■■日時 2010年4月24日(土)13:30?
■■場 所 西南学院大学
■■日本管理会計学会2010年度第1回九州部会が,2010年4月24日(土)に西南学院大学(福岡市早良区西新)にて開催された(準備委員長:西南学院大学准教授・高野学氏)。今回の九州部会には,関西中部部会からもご報告・ご参加をいただくなど,30名近くの研究者や実務家の参加者があった。報告会終了後には定例の部会総会も開催されたが,九州部会事務局長の大下丈平氏(九州大学教授)より,今大会が記念すべき通算30回目となった九州部会の第1回からの開催記録リストが配付され,今後の九州部会のますますの発展への協力が呼びかけられた。
■■第2報告では,和田伸介氏(大阪商業大学)より,「IFRSと管理会計の関連性について―ドイツ管理会計士の役割を中心に―」と題する報告があり,2007年からIFRSの強制適用が始まっているドイツの状況について,公正価値評価やマネジメントアプローチの導入が財務会計だけではなく管理会計にも与える影響をめぐるドイツでのケーススタディや実態調査の結果が示され,財務会計上の製作原価概念の再定義や原価計算上における減価償却費や利子の非算入などドイツの伝統的な原価概念への影響,ドイツにおけるコントローラーの機能として財務報告への情報提供者としての役割の追加,そのような影響下での限界計画原価計算の再評価の動き,コントローラー制度の英独比較などが紹介された。
■■第3報告では,北村浩一氏(鹿児島大学)より,「マッキンゼー『予算統制』のbudgetary controlと企業予算システムの展開・発展」と題する報告があり,予算管理研究の古典である1922年のJ.O.MckinseyのBudgetary Controlの精緻な解読の結果,マッキンゼーの意図していた当時の予算管理は,予算と実績の差異分析などの予算統制過程を前提としておらず,当時の米国連邦政府予算制度を参考にして,財務管理を主眼とした予算の編成過程のコントロールを体系化しようとするものであったことを明らかにしたうえで,マッキンゼー学説の再評価を出発点とした企業予算システムの新たな発展段階モデルの構想が提示された。
■■第4報告では,浦田隆広氏(久留米大学)より,「品質原価計算の構造と機能」と題する報告があり,米国における1970年代からの品質原価計算の研究や実務の展開について,計算技術的側面だけではなく社会経済的背景を含めた検討の必要性が強調され,Xerox社,Texas Instrument社,Westinghouse Electric社,H.J.Heinz社,Union Pacific鉄道などの詳細な事例分析にもとづいて,市場構造の変化による企業業績の変化やそれに対して品質原価計算という経営技術に期待された機能などが明らかにされ,品質原価計算は歴史的産物でありもはやその歴史的使命を終えつつあることが主張された。
■■各報告に対して活発な質疑応答がなされたにも関わらず,報告者・司会者のご協力のおかげで,4つの報告をほぼ時間通りに進行することができ,また報告会終了後には開催校のご厚意で懇親会も開催され,実りある交流の場となった。
丸田起大(九州大学 )