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2017年度第31回関西・中部部会&第51回九州部会 開催記

■■ スライド1.JPG日本管理会計学会2017年度第31回関西・中部部会および第51回九州部会が、2017年5月6日(土)に西南学院大学(福岡市早良区)にて開催された(準備委員長:高野学氏(西南学院大学))。今回の合同部会では、関西・中部・九州以外に関東からもご参加をいただくなど、20名近くの研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。また研究報告に先立ち、関西・中部部会役員会が開催された。

■■ 第1報告は、足立俊輔氏(下関市立大学)より、「病院BSCにおける医療安全の位置づけ」と題する研究報告がなされた。本報告は、病院BSCが医療安全にどのように貢献しているのかを文献レビューに基づいて明らかにすることを目的としたものである。スライド2.JPG
報告では、医療安全に関連した記述(医療安全項目)が病院BSCに記載された論文をレビューした結果が示され、戦略目標に医療安全項目が記載されている視点は「業務プロセスの視点」と「顧客の視点」が大半であること、「業務プロセスの視点」に記載されている医療安全項目は「医療安全管理体制の強化」の記載数が多いこと、また、重要成功要因や業績評価指標に記載される医療安全項目は「インシデント・アクシデント報告数」の記載数が多いことなどが示された。

■■ 第2報告は、浅川哲郎氏(九州産業大学)より、「米国のオバマ医療制度改革における病院マネジメントシステムの変化」と題する研究報告がなされた。本報告は、新たに就任したトランプ大統領の医療制度改革が、オバマ政権下で立法化された医療保険制度改革法(ACA)をどう継承していくのか、そして、そのことが病院の規模や組織にどのような影響を与えるのかを、報告者の現地調査に基づいて明らかにしようとしたものである。スライド3.JPG
報告では、トランプ政権下においてもオバマ医療制度改革が継続する可能性が高いこと、医療組織は機能別に分化する、いわゆる「モジュール化」が進む可能性があること、そして、近年浸透しつつある「コンビニエント・ケア」には「アージェント・ケア・センター(総合診療と救急医療の中間医療組織)」と「リテール・クリニック(簡易的な予防医療サービスを提供する医療組織)」の2種類が存在していることが紹介された。報告者によれば、こうした一連の新しい動きは、医療のコストを減少する可能性を秘めていると指摘している。

■■ 第3報告は、島吉伸氏(近畿大学)より、「プロジェクト特性がマネジメント・コントロール・システムに与える影響-コントロール・パッケージの視点から-」と題する研究報告がなされた。本報告は、同一の組織において異なる特徴を持つプロジェクトが実施された場合、利用されるマネジメント・コントロール・システム(MCS)に与える影響をコントロール・パッケージの視点から明らかにすることを目的としたものである。報告では、診療科別原価計算とISO9001がプロジェクトとして採用されている医療組織のケースが紹介された。スライド4.JPG
当該ケースでは、診療科別原価計算が含まれるMCSでは、医師が組織的価値に配慮させるための信条システムを生み出すために、インタラクティブ・コントロール・システムや診断的コントロール・システムが機能していること、そして、ISO9001が含まれるMCSでは、プロジェクト推進時においては信条システムが機能しており、プロジェクトの定着と効果発揮の場面ではインタラクティブ・コントロールと診断的コントロールが機能していることが示された。

■■ 第4報告は、三浦徹志氏(大阪経済大学)より、「鉄工団地中小企業における経営課題と管理会計思考の適用研究-金属加工業の設備投資、品質・人材・在庫問題を事例として-」と題する研究報告がなされた。本報告は、元請企業への依存度を見直すことや、自立的事業割合を増やそうとする中小製造業にとって、理にかなった経営管理・管理会計とは何かについて、事例研究に基づき明らかにしようとしたものである。スライド5.JPG
報告で紹介されたA社は、金属部品加工・メッキ一貫生産を事業として行っており、近年の設備投資案として亜鉛のメッキ工程へのロボット・システム導入による工程の自動化やIoT(Internet of Things)化を進められていることが、業界の状況と共に丁寧に説明された。報告では、熟練技術が必要なメッキ工程にロボットによる自動化を行った場合のシミュレーションの計算方法や、IoTシステムを導入した場合のデータ入力時に必要な原価計算や管理会計に必要とされるデータについて、現場のヒアリング調査に基づいて意見が述べられた。

