2015年度第1回企業研究会開催記

2016kigyo1.jpg■■2015年度第1回企業研究会は、2016年3月4日午後、名古屋市中村区名駅三丁目28番12号 大名古屋ビルヂング31階と32階に本社を置く株式会社エイチームにて行われました。今回の企業研究会のコーディネーターをお引き受け戴きました木村彰吾先生(名古屋大学)と野口晃弘先生(名古屋大学)には心より御礼申し上げます。3月4日(金)という忙しい時期のなか、コーディネーターの2名の先生を含め合計7名の参加がありました。

■■企業研究会の開催にご支援戴きました牧野隆広(取締役・非常勤)様、奥谷浩之(あずさ監査法人・企業成長支援部長/パートナー・公認会計士)様に心より御礼申し上げます。特に牧野様には、2時間以上にわたり、ご説明戴き本当に有難うございました。はじめに、原田会長の御礼の挨拶と各自名刺交換があり、そのあと早速、32階と31階の本社の見学をさせて戴きました。その後、会議室に戻り、牧野様のプレゼンを拝聴致しました。

■■株式会社エイチームの特色として以下の事柄が挙げられます。設立2000年2月29日。決算期7月。2012年4月東証マザーズ上場、同年11月東証一部上場。名古屋本社の他に東京支社(スタジオ)と大阪支社(スタジオ)があります。牧野様のプレゼンの主たる内容は以下の通りです。昨年の売上高158億、従業数約500名。会社の特徴:ネットを利用し、個人ユーザーに自社サービスを提供している。すべて自社用の開発であり他企業向けの受注サービスを提供していない。「エンターテインメント事業」と「ライフスタイルサポート事業」という戦略上のポジションの異なる事業を展開。「エンターテインメント事業」はスマートフォン向けのゲーム事業であり、ヒットすれば大きな利益に繋がるが、ヒットしないという不確定要素もある。他方「ライフスタイルサポート事業」は日常生活に密着した比較サイトや情報サイトを企画・運営する事業で安定した利益を上げている。この二つの事業を組み合わせることで、企業の安定的成長が達成できるというビジネス・モデルを構築している。

■■エンターテインメント事業:ゲームを開発し、アップル・グーグル(メリット:ユーザーにはいちいちカード情報を登録する必要なし。アップル・グーグルを利用することで、海外のユーザーを対象に市場規模拡大)を通じて配信。アップル・グーグルから課金を受け取る。

■■ライムスタイルサポート事業:いくつかある事業のうち、(1)引越し・予約サイトの「引越し侍」、(2)中古車販売に伴う車の査定と車買取のサイトの「ナビクル」、(3)結婚式場情報サイトの「すぐ婚navi」、(4)自転車の通信販売の「cyma―サイマ―」の4業種の説明がありました。(1)から(3)のビジネス・モデルは、スマホを持つユーザーに情報を提供し、エイチームは業者から仲介手数料(数百円)を戴くというビジネス・モデル。一件当たりの利益はわずかだがスマホを介在することで大きな利益が得られる。(4)の事業だけは自転車通販という通販のビジネス・モデル。(1)「引越し侍」:最大10社に見積もってもらい、ユーザーにとっては最安値の会社と契約が可能。(2)「ナビクル」:ユーザーがエイチームのウェブサイトに情報入力し、エイチームが業者に情報を流す。(3)すぐ婚navi:できるだけ急いで早く結婚式を挙げたいユーザーと結婚式場が空いてしまっていてこのまま結婚式なしよりは、かなりの割引でユーザーに紹介。(4)「cyma―サイマ―」:最近家の近くにある自転車ショップがなくなっているが、一般の通販で買うとパーツで来るが組立が大変ということに目をつけ完成した状態で届けることに特徴。法人からまとまった注文が結構ある。東京と名古屋の郊外に倉庫を造り対応。

■■各ビジネス・モデル運営上の特徴として以下のような説明がありました。ライフスタイル事業(引越、中古車)は季節変動が大きい。自転車事業で在庫が多少あるが、基本的には在庫無し、仕入れ無し。開発費を超えて売り上げれば、一気に利益が上がる。売上高が伸びれば伸びるほど、利益率が高くなる。売上原価が少ない。販管費、人件費が大きい。ほとんど自社で開発制作することから外注費率が低く、その分人件費が大きい。立地は採用に大きな影響を与える。売り上げてから回収するまで、2ヶ月~3ヶ月くらいかかる。売上高が伸びると、運転資金が足りなくなる恐れがある。固定資産をもたず、ソフトウェア無形資産があるくらい。無借金経営:最近金利が安いから、最近は借りるようになった。ゲームの開発が大変だが、運営にも大変コストがかかる。報酬制度として成果報酬と基本給を組み合わせている。またチームとしての評価と個人としての評価も組み合わせている。大型案件は個人ではできないのでコミュニケーション能力や協調性も重要な要素であると考えるからである。

■■従業員に対しては、当社は人がすべてといわれるだけあり(人材不足に対処することも含め)大変手厚い環境となっていることに驚きました。名古屋駅前の一等地の新築ビルへの入居、1フロアーの半分を占め見晴らしのよい社員食堂、東京支社と大阪支社がフロアーの大きな画面に常時映し出され名古屋・東京・大阪が一体となって仕事をしているという気持ちになる試み、パソコンが並ぶフロアーの窓側には様々なリラックス用コーナーの設置や思い立ったときに自由に相談できるワイガヤコーナーの完備などです。従業員の発想がすべてという企業ならではの職場でした。目に見える充実だけでなく、従業員持ち株制度も早期から導入し、その運営に際しても会社側からのプラスアルファの補助もあり、さらに従業員に対するストックオプションやESOP(イソップ、Employee Stock Ownership Plan 従業員による株式所有計画)も導入し、企業業績が従業員にも反映され、全社的一体感を醸成できるような制度も完備されていることにも一同驚きました。名古屋には当社のようなIT企業がほとんどないためもあり、従業員の定着率は大変良いということでした。

王 志(名古屋商科大学)