第2回リサーチセミナーの開催記

2018年10月6日(土)
井上 秀一
 

 2018年度第2回リサーチセミナーは,2018年10月6日(土)13:30—17:00に明治大学(駿河台キャンパスアカデミーコモン8F)308F教室において,日本原価計算研究学会との共催で開催されました。当日の参加者は30名程度であり,日本原価計算研究学会前会長の尾畑裕氏(一橋大学)より開会の挨拶が,日本管理会計学会副会長の澤邉紀生氏(京都大学)より閉会の挨拶がありました。片岡洋人氏(明治大学)の司会によりリサーチセミナーが進められ,飯塚隼光氏(一橋大学大学院生),蒙雪超氏(創価大学)の研究報告に対して,フロアから有益なコメント,質問が多くあり,活発な議論が行われました。

 

第1報告 飯塚隼光氏(一橋大学大学院経営管理研究科博士後期課程)
報告論題「品質とコストに対する原価情報の役割と課題」
 

 第1報告の飯塚氏は,品質とコストを管理する際に原価情報がどのような役割を果たしているのかという問題意識から先行研究のレビューを行っています。飯塚氏は,レビューの結果,Anderson and Sedatole(1998)では指摘されていない原価情報の役割として,品質コストの側面から(1)品質管理活動の効果の明示,(2)システムデザインに対する失敗コストのフィードバック,原価企画の側面から(1)システムデザインにおける品質と原価の作りこみ,(2)設計エンジニアに対してプレッシャーを与えることを指摘しました。

 

ディスカッサント:安酸建二氏(近畿大学)

 飯塚氏の報告に対し,ディスカッサントの安酸氏は,品質と原価という古くからあるが十分に解明されていないテーマ設定が行われている点は評価できるが,今後の研究戦略として,単純明快な研究課題を設定し,原価情報の役割に関する理論的な検討を行った上で,単なる物語である「物語管理会計」で終わらないための仮説と実証が必要である旨コメントしました。

 

第2報告 蒙雪超氏(創価大学)
報告論題「中国中小電力企業へのMFCA適用可能性に関する一考察」
 

 第2報告の蒙氏は,中国のある中小電力企業S社(火力発電所)を対象としたMFCAの適用可能性について考察を行っています。蒙氏は中小企業におけるMFCAの導入ステップと,電力業におけるMFCAの適用可能性に関する先行研究をレビューした後,中小電力企業S社の製造プロセスとMFCAの適用可能性について報告しました。

 

ディスカッサント:木村麻子氏(関西大学)

 蒙氏の報告に対し,ディスカッサントの木村氏は,本研究は中国電力企業への貴重なMFCA導入事例であり,先行研究では蓄積の多くないエネルギーバランスに着目しているという点で日本と中国それぞれの実務・学術的な貢献可能性があることを指摘しました。
 一方で,本研究を学術論文としてより洗練させるために,以下の6点に関するより詳細な議論が必要である旨コメントしました。
(1)本研究の問題意識やモチベーション
(2)先行研究の整理によるリサーチギャップ
(3)モチベーションやリサーチギャップを踏まえたリサーチクエスチョン
(4)リサーチクエスチョンを明らかにするための方法
(5)データの収集
(6)会計学としての貢献