2012年度 アジア太平洋管理会計学会年次コンファレンス開催のご案内

The 8th APMAA Conference
Theme MANAGEMENT ACCOUNTING: the Optimization of Management Control

開催期間 2012年11月15日(木曜日)から17日(土曜日)
開催場所: 中国 福建省廈門市思明区思明南路422号
主催校: 廈門大学 (Xiamen University)

Asia-Pacific Management Accounting Association (APMAA) では、2012年度年次コンファレンスを厦門大学(Xiamen University)にて、11月15日(木曜日)から17日(土曜日)にかけ開催します。大会前日の14日(水曜日) にはPh. D. Colloquiumの開催を予定しています。

管理会計、会計・経営の理論および実践に関する研究報告やパネル・ディスカッションを3日間にわたり行なうAPMAA年次コンファレンスには、当該領域で研究あるいは実務に携わっておられる方なら、どなたでも参加できます。

ちなみに、Universiti Teknologi MARAが開催校であった2011年度の年次コンファランスには、開催国マレーシア、日本、インドネシア、タイ、台湾、中国、韓国、シンガポール、オーストラリア、カナダ等から、150名の研究者・実務家が参加されました。 本年度の開催校である厦門大学は、北京大学などとともに国家重点総合大学18校の一つであり、福建省厦門市の厦門島のもっとも景色の良い場所にキャンパスがあります。廈門コンファレンスの最新情報はhttp://www.apmaa.asia/に掲載しています。

なお、お問い合わせはAPMAA Japanの以下のコンファレンス担当宛にメールでお願いします。
上埜 進 (甲南大学) uenoあっとkonan-u.ac.jp (以下、あっとを@マークに変換してください。)
青木雅明(東北大学)maokiあっとecon.tohoku.ac.jp

また、APMAA Japanへの入会につきましては細海昌一郎(首都大学東京) hosomiあっとtmu.ac.jp が、学会誌(APMAJ)購読につきましては矢澤信雄(別府大学) CZQ00554あっとnifty.comが窓口になっています。

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2012年度 第2回国際学会参加費の助成について(公募)

日本管理会計学会会員各位

会員の国際的活動を支援する一環として、標記の件について、 下記の要領で公募いたします。なお、2012年度より年に2回公募を行います。

■ 助成対象 ■
管理会計に関連する海外の学会(2012年9月1日から2013年3月31日に開催される学会)において、研究発表をする場合または当該学会と本学会との交流を促進するため活動を行う場合。

■ 助 成 額 ■
航空運賃(往復)が5万円未満の場合には全額を、航空運賃(往復)が5万円を 超過する場合には、5万円にその超過額の1/2を加算した額を助成する。ただし1 件あたり10万円を限度とし、予算総額は年間20万円とする。

■ 応募方法 ■
別紙書式に学会開催要項等を添付し、学会事務局に送付すること。
書式(Ms-Word2003:文書名「2012rsdEntrySheet」)

<学会事務局>
〒525-8577 滋賀県草津市野路東1丁目1-1
立命館大学経営学部
日本管理会計学会事務局 宛
e-mail:jama-infoあっとsitejama.org