■■ 研究報告会終了後、九州部会の総会が行われた。総会では前年度の会計報告と今年度の九州部会開催の議題が出され、双方とも承認を得た。今年度の九州部会は、第52回大会は7月29日に九州大学にて日本会計研究学会九州部会と合同開催の予定であり、第53回大会は中村学園大学にて11月に開催予定である。
報告会終了後、開催校のご好意により、懇親会が西南クロスプラザ(ゲストルーム)にて開催された。懇親会は有意義な研究交流の場となり、盛況のうちに大会は終了した。

足立俊輔 (下関市立大学)

2017年度 学会賞(論文賞、文献賞、奨励賞)候補者募集のお知らせ

日本管理会計学会会員各位

拝啓 会員の皆様には、ますますご健勝のことと存じます。

さて、下記に示した2017年度学会賞の候補者を「日本管理会計学会学会賞規程」に基づいて、以下の要領で募集いたします。会員の皆様には、学会賞にふさわしい候補者を積極的にご推薦していただくようお願いいたします。

敬具

1.募集する学会賞  論文賞、文献賞、奨励賞(各賞とも若干名)

2.審査対象業績  2016年4月1日から2017年3月31日までに刊行されたもの。

3.応募書類業績等  候補者の略歴、審査対象業績、業績リスト、及び推薦理由書

※応募関係書類、図書は返却いたしません。

審査終了後、適切に保管、廃棄致します。

4.推薦方法     会員の自薦及び他薦による。

5.推薦締切日    2017年5月27日まで(当日必着)

6.学会賞授与式   2017年8月28日(全国大会の会員総会)

7.業績等の送付先  〒214-8580 神奈川県川崎市多摩区東三田2-1-1

専修大学 商学部 伊藤和憲 宛て

Eメール:thc0724あっとisc.senshu-u.ac.jp(あっとを半角@マークに変更してください)

なお、学会賞の種類、その他の詳細な内容に関しては、学会ホームページに掲載されている「日本管理会計学会学会賞規程」をご参照ください。

http://www.sitejama.org/regulation/03.html

日本管理会計学会

学会賞(論文賞、文献賞、奨励賞)審査委員会

委員長 伊藤和憲

2017年度 スタディ・グループ募集について

日本管理会計学会会員各位

今年度も「スタディ・グループ規程」に従いJAMAスタディ・グループを広く会員の皆様に募集いたします。
応募される会員は,規程にしたがって,「JAMAスタディ・グループ申請書」をjama-infoあっとsitejama.org (あっとを半角@マークに変更してください)宛てまでメールで
ご応募ください。
申請書の様式としては,添付ファイルの内容を記載して下さい。
申請期限は2017年5月31日(水)《期日厳守》です。第2回常務理事会で審議し,選考の結果はグループ代表者に通知いたします。
なお、「スタディ・グループ規程」は、学会公式WEBサイト(https://sitejama.jp/?page_id=181 ) でご覧になることができます。

申請書の様式としては,以下の内容を記載して下さい。

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JAMAスタディ・グループ申請書

研究代表者の所属・氏名
連絡先 (住所,電話番号,E-mail)

Ⅰ 研究課題
Ⅱ 研究目的(意義・概要・構想)
Ⅲ 研究計画(方法・実施状況・期待される成果など)
Ⅳ 本研究に関する国内外の研究の現状と本研究計画の特徴
Ⅴ 各共同研究者の所属と氏名,役割分担
Ⅵ 研究代表者および共同研究者の過去5年間の主な研究業績
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2016年度第2回企業研究会開催記

