2024年度第1回リサーチセミナー開催記

 2024年度第1回リサーチセミナーは、岡山大学を開催準備校(準備委員長:天王寺谷 達将 氏)として、2024年7月27日(土)14時00分~16時05分にZoomを用いてオンラインで開催されました。当日の参加者は、26名でした。日本管理会計学会・副会長の島 吉伸 氏(近畿大学)より開催の挨拶があり、天王寺谷 達将 氏(岡山大学)の司会により進められました。報告者は、第1報告:金 宰弘 氏(群馬大学)・東田 明 氏(名城大学)、第2報告:市原 勇一 氏(北九州市立大学)、討論者は、第1報告:北田 皓嗣 氏(法政大学)、第2報告:天王寺谷 達将 氏(岡山大学)でした。討論者およびフロアから、各研究をより良くするための建設的なコメントと質問があり、活発な議論が行われました。

第1報告
報告者:金 宰弘 氏(群馬大学)・東田 明 氏(名城大学)
討論者:北田 皓嗣 氏(法政大学)
報告タイトル:エココントロールの活用が環境パフォーマンスを向上させるメカニズム-エココントロールと環境管理会計の関係に注目して-

 第1報告では、日本企業152社から得られた質問票調査の回答を用いて、エココントロール(価値システム、診断型コントロールシステム、双方向コントロールシステム)の活用が、環境管理会計を通じて環境パフォーマンスを向上させるメカニズムを検証した結果が報告されました。金氏・東田氏による分析結果は、①価値システムは、診断型・双方向コントロールの活用に影響を及ぼすこと、②双方向コントロールと環境管理会計の活用は、直接的に環境パフォーマンスの向上に貢献すること、③診断型コントロールの活用は、直接に環境パフォーマンスに影響を及ぼさないが、環境管理会計を媒介して、間接的に環境パフォーマンスの向上に貢献することなどを示していました。

第2報告
報告者:市原 勇一 氏(北九州市立大学)
討論者:天王寺谷 達将 氏(岡山大学)
報告タイトル:障害をもつ従業員の動機付けとマネジメント・コントロール

 第2報告では、マネジメント・コントロールが障害をもつ従業員の動機付けに与える影響について検討を行った結果が報告されました。障害をもつ従業員を動機付け、能力を引き出すという課題は、企業にとって重要な課題の一つである一方で、先行研究においては、マネジメント・コントロール・システム(MCS)が障害をもつ従業員の動機付けとどのように関連しているかについて十分な言及、分析がなされていません。この問題に対して、市原氏は、20年以上前から障害者の雇用を継続している、従業員数約50名の中小製造業の事例を対象にした考察を通じて、障害をもつ従業員の動機付けを高めるMCSが障害をもたない従業員にとってもよいMCSとなる可能性があることなど指摘しました。

文責:天王寺谷 達将(岡山大学)