2021年度年次全国大会 開催ご挨拶

大会実行委員長 長崎県立大学 宮地晃輔

 日本管理会計学会会員の皆様におかれましては、ます ますご健勝のこととお慶び申し上げます。 このたび、2021年度の年次全国大会が、8 月 26 日 (木)~8 月 28 日(土)の日程で長崎県立大学 佐世保校に於いて開催されることになりました。今大会の開催時期には、新型コロナ感染が収束していることを切に願い、東京オリンピック・パラリンピック2020も無事開催されていることを切望しながら、昨年に引き続き対面による全国大会開催で準備を進めさせて頂いております。
 今大会の準備(実行)委員会は、以下にご案内の「日本管理会計学会2021年度年次全国大会スケジュール予定」に基づきまして現在、開催準備を行っております。統一論題テーマは、「間接費配賦の再考」を予定しております。また、特別企画「管理会計のレゾンデートル」の開催を予定しております。スタディ・グループ報告及び産学共同研究グループ報告が予定されています。
 今大会の特別講演会といたしまして、株式会社ジャパネットたかたの創業者である髙田明氏の講演開催が決定しております。
 自由論題報告の募集につきましては 2021 年 3 月に会員各位にご案内し、詳細の大会プログラムは 6 月下旬にご郵送する予定です。 多くの皆様にご参加いただけますよう、準備委員会一 同は万全の準備を進める所存でございます。西海国立公園九十九島、パールシー・リゾート、ハウステンボスなど観光都市の佐世保の地で、多くの会員の皆様とお会いできますこと心よりお願い申し上げます。会員の皆様のご参加を賜りますよう何卒よろしくお願い 申し上げます。

日本管理会計学会2021年度年次全国大会スケジュール予定
※ 会場:長崎県立大学佐世保校:〒858-8580 長崎県佐世保市川下町123番地

【大会1日目】
8 月26日(木)
14:00~15:20 常務理事会
15:30~16:50 理事会
17:00~18:00 各種委員会

【大会2日目】
8 月27日(金)
9:00~17:00 受付  長崎県立大学佐世保校
9:30~10:35 自由論題報告(1) ※7会場 最大14報告
10:45~11:45 特別企画「管理会計のレゾンデートル」
           (ご発表:30分、討議30分) 
            司会:椎葉淳先生(大阪大学)
講演者: 加登 豊先生(同志社大学)
 討議者:2名の先生方
11:50~12:50 昼食
13:00~13:50 会員総会
14:00~15:40 統一論題報告  
統一論題テーマ:間接費配賦の再考
ご登壇者
丸田起大先生  九州大学教授(経済学研究院)(座⻑)
高橋 賢先生  横浜国立大学教授(国際社会科学研究科)
谷守正行先生  専修大学教授(商学部)
足立俊輔先生  下関市立大学准教授(経済学部)

15:50~16:10 休憩
16:10~17:40 統一論題討議  座長:丸田起大先生、統一論題ご報告者3名
18:30~20:30 開催可能な状態であれば懇親会

【大会3日目】
8 月28日(土)
9:00~16:00 受付 
9:30~10:35 自由論題報告(2) ※7会場 最大14報告
10:45~11:55 スタディ・グループ報告 および産学共同研究グループ報告

【スタディ・グループ報告】本館1階 101教室
司 会  田坂 公先生(福岡大学)
中間報告:10:45~11:20(ご報告25分 質疑10分)
研究代表 伊藤克容先生(成蹊大学)「DDP(仮説指向事業計画)の導入効果に関する研究」
最終報告:11:25~12:00(ご報告25分 質疑10分)
研究代表 諸藤裕美先生(立教大学)「原価企画の今日的課題と対応に関する研究」

【産学共同研究グループ報告】本館2階 201教室
司 会  横田絵理先生(慶應義塾大学)
最終報告:10:45~11:20(ご報告25分 質疑10分)
研究代表 中川優先生(同志社大学)
「人を基軸にしたグローバル経営を展開するダイキン工業の管理会計の研究」
12:00~13:00 昼食
13:10~14:40 特別講演会
「髙田明氏(ジャパネットたかた創業者)」開催決定
15:00~16:50 自由論題報告(3)※7会場 最大21報告
17:00 大会日程終了

日本管理会計学会 2020年度年次全国大会 大会記

大鹿智基(早稲田大学)

 日本管理会計学会2020年度年次全国大会(辻正雄準備委員長)が、2020年8月27日(木)~29日(土)の会期で、名古屋商科大学大学院名古屋校(名古屋キャンパス丸の内タワー)を会場として開催された。新型コロナウィルス感染症の全国的な感染の拡がりを背景として、対面での開催が危惧されたものの、参加人数に対して十分なソーシャル・ディスタンスを維持できる会場の確保ができたことと、さらなる感染拡大が見られた場合にオンライン開催へ切り替えられる見込みが立ったことを受けて、対面での開催が決断された。残念ながら、一部の会員の所属機関では出張が制限されており、参加者が例年よりも少なくなってしまう、懇親会が開催できない、というような影響は生じたものの、会員の交流や研究への刺激という点において有意義な場となった。本大会記では、大会の様子の一部を紹介する。

