「リサーチセミナー」カテゴリーアーカイブ

2018年度第2回リサーチセミナー(日本原価計算研究学会共催)のご案内

 日本原価計算研究学会と日本管理会計学会の共催でリサーチセミナー
を下記のとおり開催することになりましたのでご案内申し上げます。研究
報告の内容や研究方法に興味をお持ちの方は、是非ご参集下さい。なお、
事前の申し込みは必要ありません。

1.日時:2018年10月6日(土)13時30分開始
2.会場:明治大学 駿河台キャンパス アカデミーコモン8階308F教室
 周辺駅からのアクセスマップ
  http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
 キャンパスマップ
 http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html
3.参加費:無料
4.プログラム
 13時30分 開会
 13時35分~15時05分 第1報告
  報告者 飯塚隼光氏(一橋大学大学院生)
  報告論題 製品品質に対する原価情報の役割と課題
  討論者 安酸建二氏(近畿大学)
 15時05分~15時25分 休憩
 15時25分~16時55分 第2報告
  報告者 蒙雪超氏(創価大学)
  報告論題 中国中小電力企業へのMFCA適用可能性に関する一考察
  討論者 木村麻子氏(関西大学)
17時 閉会

2018年度第1回リサーチセミナー開催記

井上 秀一
2018年   6月30日(土)
 

 2018年度第1回リサーチセミナーは,2018年6月30日(土)14:00~17:30に,青山学院大学(青山キャンパス16号館3階)16302教室で開催されました。当日のリサーチセミナーの出席者は30名程度であり,日本管理会計学会会長の水野 一郎氏(関西大学)より開会の挨拶が,日本管理会計学会副会長の澤邉 紀生氏(京都大学)より全体講評がありました。山口 直也氏(青山学院大学)の司会によりリサーチセミナーが進められ,中村 正伸氏(香川大学大学院),掛谷 純子氏(京都女子大学)の研究報告に対して,フロアから有益なコメント,質問が多くあり,活発な議論が行われました。

第1報告 中村 正伸氏(香川大学大学院)

報告論題「職能横断プロジェクトにより遂行される製品開発の予算管理―予算執行段階に着目して―」

 第1報告の中村氏は,組織は「柔軟な対応」と「(効率的な)計画達成」をどのように両立させているのか,両立させるための予算管理とその運用上の工夫はどのようなものかという問題意識の下,先行研究のレビューを行い,次の2つのリサーチ・クエスチョンを提示しました。

(1)個別プロジェクトの活動計画と予算が,他のプロジェクトや組織の中でどのように関係,位置づけられて管理されることで,プロジェクトチームは予算達成と予算是正提案の動機づけを両立させているのか。

(2)予算達成と予算是正提案を両立させる予算管理を通じて,垂直のインタラクションは水平のインタラクションを促進させているのか。

 これらのリサーチ・クエスチョンに対応するため,中村氏は,医薬品の開発・製造・販売を行う日本発グローバル医薬品メーカーをリサーチ・サイトとして参与観察を行い,次の2点が明らかになったことを報告しました。

(1)組織目標と個別プロジェクトの目的・目標が関係付けられた上で,予算執行開始後,プロジェクトベースで進捗確認や計画変更案の精査が開発トップからなされる。その際,一定の裁量がプロジェクトチームに認められていることで,予算達成と予算是正案上申が両立して動機づけされている。

(2)製品開発で重要性が指摘されてきた職能部門間の水平なインタラクションが水平的な職能横断組織ベースでの責任設定と進捗管理により,促進される。

ディスカッサント:伊藤 克容氏(成蹊大学)

 中村氏の報告に対し,伊藤氏は,[1]「職能横断的」というのは開発本部内の職能横断ということなのか,本研究における「職能横断」という言葉の位置づけはどのようなものか,[2] 中村氏は「予算管理が統制型ではなく計画・調整型であることの重要性」と記述しているが,それは既存の理論で解釈可能か,どのように表現すべきか,[3] コントロール・パッケージの構成について,前提事項である「組織の全体目標が組織で共有されていること」を担保する仕組みや制度はどのようなものかについて議論が必要であるとコメントしました。

第2報告 掛谷 純子氏(京都女子大学)

報告論題「公会計がマネジメントに活用されないのはなぜか―ニュー・パブリック・マネジメントの考え方と日本のしくみ―」

 第2報告の掛谷氏は,1980年代から行われてきた我が国の公会計改革は,民間企業の経営手法を公的機関に導入し,効果的・効率的な組織運営を図るニュー・パブリック・マネジメント(以下,NPM)の考え方を基礎としていることを指摘した上で,公会計がマネジメントに活用されていない理由について先行研究のレビューを行っています。

 掛谷氏は,レビューの結果,公会計がマネジメントに活用されない理由の1つとして,現在の我が国の予算は現金主義であり,NPMが前提としている予算の発生主義化という条件を満たしていないことを指摘しました。また,掛谷氏は,制度変化が生じた際に,地方自治体において会計情報がマネジメントに使用されるようになるのかという先行研究上の課題を提示しています。

