2021年度第2回フォーラム開催記

2021年7月17日

 2021年度第2回フォーラムは、2021年7月17日(土)14時から16時まで専修大学と大阪大学の共催で、オンラインで開催されました。当日は、伊藤和憲氏(専修大学)の司会により進められました。まず、日本管理会計学会・会長の伊藤和憲氏の開会の挨拶により開始されました。2つの特別講演が行われました。特別講演(1)は丹羽修二氏(日本経営 副社長)、特別講演(2)は橋本竜也氏(日本経営 取締役)でした。いずれの講演も質問が多くあり、活発な議論が交わされました。

 

特別講演(1) 丹羽修二氏(日本経営 副社長)
報告論題 : 一人別損益計算書の背景と実用


 第1報告では、日本経営の管理会計を取り上げられました。まず、日本経営の管理会計の特徴は、月次決算、一人別損益計算書、グループ代表による月次予算事績会議を取り上げられました。これはシンプルな管理会計と継続・徹底した活用をしているという。
1.月次決算では、毎月1日にB/SとP/Lおよび予測数値についての月次財務報告を平成8年から継続している。
2.一人別損益計算書は、本日のテーマであるが、平成2年よりスタートしている。
3.グループ代表による月次予算事績会議は、毎月第1週に2日間かけてグループ代表と全事業部が検討を行っている。
 また、日本経営では給与を自ら算出するシステムを導入しているという興味深い説明がまずあり、その上で一人別損益計算書についての説明が行われました。
 一人別損益計算書については、導入のポイント、作成のポイント、実用のポイントに分けて説明していただきました。
 導入のポイントは、創業時から事業を大きく成長させたいという願望があり、社員全員が経営の主人公にさせるため給与を自己申告制にしたとのことでした。そのために、工場別・現場別損益計算書をヒントにして一人別損益計算書を作成したとのことでした。
 作成のポイントは、役職者もパートもすべての社員が月次損益計算書を作成しているとの報告でした。この一人別損益計算書は完全なる正確性を求めるものではなく、一定の人為的な基準と作成によるものであり、単年度を見ると正確とは言えないものと理解していました。単年度で見るものではなく、時系列で活用することで、個人やチームの業績の実態が把握できるという利点があるとのことでした。
 実用のポイントは、プロフェッショナル的な業務、成長期における経営者意識の鍛錬に効果があること、また、自分で給与を決めるので経営者の意識と感覚が養われたとその効果を披露していただきました。

 

特別講演(2) 橋本竜也氏(日本経営 取締役)
 第2報告では、日本経営の人事管理について報告していただきました。
 日本経営グループで一人別損益計算書が導入できたのは、導入当時、会計事務所が主体で基本的に1件の顧問先を1人の担当者が担当していたことがあるとのことでした。したがって、間接費が非常に少なく、ほとんどが直接費という特徴があったために導入しやすかったそうです。また、一人別損益計算書は財務数値への意識づけであり、入社後何年で黒字化できるかという育成のツールであった。興味深いのは、賞与として成果配分制度が一人別損益計算書と連動している点でした。これが企業成長に大きく貢献したとのことでした。
 ところが、一人別損益計算書は個人主義に陥ったり、事業部間の壁ができそうになってしまいます。そうならなかったのは、理念・哲学の共有、社風醸成があったとのことでした。たとえば自利利他が徹底されていたようで、個人主義を抑える役割があったそうです。
 その後企業成長とともにビジネス・スキームが変化して、チームで仕事を担当するようになり、一人別損益計算書を作成するには売上高や固定費の配分問題や成果配分の制度的疲労が発生するようになったようです。同時に、経営陣にも一人別損益計算書に対して疑義が生じ始めたようです。そこで、一人別損益計算書を改定して、なんでも数値ができるわけではなく、一人別損益計算書で表せないことを無理に反映される必要はないという方向に向かっている。つまり、成果配分制度をなくして、別建てで、様々な業績を評価する方向になったそうである。具体的には、人事評価としては行動評価(職責評価)と目標達成度評価を基本として、業績については一人別損益計算書の利益だけでなく、サービス開発や出版なども大きな成果として認め、特別賞与として支給するようになったとのことでした。
 一人別損益計算書は、個人からチームへと舵を切ってきましたが、活用方法や位置づけを変えてきており、さらにいいものを構築していくことと思われます。ところが、一人別損益計算書は、今後も日本経営グループにとっては重要なマネジメント・システムであり続けると指摘されました。

