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2017年度第1回フォーラムについて

2017年4月15日、国士舘大学において「中小企業における管理会計の展開可能性」というテーマのもと、古園伸一郎氏(日本政策金融公庫)による基調講演の後、川島和浩氏(苫小牧駒沢大学)、本橋正美氏(明治大学)の2名から報告が行われ、最後に井岡大度氏(国士舘大学)を座長にパネルディスカッションが行われた。

基調講演 古園伸一郎氏(日本政策金融公庫)
「日本政策金融公庫と中小企業経営」201701f01.JPG
日本政策金融公庫では中小企業向け融資を行っており、そこで観察される中小企業の経営と会計に関する報告が行われた。そこでは中小企業の経営管理体制には規模による差異が大きく、(1)経理担当者が不足している小規模企業、(2)経理データはあるものの経営管理に活かされていない小・中規模企業、(3)経理データを用いた計画はあるが、予算・実績管理がされていない中規模企業に分類できるとされた。

論題報告(1) 川島和浩氏(苫小牧駒沢大学)
「苫小牧地域の中小企業管理会計の現状と課題―M社を中心として―」201701f02.JPG
北海道苫小牧市の中小企業における管理会計手法の利用について、アンケート結果とヒアリング調査をもとにした報告が行われた。アンケートでは、ほぼすべての企業が何らかの管理会計手法を導入されているが、非製造業における原価管理手法の導入は少ないことが明らかになった。また製造業M社のヒアリング調査では、受注との兼ね合いで会社外の作業が多いため、完全に管理会計手法を用いることは難しいことも明らかになった。

論題報告(2) 本橋正美氏(明治大学)
「中小企業管理会計の前提条件としての中小企業の発展段階説」201701f03.JPG
中小企業で適用される管理会計システムを検討する際に、考慮されるべき発展段階に関する報告が行われた。先ず中小企業の発展段階に関する諸説が紹介され、次にわが国には長寿企業が数多く存在することが報告された。大企業で行われる管理会計システムをそのまま中小企業に適用することはできず、管理会計システムの導入には対象中小企業の発展段階や業種・業態を踏まえる必要がある。そのため、どのような管理会計システムが適用できるかについての類型化が今後の課題であるとされた。

パネルディスカッション
主にフロア参加者との質疑応答が行われた。実際の計数管理の数値例や今後の管理会計システムなどに関して活発な議論が行われた。

国士舘大学 中井誠司

2016年度 第3回フォーラムについて

2016年度第3回フォーラムは、2016年12月17日土曜日に、参加者48名をお迎えし、目白大学新宿キャンパスで開催されました。統一論題の座長を東京理科大学 田中雅康先生にお願いし、演題を「日本の主要企業における原価企画の現状と課題」として、田中先生、(株)リコー グローバル購買本部・VA推進室の渡邉昌俊氏、および、いすゞ自動車(株)原価企画部 VE・評価グループの荻原健一氏の3氏にご報告ならびに質疑応答をお願いしました。
まず、田中先生より統一論題の演題についてのご報告があった後、渡邉氏からは、(株)リコー「VA推進室」にて、原価企画・目標設定・コスト評価・量産以降の取組・他社機分析ならびに人材育成について、組織として原価企画の諸問題に取り組んでいる姿が紹介されました。また、荻原氏からは、いすゞ自動車(株)の「コスト造り込み活動」「コスト低減活動」について詳細な報告があり、トラックの「アイドル(アイドリング)騒音対策」についてのシステムVEについて等、製造現場における具体的な事例が示されました。
質疑応答の時間においては、「書物にある原価企画と現在製造現場で行なわれている原価企画の相違は何か」といった、実務家をお迎えしての統一論題らしい、熱のこもった質疑応答がおこなわれました。懇親会も盛況のうちに終了し、無事日程を終了しました。

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同フォーラム準備委員長 目白大学 今林正明

2017年度第31回関西・中部部会&第51回九州部会 開催記

■■ スライド1.JPG日本管理会計学会2017年度第31回関西・中部部会および第51回九州部会が、2017年5月6日(土)に西南学院大学(福岡市早良区)にて開催された(準備委員長:高野学氏(西南学院大学))。今回の合同部会では、関西・中部・九州以外に関東からもご参加をいただくなど、20名近くの研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。また研究報告に先立ち、関西・中部部会役員会が開催された。

■■ 第1報告は、足立俊輔氏(下関市立大学)より、「病院BSCにおける医療安全の位置づけ」と題する研究報告がなされた。本報告は、病院BSCが医療安全にどのように貢献しているのかを文献レビューに基づいて明らかにすることを目的としたものである。スライド2.JPG
報告では、医療安全に関連した記述(医療安全項目)が病院BSCに記載された論文をレビューした結果が示され、戦略目標に医療安全項目が記載されている視点は「業務プロセスの視点」と「顧客の視点」が大半であること、「業務プロセスの視点」に記載されている医療安全項目は「医療安全管理体制の強化」の記載数が多いこと、また、重要成功要因や業績評価指標に記載される医療安全項目は「インシデント・アクシデント報告数」の記載数が多いことなどが示された。