ディスカッサント:藤野 雅史氏(日本大学)

 掛谷氏の報告に対し,藤野氏は,本研究は実務的な課題(公会計情報の不十分な利用)に対して理論的な考察にチャレンジしようとしており,先行研究を踏まえた概念の適用を試みている点に特徴があると指摘しました。そのうえで,藤野氏は,リサーチ・クエスチョンの洗練化が必要であり,その過程においては,[1]公会計情報の活用,[2]発生主義予算の機能と課題,[3]理論構成概念としてのNPMの研究動向について議論する必要があるとコメントしました。

 

 

2018年度第1回リサーチセミナー会場変更のお知らせ

日本管理会計学会会員各位

会員の皆様におかれましては、益々ご清祥のことと存じます。
6月30日(土)に開催予定の2018年度第1回リサーチ・セミナーについて、教室を変更いたしましたので、ご案内申し上げます。
参加予定の方々にはご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

■■日時・会場
●日時:2018年6月30日(土)14:00~17:30
●会場:青山学院大学青山キャンパス16号館 3階 16302教室
●参加費:無料

青山学院大学青山キャンパスまでのアクセスについては、以下のURLをご参照下さい。
http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html

16号館については、以下のURLをご参照下さい。
正門から入って真っ直ぐ進み、法人本部と間島記念館の間を左折して少し進んだところにあります。
http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html

■■お問合せ先:2018年度第1回リサーチセミナー準備委員 青山学院大学 山口 直也
naoya[at]aoyamagakuin.jp([at]を半角のアットマーク記号に変更して下さい)

準備委員長:小倉 昇(青山学院大学)

第2回 リサーチセミナー開催記

2017年度第2回リサーチセミナーは,2017年10月21日(土) 13:30-17:00に明治大学(駿河台キャンパスアカデミーコモン9F )309B教室において,日本原価計算研究学会との共催で開催されました。当日はあいにくの天気でしたが,40名程度の参加者でした。日本管理会計学会会長の水野一郎氏(関西大学)より開会の挨拶が,日本原価計算研究学会会長の尾畑裕氏(一橋大学)より閉会の挨拶がありました。河合久氏(中央大学)の司会によりリサーチセミナーが進められ,浅石梨沙氏(一橋大学大学院商学研究科博士後期課程),梅田宙氏(専修大学)の研究報告に対して,フロアから有益なコメント,質問が多くあり,活発な議論が行われました。

第1報告 浅石 梨沙氏(一橋大学大学院商学研究科博士後期課程)
報告論題 「顧客志向における価格決定についての考察」
司 会:挽 文子氏(一橋大学)
ディスカッサント:岡田 幸彦氏(筑波大学)

第1報告の浅石氏は,価格決定と顧客志向についてのこれまでの議論を整理し,従来の価格決定に関する議論は,先例が豊富な商品開発(マーケットベース)と,先例が少ない商品開発(コストベース)の対比で行われていることを指摘しました。その上で,「先例が少ない商品開発」における「価格の作りこみ」(マーケットベースの顧客志向)という論点を提示し,ヘルシア緑茶(花王株式会社)の価格決定に関する事例を紹介しています。
ディスカッサントの岡田氏は,浅石氏の報告に対し,[1]「何が本当の未解決問題なのか」,[2]「価格の作りこみという現象とは」という2つの論点を提示しました。岡田氏は,浅石氏の研究はHinterhuber, A.(2004)による価値基準の価格決定戦略の遂行へと導くフレームワークに当てはまるのではないかと指摘した上で,「価格の作りこみ」という現象は,Hinterhuber, A.(2004)のフレームワークや岡田(2010)他の収益モデル設計で説明できるのか,あるいはそもそも価格は作りこみが出来るのか議論が必要とコメントしました。

第2報告 梅田 宙氏(専修大学)
報告論題 「エマージェント組織のインタンジブルズ・マネジメント―A社のケーススタディ―」
司 会:澤邉 紀生氏(京都大学)
ディスカッサント:諸藤 裕美氏(立教大学)

第2報告の梅田氏は,マネジメント・システムの研究は蓄積されているが,インタンジブルズと組織の関係に関する研究は十分ではないと指摘した上で,インタビュー調査によって組織の意義とインタンジブルズ・マネジメントの関係を明らかにしようとしています。インタビュー先の組織を,迅速かつ創発的なチームの構築が可能なエマージェント組織と捉え,自律的組織(ミニプロフィットセンター:MPC)との対比を行いながら,エマージェント組織のインタンジブルズ・マネジメントにおいては,[1]レディネス評価による人的資源マネジメント,[2]BSCの観点を加味したパテント・マネジメント,[3]インタンジブルズへの投資に糊代を残すことが重要であると指摘しています。
諸藤氏は,梅田氏の報告に対し,ケースの選択と問題意識とのつながりを検討すること,具体的には,(1)なぜその事例を選択したのか,(2)インタンジブルズ(・マネジメント)と組織の関係で何を明らかにしようとしているのか,(3)なぜ自律的組織と比較するのかについて明確に示すことが必要であると指摘しました。
さらに,諸藤氏は,[1]なぜ自律的組織と比較するのか,チーム型組織との比較は必要ないか,[2]MPCの利益獲得の手段は,原価低減による利益向上と言い切っていいのか,[3]アートのためのアート問題があるため,研究開発部門に対して財務業績を意識させてもよいのではないか,[4]エマージェント組織が職能横断式とはいえ,研究開発部門のアメーバの特徴には言及しなくてよいのかという4点について議論が必要とコメントしました。

