「管理会計の日」記念フォーラム開催記

 「管理会計の日」記念フォーラムは、2025年9月13日(土)14時00分から16時40分まで、専修大学神田キャンパスにおいて対面形式にて開催された。開会に先立ち、本学会会長・﨑章浩氏(東京国際大学)よりご挨拶を賜った。続いて『管理会計の日』制定にご尽力され、「管理会計の先駆者としての渋沢栄一の研究」スタディ・グループ研究代表の水野一郎氏(関西大学名誉教授)よりフォーラム開催の趣旨と経緯について解説いただいた。その後、内山哲彦氏(青山学院大学)の総合司会により、プログラムは滞りなく進行した。

﨑章浩会長挨拶 

水野一郎氏解説

 本フォーラムでは、特別講演として桑原功一氏(渋沢資料館館長)をお迎えした。あわせてモデレーターに水野一郎氏、パネリストに塚越稔氏(深谷市渋沢栄一政策推進課)、奥倫陽氏(東京国際大学)、関谷浩行氏(日本大学)によるパネル・ディスカッションが行われた。当日は、57名の参加があり、特別講演とパネル・ディスカッションに対して活発な質疑応答が交わされ、有意義な議論が展開された。フォーラム終了後には懇親会も催され、参加者間の親睦と渋沢栄一への理解がより一層深まった。盛況のうちに本フォーラムは無事に閉会した。

〔特別講演〕
◎講演者:桑原 功一 氏(渋沢資料館 館長)
◎論題:渋沢栄一の経営思想

桑原 功一氏による特別講演

 桑原氏は渋沢栄一の経営思想として、合本主義と道徳経済合一説を検討した。渋沢は、道徳と経済を一致させる経営思想をもち、企業が活動する中で利益を社会へ還元するCSR的な考え方であったという。その中で、お金だけでなくヒトを重視し、特定の個人や一族が富むのではなく、社会全体を豊かにすることを志向したという。

〔パネル・ディスカッション〕
◎テーマ:渋沢栄一の経営思想と実践の継承
◎モデレーター:水野 一郎 氏(関西大学名誉教授)

◎パネリスト:塚越 稔 氏(深谷市 渋沢栄一政策推進課)
◎題目:深谷市の取組

塚越 稔氏による報告

 塚越氏は、大河ドラマや新紙幣採用が深谷市に及ぼした経済効果や、渋沢に関する深谷市の各種取組について説明した。その中でも渋沢の立志の精神の継承に力を入れており、市内の初等教育から道徳の時間に様々な教育活動が行われているという。また、企業経営者などを対象とした「論語と算盤」の考え方やチャレンジ精神を継承する人材を育成する取組として「渋沢栄一ひとづくりカレッジ」なども行われているという。

◎パネリスト:奥 倫陽 氏(東京国際大学)
◎題目:渋沢栄一の経営理念を継承する企業の取組

奥 倫陽氏による報告

 奥氏は、統合報告書を対象とした調査を実施し、渋沢栄一に関連するキーワードを分析した。分析の結果、コーポレート・レピュテーションの向上、経営方針の正当性や信頼性の強調、長期的な視点を持った経営の強調といった特徴を発見した。また、インタビュー調査から「論語と算盤」に関連する情報を社員に提供することによる組織文化の醸成の取り組みについて明らかにした。

◎パネリスト:関谷 浩行 氏(日本大学)
◎題目:養育院における渋沢栄一の福祉経営の原理と継承

関谷 浩行氏による報告

 関谷氏は、渋沢が約57年の生涯で最も長期間携った養育院について、その概要と管理会計研究の意義について検討した。渋沢の「公益の追求」という思想が福祉(救貧)へも反映され、経営形態が変遷していく中でも継承され続けているという。報告の中で、管理会計研究の意義として、養育院研究という未開拓分野の開拓、公私連携の財務構造の解明、渋沢の公益事業哲学の具現が提示された。

文責 古川原 駿(専修大学大学院博士後期課程)