 

 

(フォーラム後半の質疑応答)

 

2021年度第2回関西・中部部会(Web開催)報告者募集のお知らせ

日本管理会計学会会員各位                2021年7月18日

2021年度第2回関西・中部部会(Web開催)報告者募集のお知らせ

 新型コロナウイルス禍の状況を鑑みて、日本管理会計学会2021年度第2回関西・中部部会(開催校:中京大学)は、先の2021年度第1回部会に引き続き、ZoomによるWeb開催とさせていただくことになりました。つきましては、10月9日(土)午後の開催に伴い、自由論題報告における報告者を募集致します。希望される方は、下記の要領をご参考のうえ、奮ってご応募いただきますようお願い申し上げます。
 ただし、プログラムの都合ならびに希望者数の如何により、ご報告のご希望に沿えない場合もあり得ますことを、予めご了承ください。なお、プログラムの詳細は、後日改めてご案内させていただきます。

                                         

               記

開催日時:2021年10月9日(土)13時30分開始(予定)
ホスト校:中京大学

<応募要領>
1. 締切日:2021年8月22日(日)
2. 応募方法:下記を明記の上、メールにてご応募ください。
  (1)報告タイトルと概要(200~300字程度):
  (2)氏名:
  (3)所属機関:
  (4)職名:
  (5)連絡先:
3. 応募先:中京大学 経営学部 齊藤毅
 t-saito[at]mecl.chukyo-u.ac.jp([at]を半角の@に置き換えてください)

2021年度第2回日本管理会計学会関西・中部部会
準備委員長 齊藤毅

日本管理会計学会2021年度年次全国大会のパンフレットについて

日本管理会計学会会員各位

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 
 日本管理会計学会2021年度年次全国大会 -学会創設30周年記念大会-の開催内容を記載させて頂きました全国大会パンフレットのご案内を申し上げます。今大会は、8月26日(木)、27日(金)、28日(土)の日程で、対面方式(会場集合型)にて、長崎県立大学佐世保校で開催をいたします。
 全国大会パンフレットの会員の皆様へのご郵送によるご案内は、7月28日(水)を予定しております。
 会員の皆様のご参加を心よりお待ちしております。何卒よろしくお願い申し上げます。

日本管理会計学会2021年度年次全国大会 -学会創設30周年記念大会-
実行委員長 宮地 晃輔

 

2021年度年次全国大会パンフレットのダウンロードは、こちら
※ホームページに掲載のパンフレットには、フルペーパーをダウンロードのためのパスワードが記載されていません。パスワードは、後日郵送されるパンフレットをご確認ください。
 

 

2021年度第1回リサーチセミナー開催記

2021年6月20日
大阪大学 椎葉 淳

 2021年度第1回リサーチセミナーは,東北大学が準備委員(準備委員長:木村史彦氏)となり,東北大学との共催で,2021年6月19日(土)14時~16時35分にZoomを用いたオンラインで開催されました。当日の参加者は24名であり,第1報告の司会は木村史彦氏(東北大学),第2報告の司会は松田康弘氏(東北大学)により進められ,日本管理会計学会・副会長の椎葉淳氏(大阪大学)より開会の挨拶が,準備委員長の木村史彦氏(東北大学)より閉会挨拶がありました。
 第1報告は孟繁紅氏(山口大学),第2報告は濵村純平氏(桃山学院大学)でした。また,ディスカッサントとして,第1報告に対しては木村史彦氏(東北大学),第2報告に対しては松田康弘氏(東北大学)から,それぞれ研究内容の要約と研究の改善に役立つコメントが数多くなされました。フロアからもコメント・質問があり,活発な議論が行われました。

