■■ 2015年4月19日(土)、2015年度第1回フォーラムが早稲田大学において開催された。今回のフォーラムでは、昨年発刊された創設20周年記念英文学会誌の共同編集者としてご尽力頂いたElla Mae Matsumura氏(Wisconsin大学)をお迎えし、基調講演が行われた。続いて、統一論題では、『価値創造経営の管理会計』として、伊藤和憲氏(専修大学)、挽文子氏(一橋大学)、安酸建二氏(近畿大学)より報告が行われた。いずれの報告も、会場から活発な質問や建設的な意見があり、有意義な議論となった。
■■ 基調講演
■ Ella Mae Matsumura氏(Wisconsin大学)
“What is good management accounting research and how do we get it done?”
管理会計研究のトピックスと目的を提示した後、研究ジャーナルで発表するという観点から、管理会計研究に必要な要素が提示された。まず、先行研究の紹介を交えながら、管理会計研究を行うために必要な条件が述べられた。次に、実際に研究ジャーナルで発表までの手順や査読期間など、米国の事例が紹介された。そして、査読の手順を管理する視点から、提出した論文が掲載不可、再提出または掲載許可などとなった場合に分類して、それぞれの場合で、研究者が論文の掲載に向けて、論文や査読者に対して行うべきことが提案された。最後に、今後の管理会計研究のトピックスについて、新たに注目されてきたものや、未解決な問題を具体的に提示された。
■■ 統一論題
■ 第一報告 伊藤和憲氏(専修大学)
価値創造のメカニズムと新たな理論的モデルの提示
まず、インタンジブルズを経営学、財務会計、業績管理、BSCの各観点から整理を行った。次に、コーポレート・レピュテーションの定義を確認した。続いて、レピュテーションと財務業績の関係に関する研究、レピュテーションの媒介変数、および永続性に関する研究を整理した。特に、永続性に関する研究において、財務業績が現在のコーポレート・レピュテーションに影響を及ぼすこと、現在のコーポレート・レピュテーションが将来の財務業績に影響を及ぼすことを確認した。さらに、Surroca et al.(2010)の研究に基づいて、好循環の理論的フレームワークを紹介した。これらの文献研究の整理を行った後、インタンジブルズと企業価値の創造を結び付ける新たなフレームワークを提示した。
■ 第二報告 挽文子氏(一橋大学)
価値創造とアメーバ経営 – 医療・介護組織を対象として –
医療・介護組織における価値とは、価値創造とは何か
を定義してすること。そして、アメーバ経営は、医療・介護組織の価値創造に貢献するのかというリサーチ・クエスチョンを提起した。まず、価値創造について、患者にとっての価値を高めるというポーターの提案を紹介した。次に、アメーバ経営の定義を提示して、時間当たり採算の特徴、および時間概念の導入のメリットについて説明した。そして、ポーターの提案との相違点を示し、アメーバ経営の意義を考察した。最後に、好循環を持続させるためには、経営理念とフィロソフィーが不可欠であるが、医療・介護組織はアメーバ経営と親和性が高く、管理会計は医療・介護組織などでも機能すると結論付けた。
■ 第三報告 安酸 建二(近畿大学)
企業価値経営・企業価値評価におけるCVP分析
先行研究を紹介して、CVP関係に基づく収益構造の把握と利益管理は、企業価値の向上に貢献する可能性があることを示し、回帰分析により、変動費率を推定した。公表データを用いて分析した結果、短期間で変動費率と固定費が変化している可能性があることが示唆された。また、内部データを用いて分析した場合、教科書が想定するほど、CVP関係は単純ではないことが明らかとなった。そして、CVP関係の解明に向けた管理会計研究は、企業価値評価や企業価値経営に対して重要な貢献をなし得る可能性を持つことを説明した。また、変動費と固定費を再検討する動きもあり、CVP分析は重要な研究対象となりつつあると述べられた。
2015年第1回フォーラム実行委員会
続いて,これまでの先行研究の「研究方法」を確認することで,質的研究ならびに量的研究の双方に長所と限界があることが示された。それを受け,質的研究と量的研究をつなぐ質的比較研究(QCA),なかでもfsQCAという研究方法がコンフィギュレーションとしてのマネジメントコントロールを分析するのに有用であると指摘された。ただし,fsQCA適用する場合にも,克服すべき課題があることも示された。
た。投入された性質別資源を事務事業別の勘定に変換し,そのコスト算定のために活動基準原価計算を用いる。また,事務事業別予算の執行プロセスが可視化されることで,その事業の行政評価が適正に行われる。報告では,収支・損益の両面から事務事業評価単位と予算編成単位を対応させるために,資源コストから事務事業別コストへの変換フローが示され,予算へのフィードバックが行われることを主張された。そして,3勘定簿記システム上の会計処理が明示され実務上の有効性について詳しく紹介された。
じめとして,多様な経営ツールが紹介された。現代の経営環境では,部分最適観を克服し,「本社力」「現場力」「IT力」の連携のとれた「全社最適JIT経営システム」を,異部門間の異見を戦わせながら全体最適のロジックのもとで設計していく。なかでも会計側で,全部原価計算の枠組みのなかで,製造間接費の配賦方法をリードタイム基準に読み替えることによって現場の流れ創りを支援する。このような会計の支援によってJIT成功率を画期的に高めることができると主張された。
上映のうえ,会社概要を説明いただいた。その後,販売戦略(ジャスト・イン・タイムの導入),営業戦略,人材戦略などの会社の取り組みを紹介いただいた。マルト水谷では,鮮度を重視する流通システムを確立するために,返品再販を中止し,パートナーをボランタリー・チェーン化している。そのような経営改革のもとで,速く届くことが直感的に分かる『速達生』というシンボル・マークを用いた具体的なプロモーション活動についてご紹介いただいた。
である。