■■2017年3月14日(火),日本管理会計学会2016年度第2回企業研究会が開催された(企業研究会担当:亜細亜大学・大島正克氏)。今回の研究企業は,2016年に創業100周年を迎えた物流業界大手のセンコー株式会社(東京本社)である。小雨の降るなか,原田会長,水野次期会長を始め13名の先生がセンコー株式会社の東京本社があるJR京葉線潮見駅改札に参集し,東京本社ビルとなっている潮見SIF(Senko Innovation Factory)ビルまで徒歩で移動した。同ビル7階の会議室にて企業研究会がスタートした。企業側の出席者は,川瀬由洋氏(取締役・常務執行役員),藤原正邦氏(物流経営研究所所長),堂土敏行氏(物流経営研究所上級研究員),呑田好文氏(人事部顧問)であった。呑田氏の司会進行のもと,初めに「センコー100周年記念ビデオ」があり,ついで「センコーの経営戦略」と題して,川瀬由洋氏より講義をして戴いた。

■■センコーグループホールディングス株式会社(SENKO Group Holdings Co.,Ltd.)2017senko_1.JPG

センコー株式会社(以下,センコー)は,1916年,日本窒素肥料株式会社(現在のチッソ株式会社)水俣工場の原材料・製品の専属輸送海運業者「富田商会」として創業した。1941年,日本窒素肥料の100%子会社「日窒運輸株式会社」になったが,1945年の終戦により財閥解体諸法令のもと解散した。直ちに「日窒運輸株式会社」の元社員の有志により事業再建がはかられ,1946年に「扇興運輸商事株式会社」が設立された。1973年,商号を「センコー株式会社」に変更し,その後も多くの企業を合併し,グループ会社が100社を超えるに伴い,2017年4月,持株会社体制に移行し,社名を「センコーグループホールディングス株式会社(SENKO Group Holdings Co., Ltd.)」とした。

センコーは早期に通運,路線などの免許を取得し,事業を拡大し,高度成長期に,輸送網の拡充,倉庫業の全国展開,住宅物流の強化,海外進出などで成長を実現してきた。2017senko_2.JPG

2016年3月期の売上高は4,340億円であった。セグメント別売上高を見ると,物流事業69%,商事・貿易事業30%,その他1%となっている。物流事業の内訳は,流通ロジスティクス事業37%,住宅物流事業14%,ケミカル物流事業11%,その他物流事業7%となっている。 センコーの物流事業はBtoCではなくBtoBの物流を業としているところに戦略上の特徴をもち,この戦略のもとにセンコーは流通それだけでなくその対象業務や支援業務を基礎としながら,その後の事業拡張を着実に促進する礎として発展している。流通ロジスティクス事業では,量販店や百貨店,専門店など小売店向けの物流サービス事業を中心に展開している。住宅物流事業では,住宅メーカーの製品を工場から建設現場へ輸送するサービスや住宅資材メーカーの資材輸送等の物流サービス事業を展開している。建設現場の施工進捗にあわせ,必要な資材をタイムリーに供給(JIT配送)し,また資材移動や資材探しなどの時間を削減することにより,住宅資材メーカーの建設コストの大幅な削減に貢献している。ケミカル物流事業は,センコー創業時から長年のノウハウが蓄積され,今後も拡大が期待される事業であり,プラスチックなどの原料となる樹脂やプラスチック成型品,加工品,自動車や機械などに使われる潤滑油などの物流サービス事業を展開している。商事・貿易事業では,商事販売,石油販売,貿易などを事業展開している。日用品や包装資材,酒類の卸売なども行っている。

国内ネットワークとして,新たに大型物流センターを全国に10数か所開設し,物流サービスを拡充している。2016年3月末時点で本社,営業本部,支店,物流センター等含め全国に458の拠点を設けるに至っている。倉庫面積は2006年の143万m2から2016年には293万m2へと増加し, 倉庫面積ではわが国の物流業界第2位の企業となっている。海外事業所は43か所設置している。平均株価は2006年の377円から2016年の790円へと倍増している。2017senko_3.JPG