■ 応募締切■
2012年7月31日《期日厳守》

■ 選考方法 ■
選考委員会で選考し、常務理事会(2012年8月24日開催予定)で決定

日本管理会計学会会長 浅田孝幸

2012年度 第1回 フォーラム開催記

2012forum1_1.jpg■■ 日本管理会計学会2012年度第1回フォーラムが,2012年4月14日(土)に大阪成蹊大学・短期大学にて開催された(実行委員長:大阪成蹊短期大学 三浦徹志教授)。今回のフォーラムでは,斉藤孝一氏(南山大学)の司会もと,景山愛子氏(安田女子大学),平井裕久氏(高崎経済大学)・後藤晃範氏(大阪学院大学)の2報告が行われ,松尾貴巳氏(神戸大学)の司会のもと,国枝よしみ氏(大阪成蹊短期大学)・鹿内健一氏(大阪成蹊短期大学)・田中祥司氏(大阪成蹊短期大学非常勤講師・早稲田大学大学院),島吉伸氏(近畿大学)・安酸健二氏(近畿大学)・栗栖千幸氏(医療法人鉄蕉会亀田メディカルセンター経営管理本部 企画部経営企画室)の2報告(計4報告)が行われた。
2012forum1_2.jpgフォーラムでは,園田智昭副会長(慶応義塾大学)から開催挨拶があり,続いて大阪成蹊短期大学 武蔵野實学長より歓迎の挨拶を頂いた。武蔵野学長は挨拶の中で,大阪成蹊大学・短期大学の歴史や建学の精神について触れられ,今回のフォーラムにおける発表内容との関連で,自然環境における長期的最適条件を守りながら,経済的な短期的最適条件を目指すことの重要性について述べられた。
武蔵野学長の挨拶の後,上記の4つの報告が行われたが,どの報告も活発な質問が寄せられ,大変有意義な討議が行われた。その後,場所を移して懇親会が行われ,散会となった。

■■ 第1報告:景山愛子氏(安田女子大学)

「リスクマネジメントと管理会計の接点:ERM を導入する場合
-カリフォルニア州立大学バークレー校のケース-」

2012forum1_4.jpg 景山氏はまず,環境変化が激しく,リスクが複雑化,多様化している現代では,企業価値を高めるためにリスクマネジメント(RM)を導入することが重要であり,RMのPDCAサイクルに管理会計が関わるべきであると述べた。そして,RMと管理会計との関わりをカリフォルニア州立大学バークレー校の事例研究において考察するという本報告の目的を示した。
次に,RMには段階的な分類があり,現在では,全社的な視点にたったEnterprise Risk Management(ERM)が重要であると指摘した。そしてERMについて説明したうえで,欧米においては,すでに大学にERMが導入され,ERMに管理会計が広く関与していると述べた。続いて,ERMを大学に導入するメリットを示した上で,カリフォルニア大学でERMが導入された経緯について説明した。カリフォルニア大学におけるERMでは,「効率性を高める」,「リスクコストを下げる」,「借入費用を改善する」,「ITと業務の余剰を減らす」という4つの結果を重視しており,Enterprise Risk Management Information SystemやBudget Changes Workbookというツールを利用することで上記の目的を達成していると報告した。
最後に,管理会計とRMの関係については,すでにレピュテーションマネジメントなどで研究されているが,研究の方法論についてはまだ整理が必要であるという点,および,大学を含めた非営利組織において近年意識されている組織の「価値」を考えるためには,定量的な情報だけでなく,定性的な情報についても十分考慮する必要があり,定性的な情報をどうとらえるかについて今後検討する必要があるという点を本報告のインプリケーションとして示した。

■■ 第2報告:平井裕久氏(高崎経済大学)・後藤晃範氏(大阪学院大学)

「株価と労働環境の関連性について」

2012forum1_5.jpg 平井氏は,まず企業価値の測定におけるインタンジブルズ情報の把握の重要性について述べ,インタンジブルズ情報の一つとしての人的資本,特に従業員満足度に関する情報と企業価値との関連性について検証を行うという研究目的を示した。次に,先行研究のレビューを通して,日本と米国における人的資産に関する考え方に差異があることを指摘しながらも,経営上重要な要因であることを再認識することの重要性を指摘した。
平井氏は従業員満足度と企業価値との関連性について考察するために,Edmansの 2011年に行われた統計的分析手法を参考にして,東京証券取引所1部上場企業で2005年度から2009年度までの日経「働きやすい会社ランキング」の上位100社に該当する企業をサンプルデータとした分析を行うという分析方法を示した。そして,働きやすさを従業員満足度の代替変数とした場合,従業員満足度が株式市場における株価と関連性があるという分析結果を述べた。
今後の課題として,従業員満足度と株価との因果関係を明らかにするためにはさらなる検証が必要となる点,日本経済新聞社によるランキング以外の従業員満足度の代替変数を考えることの重要性,企業価値評価における人的資本以外の項目を考慮することの必要性 を挙げた。最後に,上記の検討課題があるものの,従業員満足度と企業価値との関連性が高いことは事実であり,労働環境における情報開示が企業価値の評価の1つとして用いられるようになることが期待されると報告した。