第1報告 孟繁紅氏(山口大学)
報告論題:企業のCSR活動が財務パフォーマンスに及ぼす遅延効果に関する実証研究―中国における上場企業のパネルデータ分析―

 第1報告では,中国における上場企業に公表された4年間のパネルデータの重回帰分析を行い,当座比率,1株当たりの利益成長率などの指標を表すCSR活動が財務パフォーマンスに正の影響を与えるか,および遅延効果があるかどうかを検証した。
 ステークホルダー理論に基づくと,企業は株主の要求だけを満たすのではなく,他のステークホルダーの利益も配慮しなければならないと考えられる。その理由は,企業は本質的には企業のすべてのステークホルダーによって構成され,企業の価値の創造もすべてのステークホルダーと直接に関連しているからである。そして,企業は社会的責任の履行を通してステークホルダーからの支持を得て,さらに企業の価値の向上に良い影響を与えると考えられる。また,企業は社会的責任の履行を通してステークホルダーの信頼と支持を得ることを目指しているが,社会的責任を履行してからステークホルダーからの反応を得るまで,情報伝達のプロセスに時間を要するため,CSRの財務パフォーマンスへの影響には遅延効果があると考えられる。以上から,この研究では,仮説Ⅰ:CSR活動は財務パフォーマンスに正の影響を与える,および仮説Ⅱ:CSR活動は財務パフォーマンスに及ぼす影響の遅延効果があるかを検証している。
 実証結果として,本研究で設定したCSR項目のうち,当座比率(QR),資産納税率(TATR)のみが,当期の財務パフォーマンスを向上させ,一年後および二年後の財務パフォーマンスにも正の影響を与えることを明らかにした。

 

 

第2報告 濵村純平氏(桃山学院大学)
報告論題:Disclosure policy for relative performance indicators under product market competition

 第2報告は,寡占競争において,企業は自社の経営者に対する業績評価指標を公表することが望ましいかどうかについて理論的に分析した研究である。
 日本では会社法の改正により,経営者報酬をどのように決定するのか,すなわち経営者がどのように業績を評価されているのかを開示することが求められる。またアメリカでは,proxy statementの公表によってこのような情報開示が求められている。その結果,相対的業績評価に関する情報についても開示することになる。この研究では,このような相対的業績評価の開示に着目して,以下のリサーチ・クエスチョンを設定している。

  1. 企業にとって,相対的業績指標(RPI)を開示することが最適なのか。
  2. 相対的業績指標の開示は,消費者余剰と社会的余剰にどのような影響を与えるのか。

 本研究の主たる結果としては,価格競争ではすべての企業が開示するのが最適になるが,数量競争ではコストが非効率な企業は開示しない方がよいケースもあることが示されている。
 また本研究の含意として,次の3点が指摘されている。

  1. 数量競争の起こっている市場で,競争が緩やかなときには規制のコストをかけて無理に規制しなくても市場に任せればよい。
  2. 数量競争の起こっている市場(車や鉄鋼業など)で,競争が激しいときには強制開示にするのがよい。
  3. 価格競争の起こっている市場(softwareや金融業など)では,開示を止める手立てが必要になる。

 このように,市場の状況に応じて,開示に関する規制を考える必要があることが主張された。

日本管理会計学会2021年度 第1回関西・中部部会 開催記

2021年5月29日|緒方勇(関西学院大学)

■■日付・場所
・日付:2021年5月29日(土)
・場所:Zoomミーティングによるオンライン開催(開催校:関西学院大学)

■■ 日本管理会計学会2021年度第1回関西・中部部会が、2021年5月29日(土)に関西学院大学(兵庫県西宮市)の主催により開催された(準備委員長:徳崎進氏(関西学院大学))。コロナ禍の状況を受け、部会はZoomミーティングによるオンラインで実施された。
 今回の部会は、オンライン開催ということで参加のための地理的制約が無くなったこともあり、中国・四国・北陸・中部などのほかに、関東からも多数のご参加を頂き、参加者は全体で35名であった。いずれの講演・報告でも、発表の後には活発な質疑応答が行われた。

■■ 第一部〔特別講演〕 司会:徳崎進氏(関西学院大学)
講演者:井上浩一氏(日本公認会計士協会(JICPA)本部理事)
講演テーマ:「近年の会計不正の動向と不正調査における問題点」