[大会1日目]
 常務理事会・理事会をはじめとする諸会議が開催され、昨年度の事業報告、決算、監査報告、今年度の事業計画、予算、さらに学会賞審査委員会からの審査結果などについて、審議・報告がなされた。なお、2021年度年次全国大会の会場が長崎県立大学となったことも報告された。

[大会2日目]
 午前中は7会場に分かれて14の自由論題報告からスタートした。その後、オンライン会議システムを利用して、Georgetown University のWilliam and Karen Sonneborn Term Associate Professorships である Jason D. Schloetzer氏による基調講演“Causality in Management Accounting Research”がおこなわれた。より質の高い管理会計研究を目指すため、因果関係を検証する手法の洗練した研究を推進することの必要性が強調された。この「因果関係」というキーワードは、午後の統一論題報告でも繰り返し言及される、当年次全国大会の核となる用語である。
 昼食後の会員総会では、事業報告・計画、決算・予算・監査などの審議・報告のほか、学会賞の授与式も開催された。特別賞、功労賞、論文賞、文献賞については今年度該当者なしであったが、以下の2名に対して奨励賞が授与された。

 岩澤佳太氏「ジャストインタイム生産方式の導入に伴うミニ・プロフィットセンター制の変化 -水平的インタラクションに注目して-」

 牧野功樹氏「中小企業の管理会計研究 -システマティック・レピューによる統合の試み-」

 その後に開催された統一論題報告・討論のテーマは「エビデンス・ベースト(Evidence based)な管理会計研究を目指して」であった。まず、座長の安酸建二氏(近畿大学)から解題がなされた。安酸氏は、管理会計研究における「エビデンス」が、「因果関係を主張すること」と「社会(実務)で活用される研究結果を提示すること」の2要素から構成されるのではないか、という提案をされた。さらに、そのために、因果関係を主張するための正しい研究手法を採用することと、管理会計の「成果」を測定するための変数を精査することが大切であると議論を展開された。
 続く第一報告として、新井康平氏(大阪府立大学)から「管理会計研究のエビデンス・レベル」というタイトルの下、因果関係を主張することの大切さと難しさについて報告がなされた。新井氏は、データを分析するだけでエビデンス・ベースになるわけではなく、逆向きの因果関係や、欠落変数に起因する擬似相関を検出してしまうことを避けるため、時間的先行性、共変関係、他条件の同一性という3つの条件を満たす分析をおこなうことが大切だと主張した。さらに、3条件をすべて満たす研究手法として介入研究を紹介したうえで、その他の調査手法・研究デザインのエビデンス・レベルを整理された。
 第二報告は、濵村純平氏(桃山学院大学)による「エビデンス・ベーストな研究と理論による予測」であった。濵村氏は、理論(数理モデル)、実証、ケースという3つの研究手法の相互補完関係を構築することの重要性を述べられた。そのうえで、産業組織論の観点から構築した数理モデルとして、補完財の関係がある2財が存在する場合に過剰投資が起こるという仮説を提示し、実際にアーカイバル・データを用いた実証分析の結果、仮説が支持されたという例が紹介された。
 最後の第三報告として、福嶋誠宣氏(京阪アセットマネジメント株式会社)から、「エビデンス・ベーストな研究の実務に対する有用性」というタイトルで報告がなされた。福嶋氏は、実務家としての立場も持つ研究者として、研究者による研究成果が実務において採用されない原因を追究し、研究者の主張する研究成果があくまで「平均的な分析結果」であるため、妥当な範囲に自社が含まれるのか(研究における分析結果が自社にも適用できるのか)という点と、経済的帰結が存在するのか(自社の業績にプラスになるのか)という点がクリアにならなければ、なかなか実務への応用が難しいだろう、という指摘をされた。
 報告の後の討論では、4名から提出された質問用紙に基づく質疑がなされた後、フロアからの追加の質問を含めた活発なディスカッションがおこなわれた。安酸座長のコーディネートの下で、本来のテーマであった管理会計研究の方向性のみならず、若手研究者のキャリア戦略、学会誌の方向性、実務界との相互発展に向けた対応策に関する提案などもなされ、実り多い統一論題報告・討論となった。

