催記

2021年12月18日
神奈川大学 平井裕久,小村亜唯子

 2021年度第3回フォーラムは、2021年12月18日(土)13時30分~16時05分にZoomを用い、オンラインで開催されました。当日は、30名前後の先生方のご参加をいただきました。日本管理会計学会・副会長の椎葉淳氏(大阪大学)に開催の挨拶をしていただきました。
水口剛氏(高崎経済大学)による特別講演、北田真紀氏(滋賀大学)による研究報告(第1報告)、北田皓嗣氏(法政大学)・北田智久氏(近畿大学)・木村麻子氏(関西大学)による研究報告(第2報告)がありました。いずれの報告においても、フロアから質問やコメントがあり、活発な議論が行われました。

特別講演 水口剛氏(高崎経済大学)
講演論題 タクソノミーとトランジションファイナンス
 特別講演では、気候変動問題がなぜ企業価値に影響を与えると考えられているのかについて、脱炭素社会の実現に向けた昨今の世界情勢や基準の整備状況を踏まえながら、解説されました。
 企業が脱炭素を行うに当たり資金調達をするための手段として、グリーンボンドの発行がありますが、どのような活動(あるいは事業)であればグリーン、すなわち気候変動問題の解決に資する活動(あるいは事業)であると判断するか、その基準が曖昧であるという問題が指摘されていました。この問題に対し、欧州委員会がEUタクソノミーを制定しました。EUタクソノミーでは、複数の分野(業界)に対し、どのような技術・活動が気候変動の緩和に資するかについて、その基準(数値)を定めており、EUタクソノミーに合致すれば、それはグリーンな技術・活動として認められ、グリーンボンドを発行することが可能になると説明がありました。反対に、EUタクソノミーに合致しない場合にはグリーンボンドの発行が制限されるだけではなく、石油や石炭については、将来的に使用できなくなることから座礁資産と呼ばれ、石油産業や石炭産業に属している企業の企業価値は低下します。
 次に、金融機関や株主・投資家が脱炭素社会を実現するため、投資先を選定する(例えば、石油産業に属している企業を投資対象から外す等:ダイベストメント)、あるいは、株主・投資家の立場から経営陣と脱炭素に向けて対話する(エンゲージメント)の2つの手法があると示されました。ただし、この2つの手法では今すぐに脱炭素を実現することは難しいが、中長期的に脱炭素することが可能になると考えられる企業に対して投資ができないという問題があり、これに対応するためにトランジションファイナンスが提案されることとなったとの説明がありました。
 最後に、脱炭素を実現するためには、技術革新を企業に強いる(そのための投資やコストがかかってしまう)ことや、経済力の疲弊、石油・石炭産業等にこれまで従事していた従業員のリストラクチャリング等、様々な問題が絡むために、社会全体のトランジション戦略の策定が求められているとして、特別講演を結ばれました。

第1報告 北田真紀氏(滋賀大学)
報告論題 日本の製造業における環境配慮型活動の実態と成果に関する研究-質問票調査と聞き取り調査に基づいて-

 第1報告では、質問票調査と聞き取り調査による、日本の製造業を対象とした環境保全活動の実態とその取り組みの成果に関する調査結果が示されました。
 質問票調査からは、環境配慮型製品を製造していたり、事業所全体の環境負荷の計測・評価を行っていたり、CSR報告書・環境報告書を毎年作成し、公表している企業が多数存在していることが明らかにされました。ただし、同業種・異業種の企業と環境問題解決に向けた実用技術や基礎研究を共同で進めているか、という業務提携の程度は、低水準であることが示されました。
 聞き取り調査からは、上記の業務提携の程度が現状では低水準であることに対し、将来的には可能になるだろうとの見込みがあり、問題視していないことがわかりました。これに対し、社内における環境・CSR担当の人員不足や、従業員環境教育の体制整備、環境会計についての社内での理解が不十分であるといった、質問票調査では明らかにできなかった具体的な課題が、聞き取り調査によって明らかにされたと報告がされました。

第2報告 北田皓嗣氏(法政大学)・北田智久氏(近畿大学)・木村麻子氏(関西大学)
報告論題 個人の資質が業績評価に及ぼす影響-Sustainable Balanced Scorecardsの利用-

 第2報告では、個人レベルのCSRに関する規範(norm)や信念(belief)が、サステナブルバランスドスコアカードおよび戦略マップの表示形式を通じて、サステナビリティ業績評価の意思決定に与える影響について、実験室実験によって検討されました。
 「CSRに対する規範(個人の資質・選好)とBSC等のフォーマットの表示形式の相互作用が、業績評価の意思決定にどのような影響を与えるのか」というリサーチ・クエスチョンを検討するにあたり、理論的枠組みの検討を踏まえ、CSRに関する規範がサステナビリティ指標への意思決定のウェイトを高める、その関係をSBSCフォーマットの利用が調整すると操作化されました。
 実験室実験の結果、SBSCフォーマットを提示された被験者のほうが、サステナビリティ指標へのウェイトを大きくするという傾向があることが示されました。ただし、CSRに関する規範がサステナビリティ指標のウェイトに与える影響と、CSRに関する規範とSBSCフォーマットの利用の交互作用がサステナビリティ指標のウェイトに与える影響は確認されませんでした。今後の課題として、実験室実験において、CSRに関する規範をどのように測定するかがあると指摘をされました。