 本講演は、長年にわたって国際会計教育の推進及び会計プロフェッションによる企業価値や無形資産評価などの高度な実務指針の制定に貢献してこられた日本公認会計士協会(JICPA)本部理事の井上浩一氏をお迎えし、近年の会計不正の動向と不正調査における問題点について御講演頂いた。
 講演では、まず、日本公認会計士協会不正調査専門委員会の活動、及び2013年9月公表の「不正調査ガイドライン」の構成について説明が行われた。「不正調査ガイドライン」とは、現在一般的に不正調査業務で利用されている概念、手続及び手法についてガイドラインとして取り纏めたものである。
 次に、近年の上場会社等における会計不正の動向について、発生件数、不正の類型と手口、業種の内訳、上場市場の内訳、発覚経路や不正の関与者などについて、多数のデータを示しながら説明された。一般に、不正行為は動機、機会、正当化の3不正リスク要因がすべてそろった時に生じると考えられているが、講演で示されたこれらのデータは、この問題を考える上で大いに参考となるものである。
 最後に、日本公認会計士協会(経営研究調査会)が2019年7月に公表した経営研究調査会研究報告第65号「近年の不正調査に関する課題と提言」の内容について解説された。これは、不正調査業務において、「不正調査ガイドライン」が不正調査人に十分尊重されていない事例もあると思われることから、作成されたものである。そこでは、「問題がある不正調査」に関する課題が分かるように事例を創作し、提言として解説している。
 また、より近年のトピックとして、コロナ禍におけるリモート監査・不正調査における問題点についてもご説明された。
 講演の後には、参加者から多くのご質問を頂き、活発な質疑応答が行われた。

■■ 第二部〔研究報告〕 司会:緒方勇氏(関西学院大学)
■ 第1報告
報告者:根本萌希氏(浙江大学博士研究生)、黄英氏(浙江大学教授)
論題:「管理会計におけるコミュニケーションモデルの再提案」
    “Re-proposing the Communication Model in Management Accounting”

 本報告は、管理会計情報が企業の構成員間でどのように伝達されるかという、コミュニケーションプロセスの問題を、記号論の手法で理論化・可視化したものである。
 これまで、会計コミュニケーションに関する研究は、財務会計領域では比較的多く行われてきたが、管理会計領域ではようやく近年になって注目されるようになってきたばかりで、研究蓄積があまりない。
 根本氏は、言語学者Jakobsonのコミュニケーションモデルで示された6つの構成要素(発信者、コンテクスト、メッセージ、接触、コード、受信者)を、管理会計におけるコミュニケーションに適するように修正したモデルを報告された。
 この修正された管理会計情報のコミュニケーションモデルは、管理会計の導入ないし運用における問題点の洗い出し・改善などに役立つものであり、今後は企業ケーススタディなどの実証研究を蓄積することが重要である。

■ 第2報告
報告者:小村亜唯子氏(神奈川大学特別助手)、伊藤大真氏(中央労働金庫)、平井裕久氏(神奈川大学教授)
論題:「予算目標の困難度、達成志向的ワークモチベーション、予算業績に関する定量的研究」

 本報告は、予算目標の困難度と予算業績の間の媒介変数として、ワークモチベーションに注目し、この3つの要素の関係を企業へのアンケート分析により調査したものである。
 これまで、予算目標と予算業績の関係に関わる研究は数多く行われてきたが、あまり一貫した結果は得られていない。
 小村氏は、この一貫性のない研究結果は、予算目標の困難度と予算業績の間をワークモチベーションが媒介しているから、との考えに基づきアンケート分析を行われ、分析の結果、予算目標の困難度は達成志向的ワークモチベーションに対して正の影響を与えること、達成志向的ワークモチベーションは予算業績に対して正の影響を与えること、そして達成志向的ワークモチベーションは、予算目標の困難度と予算業績の関係を部分媒介すること、が判明したことを報告された。
 今後は予算参加やインセンティブシステムなどの要素をモデルに組み込むなどすることが重要である。

 

 

The Japanese Association of Management Accounting