[大会3日目]
 午前中は、自由論題11報告と、2つのスタディ・グループによる中間報告・最終報告がおこなわれた。その後、特別企画として、辻正雄氏(名古屋商科大学)の司会の下、荻野好正氏(XIB キャピタルパートナーズ(株)シニアアドバイザー、曙ブレーキ工業(株)前副社長)より「企業のオペレーションにおける黄色信号」をテーマとする講演が開かれた。講演では、経営上の「黄色信号」を検知するためにチェックすべき財務・非財務項目について、実務の経験に裏打ちされた提案がなされた。コロナ禍での開催ということもあり、多くの研究者・実務家が企業経営についての危機感を共有する中で、討議者であった伊藤和憲氏(専修大学)および加登豊氏(同志社大学)からも追加的なディスカッションのテーマが提示され、フロアからの質疑も含めて白熱した議論の場となった。
 最後に、自由論題15報告がおこなわれ、大会の終了となった。

2020年度第3回フォーラム・第1回九州部会 開催記

 日本管理会計学会2020年度第3回フォーラム兼第1回九州部会は、2020年11月14日(土)13:50~16:20に、長崎県立大学佐世保校にて、対面方式によって開催された。参加者・報告者は全員マスク着用で、適切な距離を確保して着席し、教室も窓やドアを開け放ってしっかり換気できる状態を保ったうえで実施された。研究者、実務家、および長崎県立大学の学部生・大学院生など、50名を超える参加があった。開始に先立ち、大会準備委員長の宮地晃輔氏(長崎県立大学)および伊藤和憲会長(専修大学)からご挨拶があった。

 

 

 

 

特別講演 北口功幸氏(株式会社亀山電機 代表取締役会長)
論題「株式会社亀山電機のバランスト・スコアカード(BSC)」
 社名のゆかりとなった坂本龍馬への熱い思いが語られたのち、亀山電機の概要、沿革、事業内容のご説明、および会社紹介ビデオの上映がなされた。同社は、1996年の創立以来、シーメンスとの取引などにより順調に業績を伸ばしていたが、リーマンショックを契機に、経営計画書(亀山道)やBSCへの取り組みを検討し始め、現在までV字回復を果たしている。2016年に導入されたBSCでは、事業計画や予算と連動させて全社BSCおよび部門BSCを運用している。BSCの狙いは、KPIを持たせ、毎月や四半期のPDCAで数値化した結果や差異を確認することなどにあり、結果は信号色を配したりグラフ化して見やすくし、銀行に提示する経営資料として信用を高めることにも活用されている。BSCを実施しての気づきとして、点でなく線で考えることができること、PDCAのPの力が弱いこと、コロナ禍で人財育成の重要性を再認識したことなどが紹介された。

 

 

 

 

第1報告 李会爽氏(福岡大学兼任講師)
論題「日本における統合報告の現状―インタビュー調査に基づいて―」
 大下丈平氏(九州大学名誉教授)の司会の下、第1報告では、統合報告におけるオクトパスモデルと戦略マップの融合可能性が提言され、統合報告の目的として情報開示だけでなく情報利用も実務において達成されているかどうかに関するインタビュー調査が報告された。統合報告フレームワークが概説されたのち、統合報告に関する先行研究が整理され、統合報告の目的が情報開示と情報利用の2つに集約できることが示された。情報開示に関しては、統合報告書は財務報告書をベースにしながら持続可能性報告書を包括する形で登場したことが指摘された。情報利用に関しては、ステークホルダー・エンゲージメントより得られた情報を経営者が利用し、戦略策定とマネジメントに役立てることが重要であることが指摘された。統合報告書を公表しているA社、DKS社、およびMUFG社に対するインタビュー調査の結果、3社ともステークホルダーへの情報開示目的は果たされていた。一方、情報利用目的では、A社およびMUFG社では情報利用は考慮されていなかったが、DKS社ではステークホルダー・エンゲージメントを通じてマテリアリティの特定に積極的に取り組んでおり、情報利用目的が考慮されていることが指摘された。統合報告における価値創造プロセスの可視化では、オクトパスモデルと戦略マップを融合することによって、使用資本を明示しプロセスの循環性を表現することが可能となるとの提言がなされ、DKS社のデータを用いてオクトパスモデルに戦略マップを組み込んだモデルの適用イメージが紹介された。

 

 

 

 

第2報告 水野真実氏(九州大学専門研究員)
論題「病院TDABCモデルの開発」
 田坂公氏(福岡大学)の司会の下、第2報告では、実在病院のデータを用いて、病院原価計算にTDABC(Time Driven Activity- Based Costing)のアイデアを試行的に適用したモデルの開発とシミュレーション結果が報告された。先行研究のレビューにより、ABC(Activity- Based Costing)の問題点、近年におけるTDABCの展開、および病院原価計算への適用状況が整理されたのち、診療情報が電子的に格納されているDPCデータと多様な時間情報が格納されている手術システムとを連携させて、コスト構成比の高い手術室の人件費を対象として構築されたTDABCの適用モデルが説明された。実在病院の人工膝置換術患者40名をサンプルとし、整形外科医師、麻酔科医師、および手術室看護師の給与の職種別キャパシティ・コスト・レートを算定し、整形外科医師には手術時間を、麻酔科医師には麻酔時間を、手術室看護師には手術室入退室時間を、それぞれ配賦基準として選択して適用した結果、患者別の手術麻酔人件費を測定できると当時に、職種別のキャパシティ利用度を可視化できることが示された。また手術麻酔人件費、手術麻酔差益、および手術麻酔差益率を検証した結果、患者別の収益性が可視化され、手術室を占有している入退室時間が長くなるほど採算性が悪化する傾向が確認されたと同時に、医師別の業務実績分析にも応用が可能であることが提言された。