国土交通省では地球温暖化対策の一つとして,CO2削減に向けてのモーダルシフト(Modal shift)を推進している。センコーは現在,毎日1万台以上のトラックを走らせている。また,海運事業では18隻を運行している。自社船舶を所有する長所も活用し,陸・海上輸送を柔軟に対応させ,輸送のグリーン化を推進し,2015年には,(社)日本物流団体連合会のモーダルシフト取り組み優良事業者賞「有効活用部門」を受賞している。

センコーの成長の第一の源は人材であり,その強みの一つが「現場力」であり,現場力を通じて品質と生産性を高める力を発揮している。人材に次ぐ第二の成長源はITであり,IT投資の拡大につれ,物流センター事業を将来性あるビジネスモデルへと発展させている。第三の源はM&Aである。これまでも企業買収により事業領域を拡大し多角化経営を実現させている。2017senko_4.JPG

また海外の事業展開の事例としてアパレル業が紹介された。「生産工場の中国への移転を終えたが,中国での人件費等が高騰し,為替変動によるコストも増加し,さらに顧客ニーズ多様化への対応に伴う生産ロット小口化への対応が必要となるなど,コスト削減は限界にきている」ともいわれているが,センコーはそのような環境に対応すべく「日中一貫物流」を提案している。すなわち「中国国内物流・海上輸送・日本国内物流を一社で元受管理し,加工と物流の一元実施を可能とする」流通情報企業としての提案である。このセンコー情報システムが提供する「グローバルSCEM(サプライチェーン・イベント・マネジメント)システム」は,SC上の各種データを統合し,複数企業が関わるSCをあたかも一つの企業システムのように管理するシステムであるが,センコーは,このグローバルSCEMシステムをアパレル企業各社への提案に生かしている(出典:センコー,日中一貫によるアパレル品物流システム導入事例)。

講義後,二班に分かれてSIFビルの見学をした。特に情報システム部門を中心に現場を見せて戴き,適宜パネル等を使った説明を拝聴した。2017senko_5.JPG

当日はセンコーの会議室をお借りして,リサーチセミナー(『ビッグデータの利用と経営戦略』講師:岡村久和氏・亜細亜大学・元日本IBM)を開催するため,企業研究会は13時頃終え,SIFビル2階の社員食堂にて,役員等の皆様とも歓談させて戴きながら昼食を戴いた。

今回の研究企業であるセンコー株式会社様は管理会計研究に対して多くのヒントを与えてくださいました。ここに参加会員一同心から御礼申し上げます。有難うございました。

仲 伯維(亜細亜大学・非常勤講師)

2017年度国際会議参加旅費の助成について(公募)

日本管理会計学会会員各位

会員の国際的活動を支援する一環として,標記の件について,下記の要領で公募いたします。

■ 助成対象
管理会計に関連する海外の学会(2017年9月1日から2018年3月31日の間に開催される学会)において,研究発表をする場合または当該学会と本学会との交流を促進するため活動を行う場合。

■助成額
航空運賃(往復)が5万円未満の場合には全額を,航空運賃(往復)が5万円を超過する場合には,5万円にその超過額の1/2を加算した額を助成する。ただし1件あたり10万円を限度とし,予算総額は年間20万円とする。

■ 応募方法
別紙書式に会議開催要項等を添付し,学会事務局に送付すること。書式は、添付ファイルをご利用いただくか,添付ファイルをご覧になれない方は,こちらよりよりダウンロードしてください。

<学会事務局>
〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1
国士舘大学 経営学部 井岡大度 研究室内
日本管理会計学会事務局
e-mail: jama-infoあっとsitejama.org(あっとを半角@マークに変更してください)

■ 応募締切 2017年7月31日《期日厳守》

■ 選考方法
選考委員会で選考し,常務理事会(2017年8月開催予定)で決定する。