■■ 第3報告:国枝よしみ氏(大阪成蹊短期大学)・鹿内健一氏(大阪成蹊短期大学)・
田中祥司氏(大阪成蹊短期大学非常勤講師・早稲田大学大学院)

「観光振興と住民の意識
-奈良県宿泊施設経営者の意識に関する調査の分析より-」

2012forum1_7.jpg 観光は現在,重要な国家戦略として位置づけられているが,環境破壊などの負の影響が存在することが課題として指摘されている。イギリスでは1999年頃から,人々の「幸せ」という価値観に焦点が当てられており,経済的な側面だけでなく,持続可能な発展に関して多様な研究結果が報告されている。ただし,持続可能な発展を実践していく立場である小規模ツーリズムとホスピタリティ企業の研究は少数であるため,奈良県の小規模宿泊施設経営者を対象としたアンケート調査により,経営者の観光開発に対する態度,認識,経営行動の構造を明らかにするという研究目的を示した。
まず,先行研究についてレビューし,5つの仮説について説明した。そして,「仮説1:企業規模が大きいほど観光に対してポジティブな傾向がある」はおおむね支持,「仮説2:勤務地域により観光に対する意識が異なる」は支持,「仮説3:ホテル旅館の勤続年数により観光に対する意識が異なる」は不支持,「仮説4:ホテル旅館経営者の居住地域により観光に対する意識が異なる」は支持,「仮説5:ホテル旅館経営者の居住年数により観光に対する意識が異なる」は不支持という分析結果を示した。
さらに質問項目の因子分析を通じて抽出した5つの因子により,旅館・ホテル経営者意識に関する構造方程式モデルを示した。このモデルから,経営者の観光に対するポジティブな意識が観光の推進力となり,そのため社員教育による品質の向上が重要となる点,経営努力が環境負荷などの社会的な負の影響を与えるという点が明らかになると述べた。
最後に,小規模エリアにおけるネガティブ要因(費用,生活費の増加,値上がり,環境への悪影響)に対する対策や小規模エリアを含めた観光推進策の重要性について示した。

■■ 第4報告:島吉伸氏(近畿大学)・安酸健二氏(近畿大学)・
栗栖千幸氏(医療法人鉄蕉会亀田メディカルセンター 経営管理本部 企画部経営企画室)

「非財務指標と財務指標の関係に関する実証研究:国立病院データの分析」

2012forum1_8.jpg 本報告において,まず,島氏は非財務指標の重要性を示すためには,非財務指標が持つ財務業績の説明力について示す必要があり,そのために,国立病院で行われてきた患者満足度調査の結果を通じて,国立病院の収益,費用,利益の変動について分析するという研究目的を示した。次に,先行研究のレビューにより非財務指標と財務成果の変動との関係について検証するという目的には,顧客満足度を非財務指標として用いることが適切であると述べた。
続いて,複数の国立病院を対象とした複数年度にわたる患者満足度の変化と病院の収益,費用,利益の変動の関係を統計的に分析するという研究アプローチを示し,研究に利用されたデータの概要(国立病院約150病院の5年分のデータ)および,顧客満足度とコストや収益の関係について説明した。
2012forum1_9.jpg 次に,安酸氏は本報告におけるパネル分析の方法を3つ示し,それぞれの分析における推定結果を示した。そして,その結果によって得られるインプリケーションは満足度指標に「全体として病院に満足」という回答を採用した場合と,「家族や知人に勧めたい」という回答を採用した場合とで大きく異なると述べた。安酸氏によれば,前者の場合は,(1)満足度の向上はコストには影響しない,(2)入院患者の満足度は病院の財務面に影響しない,(3)相対的に高い満足度をさらに高めることは収益にマイナスの影響を及ぼすというインプリケーションが,後者の場合は,(1)外来患者の満足度はコストに影響する,(2)入院患者満足度は病院の財務面に影響する,(3)相対的に高い満足度を高める努力は病院の収益にプラスの影響をもたらすというインプリケーションが得られるということであった。

坂手啓介(大阪商業大学)

2012年度 学会賞(論文賞、文献賞、奨励賞)候補者募集のお知らせ

拝啓 会員の皆様には、ますますご健勝のことと存じます。
さて、下記に示した2012年度学会賞の候補者を「日本管理会計学会学会賞規程」 に基づいて、以下の要領で募集いたします。会員の皆様には学会賞にふさわしい 候補者を積極的に推薦していただくようお願い致します。