 

日本管理会計学会2020年度第1回関西・中部部会開催記

関西大学 大西 靖


 日本管理会計学会2020年度第1回関西・中部部会は、2020年11月21日(13:30~17:00)に、関西大学を主催校としてZoomを利用したオンライン形式で開催された。当日の参加者は42名であった。学会の開始にあたっては、全体司会の木村麻子準備委員から進行方法が説明された後で、水野一郎準備委員長及び皆川芳輝関西・中部部会長から開会の挨拶が行われた。
 第1部では、ゲスト・スピーカーの渡辺良機氏(東海バネ工業株式会社顧問)による、特別講演「『あばよ』の経営美学」が録画配信形式で実施された。


 特別講演では、渡辺氏はポーター賞を受賞されたときにマイケル・ポーター教授に声をかけられた時のエピソードから始まり、同社の創業者から入社を口説かれた理由、ドイツのバネ企業を視察したときのカルチャーショック、職人を重視する同社の人づくりなどの興味深いお話しをされた。さらに水野準備委員長からの質問に応える形で渡辺氏が2代目の社長として創業者の多品種微量の完全受注生産というビジネスモデルを忠実に継承するとともに、社員教育や価格決定方法などの改善を通じて、赤字を一度も出さず、売上高総利益率50%、2桁の営業利益率を34年間実現させてきた同社の付加価値を上げるという特徴的な取り組みが説明された。

 

 

 

 続いて第2部では、第1報告の徳崎進氏(関西学院大学)、および第2報告の皆川芳輝氏(名古屋学院大学)による報告が行われた。第1報告の司会は中嶌道靖氏(関西大学)、第2報告の司会は馬場英朗氏(関西大学)であった。いずれの報告においても参加者からの多くの質問があり、活発なディスカッションが行われた。

第1報告 徳崎 進氏(関西学院大学)
報告テーマ:創造性マネジメントの管理会計的展開-合理思考からの脱却がもたらす創造的意思決定と経営のイノベーション

 第1報告では、創造性マネジメントの方法論の体系化によるプロトタイプ及び汎用モデルの開発を目的として報告が行われた。その背景として、徳崎氏は伝統的な経済学における「利潤あるいは満足度を最大化するために合理的な行動をとる利己的で完全な個人」という仮定が限界に直面していることを指摘する。そこで、非合理的な行動を直視しながらも、企業の競争力の源泉となる創造性をどのようにマネジメントするのかという課題にこたえるための方法論が必要とされる。このような課題に対して、徳崎氏は創造性に関する心理学、教育学および経営学を中心とした先行研究に関する文献レビューを通じて、創造性の側面として、(1)創造的思考と創造的技能にもとづく創造的能力、および(2)創造的性格及び創造的態度にもとづく創造的人格の重要性を指摘した。さらに、このような創造性を引き出すための方法論として、ブレインストーミング法やKJ法などを提示するとともに、創造的人格の形成を支援する方法としてロールプレイ(演劇)の重要性などが提示された。

第2報告 皆川芳輝氏(名古屋学院大学)
報告テーマ:デジタル技術の特徴と管理会計の課題

 第2報告では、デジタル技術における急激な進化、およびそれに伴うイノベーションと混乱が、どのような管理会計問題を生み出すかについて明らかにすることを目的として報告が行われた。デジタル製品などのデジタル生成物の開発では、急激な革新が繰り返し引き起こされるという特徴がある。そのため、デジタル生成物の開発では、新機能による追加的な収益をもたらす可能性が高いといえるが、他方で経営計画が不安定化する可能性がある。したがって、デジタル生成物の製品開発プロセスにおいて、より製品価値を明確に把握する必要性が高いことが指摘される。そこで皆川氏は、この問題に対応するための方策として、顧客価値基準の価格決定プロセスを提示した。このプロセスでは、新しい顧客経験が没入感やコンテンツの魅力などの価値ドライバーを向上することを通じて、その価値が顧客の支払意思額に反映されるという関係が明確に説明されており、企業がこのような関係を製品開発において把握する重要性が指摘された。

The Japanese Association of Management Accounting