井上 秀一(追手門学院大学)

2017年度第1回 リサーチセミナー開催記

2017年度第1回リサーチセミナーは、2017年7月6日(木)15時-18時に福岡大学大学院(図書館棟6F)会議室1においてメルコ学術振興財団との共催で開催されました。メルコ学術振興財団顧問の上總康行氏と日本管理会計学会副会長の澤邉紀生の挨拶に続いて、3本の英文ペーパーが報告されました。このリサーチセミナーでは、Management Accounting Research 誌のAssociate Editorを務めている気鋭の研究者Martin Messner 氏(インスブルック大学教授)をゲストコメンテータとして迎え、3つの英文報告に対して実践的なアドバイスと討論が行われました。

研究報告1
浅田拓史氏(大阪経済大学)
Switching Management Control System Use: A Construction Machinery Manufacturer Case by Hirofumi Asada, Kohji Yoshikawa, and Yasuyuki Kazusa
浅田拓史氏の報告は、小松製作所のケーススタディによって、マネジメント・コントロール・システムの利用スタイルが「経営危機」への対応と平時との間で切り替えられることを明らかにしようとしたものです。この報告では、Adler and Borys(1996)に端を発しAhrens and Chapman(2004)が発展させたenabling control概念とcoercive control概念を用い、小松製作所をとりまく外部環境の変化とマネジメント・コントロール・システムの利用スタイルとの関係について検討した結果、経営状態が比較的安定している期間はenabling control styleが、経営危機下ではcoercive control styleがとられていることを論じられました。

研究報告2
藤野雅史氏(日本大学)
Incomplete performance measures from a collectivistic view
by Masafumi Fujino, Yan Li, Norio Sawabe
藤野雅史氏の報告は、業績評価指標の不完全性に関する欧米の研究が、暗黙のうちに個人主義的な独立的自己観を前提としていることを指摘した上で、東洋的な相互依存的自己観(Markus and Kitayama, 1991)を理論的枠組みとすることで、従来の研究がみすごされてきた業績評価指標のダイナミックな役割を明らかにしようとしたものです。独立的な自己観が、個人主義的な文化と結びついて、個人の内部にアイデンティティの根源を求めるのに対して、相互依存的な自己観は、他者との関係性において自分のアイデンティティをつくられるという見方をとります。この相互依存的な自己観に基づいて、機能的に分化したサブユニットにおける業績評価指標の不完全性の役割について、終身雇用や年功序列型秩序を有する典型的な日本企業のケーススタディを通じて論じられました。

研究報告3
木村麻子氏(関西大学)
Sustainability Management Control Systems in the Context of New Product Development: A Case Study on a Japanese Electronics Company
by Asako Kimura, Hiroyuki Suzuki, Michiyasu Nakajima
木村麻子氏の報告は、sustainability management control systemの運用に責任を持ったsustainability managerが、新製品開発プロセスにどのように影響を及ぼしているか、日本企業のケーススタディによって明らかにしようとしたものです。この報告ではGond et al (2012)を理論的枠組みとして活用し、技術・組織・認識という3側面に注目して分析することで、sustainability managerが新製品の経済性について深く理解することが、逆説的に、新製品開発プロジェクトにsustainabilityという観点から強い影響を与え、結果的にマネジメント・コントロール・システムとsustainability management control systemとの統合が促進されることが論じられました。

以上のような研究報告を受けて、メスナー氏からのコメントが与えられました。総論的には、英語のライティングに関しては申し分なく、議論のレベルも高く刺激的であるが、国際的なトップジャーナルに論文を掲載するためには次の3点についてさらに深く考慮することが重要であるとの指摘が行われました。まず1点目は「理論」の使い方についてです。理論をケースと有機的に結びつけて、経験的証拠から理論的なインプリケーションが明確に導き出されるよう注意深く活用する必要性が強調されました。2点目に、先行研究との関連付けについて、どの先行研究群とどのように当該研究が結びつくのか戦略性をもって明確にすることが重要であるというコメントが与えられました。3点目は、ケースの「理論的」なおもしろさを丁寧に論じる必要性です。おうおうにして、ケース自体のおもしろさに注目が集まりますが、学術的な貢献は当該研究領域における理論的貢献が主であり、経験的事実のおもしろさは従にしかすぎないことが指摘されました。これら3点のほかにも、それぞれの報告に対して、近年の欧米の研究動向とどう結びつけられるのかといったパブリケーション戦略的なコメントが行われ、参加者にとって貴重な学びの場となりました。

2017年度第1回リサーチセミナー.jpg2017年度第1回リサーチセミナー2.jpg

澤邉紀生(京都大学)