敬具

1. 募集する学会賞  論文賞、文献賞、奨励賞(各賞とも若干名)
2. 審査対象業績   2011年4月1日から2012年3月31日まで に刊行されたもの。
3. 応募書類業績等  候補者の略歴、審査対象業績、業績リスト、及び推薦理由書
※応募関係書類、図書は返却いたしません。審査終了後、適切に保管、廃棄致します。
4. 推薦方法      会員の自薦及び他薦による。
5. 推薦締切日     2012年6月15日まで(当日必着)
6. 学会賞授与式   2012年8月25日(全国大会の会員総会)
7. 業績等の送付先  〒662‐8501 兵庫県西宮市上ヶ原一番町1?155
関西学院大学 商学部 浜田和樹 宛て
Eメール:k-hamadaあっとkwansei.ac.jp (あっとを半角@マークに変更してください)

なお、学会賞の種類、その他の詳細な内容に関しては、「日本管理会計学会学会賞規程」をご参照ください。

以上

日本管理会計学会学会賞審査委員会 委員長 浜田和樹

2012年度 第1回九州部会 開催記

■■日本管理会計学会2012年度第1回(第36回)九州部会が,2012年4月21日(土)に九州大学経済学部(福岡市東区箱崎)にて開催された(準備委員長:九州大学教授・大下丈平氏)。今回の九州部会は,関西中部部会からも多数のご参加をいただき,雨天にもかかわらず16名の研究者と実務家の参加があった。

2012kyusyu1_1.JPG■■第1報告では,高梠真一氏(久留米大学教授)より,「デュポン社のベンチャー事業分析におけるキャッシュ・フローの役割」と題する報告があり,1970年代のデュポン社におけるベンチャー事業投資の評価・管理に対するキャッシュ・フロー情報の活用に関する詳細な一次資料が紹介され,デュポン社において1960年代までは投資利益率による投資評価が中心であったが,1970年代以降はキャッシュフローモデルのフレームワークを確立し,割引キャッシュ・フローにもとづいた投資評価も実践されていた事実を指摘された。

2012kyusyu1_2.JPG■■第2報告では,蒋益鳴氏(熊本学園大学院生)より,「中国病院管理会計―「績効工資」(変動給)制度の限界―」と題する報告があり,中国史における「会計」の起源や歴代の帝王が会計を活用して統治してきた歴史などが紹介された後,WTO加盟後の現代中国における病院経営では成果主義報酬制度としての「績効工資」が重要な役割を果たしており,病院の医師や看護師の動機付けや人材確保に機能している反面,近視眼的行動の助長による長期的業績の犠牲,人材の流出や組織内での権力格差,ストライキなどの反発も生じている実態が紹介された。

2012kyusyu1_3.JPG■■第3報告では,浅川哲郎氏(九州産業大学教授)より,「福岡県における病院組織の変遷」と題する報告があり,米国の病院経営の背景にある医療・保険制度の変遷や,米国の先行研究にもとづいて,機能別組織,事業部制組織,マトリックス組織,パラレル組織,プログラム組織という病院組織の基本モデルが紹介された後,福岡県の麻生飯塚病院と聖マリア病院の組織構造の変遷に関する聞き取り調査の結果にもとづいて,地域における病院間の競争状況と病院の組織構造の戦略的な変更との関係などが考察された。

2012kyusyu1_4.JPG■■第4報告では,出水秀冶氏(?出水・コンピュータ・コンサルティング)より,「商品市場適合率の考察」と題する報告があり,現在の好業績企業のケースとしてロック・フィールド社を取り上げ,管理会計情報にもとづく需給ギャップの解消が好業績の鍵であるとの主張にもとづいて,市場の詳細で柔軟なセグメント化および顧客イメージの具体的なプロファイリングの必要性と,ターゲット市場における商品売上の成功度を測る「商品市場適合率」という指標が提唱された。

各報告に対して活発な質疑応答がなされ,報告会終了後には定例の部会総会も開催された。次回の九州部会は7月に西南学院大学で開催の予定である。

丸田 起大 (九州大学)