■■ 第2報告は、浅川哲郎氏(九州産業大学)より、「米国のオバマ医療制度改革における病院マネジメントシステムの変化」と題する研究報告がなされた。本報告は、新たに就任したトランプ大統領の医療制度改革が、オバマ政権下で立法化された医療保険制度改革法(ACA)をどう継承していくのか、そして、そのことが病院の規模や組織にどのような影響を与えるのかを、報告者の現地調査に基づいて明らかにしようとしたものである。スライド3.JPG
報告では、トランプ政権下においてもオバマ医療制度改革が継続する可能性が高いこと、医療組織は機能別に分化する、いわゆる「モジュール化」が進む可能性があること、そして、近年浸透しつつある「コンビニエント・ケア」には「アージェント・ケア・センター(総合診療と救急医療の中間医療組織)」と「リテール・クリニック(簡易的な予防医療サービスを提供する医療組織)」の2種類が存在していることが紹介された。報告者によれば、こうした一連の新しい動きは、医療のコストを減少する可能性を秘めていると指摘している。

■■ 第3報告は、島吉伸氏(近畿大学)より、「プロジェクト特性がマネジメント・コントロール・システムに与える影響-コントロール・パッケージの視点から-」と題する研究報告がなされた。本報告は、同一の組織において異なる特徴を持つプロジェクトが実施された場合、利用されるマネジメント・コントロール・システム(MCS)に与える影響をコントロール・パッケージの視点から明らかにすることを目的としたものである。報告では、診療科別原価計算とISO9001がプロジェクトとして採用されている医療組織のケースが紹介された。スライド4.JPG
当該ケースでは、診療科別原価計算が含まれるMCSでは、医師が組織的価値に配慮させるための信条システムを生み出すために、インタラクティブ・コントロール・システムや診断的コントロール・システムが機能していること、そして、ISO9001が含まれるMCSでは、プロジェクト推進時においては信条システムが機能しており、プロジェクトの定着と効果発揮の場面ではインタラクティブ・コントロールと診断的コントロールが機能していることが示された。

■■ 第4報告は、三浦徹志氏(大阪経済大学)より、「鉄工団地中小企業における経営課題と管理会計思考の適用研究-金属加工業の設備投資、品質・人材・在庫問題を事例として-」と題する研究報告がなされた。本報告は、元請企業への依存度を見直すことや、自立的事業割合を増やそうとする中小製造業にとって、理にかなった経営管理・管理会計とは何かについて、事例研究に基づき明らかにしようとしたものである。スライド5.JPG
報告で紹介されたA社は、金属部品加工・メッキ一貫生産を事業として行っており、近年の設備投資案として亜鉛のメッキ工程へのロボット・システム導入による工程の自動化やIoT(Internet of Things)化を進められていることが、業界の状況と共に丁寧に説明された。報告では、熟練技術が必要なメッキ工程にロボットによる自動化を行った場合のシミュレーションの計算方法や、IoTシステムを導入した場合のデータ入力時に必要な原価計算や管理会計に必要とされるデータについて、現場のヒアリング調査に基づいて意見が述べられた。

■■ 研究報告会終了後、九州部会の総会が行われた。総会では前年度の会計報告と今年度の九州部会開催の議題が出され、双方とも承認を得た。今年度の九州部会は、第52回大会は7月29日に九州大学にて日本会計研究学会九州部会と合同開催の予定であり、第53回大会は中村学園大学にて11月に開催予定である。
報告会終了後、開催校のご好意により、懇親会が西南クロスプラザ(ゲストルーム)にて開催された。懇親会は有意義な研究交流の場となり、盛況のうちに大会は終了した。

足立俊輔 (下関市立大学)

2017年度 学会賞(論文賞、文献賞、奨励賞)候補者募集のお知らせ

日本管理会計学会会員各位

拝啓 会員の皆様には、ますますご健勝のことと存じます。

さて、下記に示した2017年度学会賞の候補者を「日本管理会計学会学会賞規程」に基づいて、以下の要領で募集いたします。会員の皆様には、学会賞にふさわしい候補者を積極的にご推薦していただくようお願いいたします。

敬具

1.募集する学会賞  論文賞、文献賞、奨励賞(各賞とも若干名)

2.審査対象業績  2016年4月1日から2017年3月31日までに刊行されたもの。

3.応募書類業績等  候補者の略歴、審査対象業績、業績リスト、及び推薦理由書

※応募関係書類、図書は返却いたしません。

審査終了後、適切に保管、廃棄致します。

4.推薦方法     会員の自薦及び他薦による。

5.推薦締切日    2017年5月27日まで(当日必着)

6.学会賞授与式   2017年8月28日(全国大会の会員総会)

7.業績等の送付先  〒214-8580 神奈川県川崎市多摩区東三田2-1-1

専修大学 商学部 伊藤和憲 宛て

Eメール:thc0724あっとisc.senshu-u.ac.jp(あっとを半角@マークに変更してください)

なお、学会賞の種類、その他の詳細な内容に関しては、学会ホームページに掲載されている「日本管理会計学会学会賞規程」をご参照ください。

http://www.sitejama.org/regulation/03.html

日本管理会計学会

学会賞(論文賞、文献賞、奨励賞)審査委員会

委員長 伊藤和憲